空白のひとコマ

遠藤彰一

エピソード3(脚本)

空白のひとコマ

遠藤彰一

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  午前2時52分──

〇漫画家の仕事部屋
  静かな部屋に、漫画を描く音が響き渡る──。
小田正人「はー、ちょっと休憩」
宮本義和「休んでる暇はないよ」
小田正人「いやいや。一服行った人の台詞ですか」
長谷川清香「私もうすぐ終わるんで手伝いましょうか?」
小田正人「いやいや。 俺が清香さんの仕上げ、手伝ってるんですから」
「・・・・・・」
小田正人「ってか、先生、今日寝すぎじゃない?」
長谷川清香「お疲れなんですよ。きっと」
小田正人「いや、でも」
長谷川清香「今日で最後なんですから、もう少しそっとしておいてあげましょう」
小田正人「清香さんはやけに先生に甘いですよね。 俺には厳しいのに」
宮本義和「・・・ふん」
長谷川清香「どうかされました?」
宮本義和「いや」
小田正人「それにしても長すぎますよ。 そろそろ表情描いてもらわないと本当に間に合わなくなっちゃいます」
宮本義和「そうだね」
小田正人「俺、ちょっと様子見てきます」
  そう言って小田は先生の部屋のドアノブに手をかける。
  ピンポーン
小田正人「げ、石黒さん来た」
  部屋を開けるのをやめ、玄関に向かう。
宮本義和「・・・清香ちゃん、落合先生のところでいいの? 次のアシスタント先」
長谷川清香「はい?」
宮本義和「木嶋(きじま)先生がよく許したなって」
長谷川清香「許す? なぜ許可が必要なんですか?」
宮本義和「いや、別にいいんだけど・・・」
長谷川清香「はあ」

〇漫画家の仕事部屋
石黒理「うぃー。お疲れー」
「お疲れ様でーす」
石黒理「もう、原稿上がったかい? 」
石黒理「ん? 先生は?」
宮本義和「まだお休みになってます」
石黒理「まだ寝てるの? いつから?」
宮本義和「いつだっけ?」
長谷川清香「0時くらいからだったと思います」
石黒理「3時間か。寝すぎだねえ。 売れっ子漫画家は徹夜が当たり前なんだから」
小田正人「打ち切りですけどね」
石黒理「それを言っちゃあいけないよ」

〇漫画家の仕事部屋
石黒理「大先生! 起きてください!」
「・・・・・・」
石黒理「先生! もうすぐ締め切りの時間ですよ!」
小田正人「今日、全然起きないんですよー。先生」
石黒理「寝てる暇あるなら少しでも漫画を面白くしましょうね」
石黒理「先生、開けますよ?」
石黒理「先生! いつまでも・・・」
小田正人「どうかしたんすか?」
  石黒の反応に驚き、部屋を覗き込む。
小田正人「うわーーーーーーーー!」
「どうしたの?」
小田正人「せ、せ、せ」
石黒理「・・・・・・」
宮本義和「先生!」
  思わず駆け寄ろうとする宮本の腕を石黒が掴む。
宮本義和「え?」
石黒理「俺に任せて」
  石黒はそう言ってひとり部屋に入っていく。

〇漫画家の仕事部屋

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