化野家の五怪

坂井とーが

みんな怪物になっちゃった!(脚本)

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〇ハイツ

〇黒背景
父・草太(そうた)「全員集合――!!」
父・草太(そうた)「緊急家族会議を始めるぞ!!」

〇おしゃれなリビングダイニング
母・華(はな)「何よ、朝から大声出して」
長女・咲(さき)「そんなに急ぐこと?」
草太「落ち着いて! 俺だよ!」
咲「お父さん!?」
華「草太!?」
草太「それから、自分たちの姿も確認してほしい」

〇ハイツ

〇おしゃれなリビングダイニング
草太「俺たちはなぜか怪物になってしまったようだが・・・」
華「そういえば、蓮は?」
咲「遅くまでゲームしてたから、まだ寝てるんじゃ」
草太「蓮もか・・・」

〇おしゃれなリビングダイニング
咲「お兄ちゃん、泣かないで」
蓮「これが泣かずにいられるか」
蓮「オレの美貌が・・・ こんな変わり果てた姿に・・・」
咲「あたしだって変わり果ててるよ」
蓮「咲はまだ原形を留めてるじゃないか!」
草太「とりあえず、着替えてきたらどうだ?」
蓮「スリムだったオレの服が、この体に入るわけないだろ」
咲「あたしたち、どうしてこうなっちゃったのかな?」
華「元の姿には戻れないのかしら?」
「うーん・・・」
咲「戻った!」
「ええええ!?」
咲「戻ろうと思えば戻れるよ! がんばって!」
蓮「マジかよ!」
草太「戻れぇぇ 筋肉、内臓、皮膚、あと髪の毛・・・」
蓮「戻ってくれ! イケメン、イケメン、イケメン・・・」
草太「おお、本当だ!」
蓮「よかったぁぁ!」
華「でも、気を抜いたらまた化け物の姿になりそうだわ」
咲「あたしの顔色、悪すぎ」
咲「お兄ちゃんは消し炭みたいだし、お父さんなんか骨だし・・・」
咲「もしかしてあたしたち、死んじゃったのかな?」
草太「だとしたら、なんで!?」
華「確か、昨日は──」

〇おしゃれなリビングダイニング
咲「ホテルのディナー、楽しみだなぁ」
華「家族旅行なんて何年ぶりかしら。 蓮は本当にお留守番でいいの?」
蓮「オレ、興味ないんで」
咲「お兄ちゃんの分まで、おいしいものいっぱい食べてくるね」
蓮「ちょ、それは郵送して──」
草太「そろそろ出発するぞー」

〇おしゃれなリビングダイニング
咲「旅行に行くはずだったよね」
華「そのあとのことは覚えていないわ」
草太「今日は何曜日だ?」
咲「日曜日よ」
華「帰ってきた次の日のはずね」
咲「まさか、旅行先で事故に遭って一家全員・・・」
蓮「いや、おかしいって!」
蓮「オレは家に残ったはずだ」
華「じゃあ、出発前に何かあったのかしら?」
咲「あ! ポッチーは!?」
蓮「オレと一緒にいたはずだ」
華「蓮の部屋ね」
蓮「えっ」
蓮「ちょっとストップ!」

〇汚い一人部屋

〇おしゃれなリビングダイニング
咲「可愛かったポッチーが・・・」
蓮「ほんとにポッチーだよな?」
華「間違いないわ。 耳の形と胸のふわ毛がそっくりだもの」
蓮「ということは、一家全員死亡ってわけか」
蓮「オレたちは未練を残して地縛霊になったと・・・」
咲「あたし、まだやりたいことがたくさんあるのに・・・」
草太「咲、希望を捨てるんじゃない!」
咲「お父さん・・・」
草太「死んだと考えるのはまだ早い。 俺たちは──」
草太「マッドサイエンティストに体を改造された可能性がある!」
「・・・」
華「私、死亡説に一票」
蓮「死んだとしたら、死因はなんだ?」
蓮「母さんと咲は腐りかけた色をしてるし、父さんなんか骨になってる」
蓮「死体は死後2日で白骨化しないだろう」
「うーん・・・」
華「わかったわ!」
華「私たち3人は、旅先の事故でどこかに閉じ込められた」
華「そして水も食料もない極限状態の中──」
華「私と咲で草太を食べたのよ!」
咲「うっ、吐き気が・・・」
草太「そんな薄情な!」
蓮「いやいや、さすがに2日でそこまでは飢えないだろ・・・」
華「それもそうね」
草太「ふぅ」
蓮「出かけたみんなはともかく、オレはどうして死んだんだ?」
咲「焼死でしょ。黒こげだし」
蓮「家は燃えてないんだぜ」
蓮「オレは絶対に外出しない自信がある」
咲「この引きこもりが・・・」
華「そうだわ!」
華「事故があったなら、ニュースになっているんじゃないかしら」
咲「たしかに!」
華「・・・それらしいニュースはないわね」
蓮「まだ発覚してないのか」
咲「明日から学校だよ。どうすればいいの・・・」
草太「警察に通報するか」
蓮「待った!」
蓮「死んだはずの人間が通報したら、捜査撹乱になるんじゃないか?」
「うーん・・・」
咲「・・・ところでさ、お腹すかない?」
蓮「まさか。死んでるのに腹がすくわけ──」
蓮「・・・すいてるわ」
華「何か作ろうかしら」
蓮「それも捜査上まずいんじゃ・・・」
咲「無理。食べないと死ぬ」
蓮「もう死んでるって」

〇空

〇おしゃれなリビングダイニング
咲「きゃああ! ポッチーが壁抜けしてる!」
草太「大変だ! あれを人に見られたら──」

〇開けた交差点

〇おしゃれなリビングダイニング
草太「人を襲ってる!」
華「止めなきゃ!」

〇開けた交差点
咲「やめなさい!!」
通行人「うわぁ、ゾンビだ!」
咲「ポッチー、家に戻るよ!」

〇おしゃれなリビングダイニング
咲「どうして急にあんなこと・・・」
蓮「もしかして、腹が減ってるんじゃないか?」
華「きっとそうよ。ごはんをあげましょ」
咲「正解みたいね」
華「よかったわ」
草太「ぎゃー! なんで俺を襲うんだ!?」
華「あははは」
蓮「・・・骨だから」
咲「ごはんが足りなかったのかな」
蓮「人を襲うくらいだから、肉が好きなのかもしれないぞ」
華「そうね。草太、肉屋に走ってきて」
草太「ええ、俺!?」
華「襲われちゃうんだから、仕方ないでしょ」
草太「わ、わかりましたっ」

〇開けた交差点
草太「俺、人間に見えてるよな?」
草太「骸骨ってバレてないよな?」
草太「ドキドキする・・・」
草太「心臓、ないけど」

〇西洋の市場
草太「す、すみません」
肉屋「はいよ!」
草太「筋肉をください」
草太(しまった! 間違えた!)
肉屋「ははは。確かに筋肉っちゃ筋肉だねぇ」
草太(セーーーフ)
草太(人間の振りをしていれば、何とかなるものだな)
草太(さぁ、早く帰らないと。みんなが心配だ)

〇おしゃれなリビングダイニング
咲「暴れちゃダメでしょ!」
咲「おすわり!」
蓮「・・・そんなでかい犬と、よく格闘できるよな」
咲「お兄ちゃんとは鍛え方が違うのよ」
華「蓮もたまには外に出て、運動しないとね」
蓮「えー。日焼けしたくない」
蓮「紫外線でイケメンの美肌がくすむ」
華「誰が腐った肌だって!?」
蓮「言ってない! 言ってないから・・・!」
咲「引きこもってる時点で、イケメンは台無しだと思うなぁ」
咲「お父さん、帰ってきた?」
華「いいえ。草太ならカギをもっているはずよ」
蓮「てことは・・・」
  化野(あだしの)さーん、こんにちは
華「この声は、お隣の奥さん」
蓮「母さん、出るつもりなの!? オレたち、死んでるかもしれないのに」
華「居留守なんて使えないわ」
華「生き死によりも、まずはご近所づきあいが大切だもの」
蓮「そんなことある!?」
華「咲、お土産を用意して!」
咲「そんなの買ってないよ! お兄ちゃん、何かない!?」
蓮「あるわけ・・・」
蓮「あるわ!」
蓮「俺が家族旅行を先取りして通販で買ったやつ!」
華「ありがと!」
咲「ナイス引きこもり!」
蓮「それ褒め言葉じゃないからな!」

〇玄関の外
お隣さん「旅行、どうでした?」
華「家族でゆっくりできましたよ。 これ、つまらないものですが」
お隣さん「あら、ありがとうございます」
お隣さん「ところで、今日は朝から賑やかでしたね」
華「うるさくしてすみません。 ゴキブリが出てしまったもので」
お隣さん「嫌だわ。どこかから入ってくるのかしら」
華「もし見かけたら、私がひねりつぶして差し上げますわ」
お隣さん「さすがは化野さんちの奥さんね。 頼りになるわ~」

〇おしゃれなリビングダイニング
  おほほほ
蓮「母さん、どんなキャラでご近所づきあいしてるんだよ・・・」
咲「普段のままなんじゃない?」
華「というわけで、『一家全員死亡』はナシになったわ」
華「私は来週お茶会があるから、それまでは生きてることにしておいてね」
蓮「順応するの早すぎない?」
草太「みんな、お待たせ! 肉買ってきたぞ!」

〇おしゃれなリビングダイニング
咲「ポッチー、大人しくなったね」
蓮「これ、散歩どうするんだ?」
草太「散歩どころか、ほかにも問題が山積みじゃないか」
咲「あ」
咲「ねぇ、窓の外見て!」

〇空

〇おしゃれなリビングダイニング
草太「なんだ、お化けか」
華「普通にいるものね」
華「私たちみたいな家庭も珍しくないかもしれないわ」
草太「そうだな。バレないうちは、これまで通り暮らそうじゃないか」
咲「よかった。明日のバイト、休まなくてすむ」
蓮「死んでても、生きていくしかないってか。 世の中は大変だな」
蓮「まぁ、ネット環境があるならいいか」
華「そうと決まれば、ごはんにしましょ!」
華「今夜はカレーよ」
華「咲は食器の用意を。蓮は急いでごはんを焚いて」
咲「はーい」
蓮「えー」
華「手伝わざる者食うべからずよ」
華「草太は骸骨だから、玉ねぎを切ってもらいましょうか」
草太「はい、料理長!」

〇おしゃれなリビングダイニング
  生きていくしかない。
  たとえ今日から怪物になっても
  あたしたちの生活は続いていく──

コメント

  • 妖怪もの、私も大好きです( ´ ▽ ` )
    母さんの順応力高すぎだし、お兄ちゃんは残念イケメンだし、お父さんは筋肉を頼もうとしたりで、色々ツッコミ所ありすぎです😂

  • 順応が早い😆
    妖怪達の日常、ありそうでなかったパターンです。考えるだけでも楽しそうな。というか書いている本人が一番楽しかったのでは?笑

  • 原因を追求してるようで全然できてないのに、淡々としてる家族が妙に可笑しかったです😂
    あったかいホラーというか、新鮮です。
    蓮の「俺は絶対に外出しない自信がある」は、けだし名言😄

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