化け猫の想い出

りぃ

読切(脚本)

化け猫の想い出

りぃ

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〇シックなカフェ
  カラリンッ────

〇シックなカフェ
  いらっしゃいませ!
斗真「ほら、ムギも一緒に」
ムギ「い、いらっしゃいませ・・・」
常連客A「お、斗真くんとムギちゃんじゃないか」
常連客A「今日も同じの頼むよ」
斗真「はい、かしこまりました!」
斗真「今日はムギが全部やってみようか」
ムギ「わ、わかった・・・」

〇シックなカフェ
ムギ「あの人は確か、」
ムギ「ブラックコーヒーに角砂糖を3個だよね」
ムギ「お盆にのせて──」

〇シックなカフェ
ムギ「お待たしたいしまいたっ」
ムギ「にゃぁぁ、かんじゃったにゃぁ・・・」
常連客A「いや大丈夫だよ」
常連客A「いつもありがとう」
ムギ「は、はいっ」
ムギ「失礼しましゅっ」

〇シックなカフェ
  彼女が働き始めて2ヶ月くらい経っていた。
  物覚えもいいし、器用で手速い。
  だけど、接客となるとうまくいかない。
  知らない人だとなおさらだ。
ムギ「とーま!」
ムギ「ムギ、頑張ったよ!」
斗真「うん頑張ってた」
斗真「えらいぞ!」
ムギ「にゃぁぁ〜頭撫でないでにゃぁぁ〜」
ムギ「頑張ったけどかんじゃったし、」
ムギ「やっぱりダメ猫にゃぁ・・・」
  斗真のの背中に回って顔をうずめる。
  簡単に振り解くことはできそうだが、
  ムギが傷ついてしまうだろう。
  でもこれじゃあ仕事ができない。
  斗真は引き出しからあるものを取り出して、机の上に置いた。
ムギ「にゃぁ? この匂いは──」
ムギ「たい焼きー!」
ムギ「食べていいの?」
斗真「いいよ」
ムギ「わーい」
ムギ「はむはむ・・・」
斗真「よし、食べ終わったら帰ったお客さんのお皿下げてきてー」
ムギ「はむ?」
ムギ「むぅ・・・」
斗真「(よろしくね?)」
ムギ「わかったにゃ・・・」
  もう食べ終わってしまったのか、彼女は客席の方へ行ってしまった。

〇シックなカフェ
ムギ「これも下げて、これとこれも・・・」
ムギ「(ゆーま、ムギのこと気づいているのかなぁ)」
  手を動かしながら、ムギは過去を思い出す。

〇広い公園
  にゃーん
???「あ、猫だ!」
???「一緒に遊ばない?」

〇広い公園
???「あ、また来た。今日こそ──」

〇広い公園
???「やっと見つけた!」
???「今度こそ──」

〇広い公園
  にゃーん
???「今日は遊んでくれるの?」
???「あれ? 怪我してる!」
???「今助けるからね!」

〇勉強机のある部屋
???「僕のお年玉使って治してあげて!」

〇勉強机のある部屋
???「傷はどう?」
  にゃーん
???「よかった」
???「これからずっと一緒だよ!」

〇シックなカフェ
ムギ「(あれから病気になって死んじゃったけど)」
ムギ「(5年間もずっと一緒に遊んでくれたよね)」
ムギ「(ゆーまに「ありがとう」って言いたくて)」
ムギ「(化け猫に生まれ変わったのに)」
ムギ「(2ヶ月も経ってしまったにゃ)」

〇シックなカフェ
  彼女が皿を下げに厨房戻る途中──
常連客A「ムギちゃん、会計を頼めるかな」
ムギ「あ、ありがとうございましゅ!」
ムギ「(最近レジは教えてもらったけど、1人でできるかな・・・)」
ムギ「あの、えっと、えと・・・」
常連客A「ゆっくりでいいよ」
ムギ「えっと、お会計は530円になりましゅ!」
常連客A「お釣りはいらないよ」
常連客A「斗真君と美味しいもの食べなさい」
ムギ「え、あの、いいんでしゅか?」
常連客A「ああ、またくるよ」
  ────カラリン
ムギ「お客さん、誰もいなくなっちゃったにゃ」
ムギ「(あ、お釣りとーまに渡さないと・・・)」

〇シックなカフェ
ムギ「ねぇねぇとーまぁ」
斗真「どうした?」
ムギ「おじさんにお釣りいらないって言われて」
ムギ「2人で美味しいもの食べなさいって」
ムギ「470えん、貰っちゃった・・・」
斗真「へえ! 今度サービスしないとな・・・」
ムギ「貰っちゃダメだった?」
斗真「うーん・・・次は遠慮したほうが良さそう」
斗真「そうだ!」
斗真「今日の夜の魚はちょっと高いやつにしよう」
ムギ「え、いいの?」
ムギ「やったぁ!」
斗真「じゃああとちょっとだけ頑張ろうか」
ムギ「わかったにゃ!」

〇シックなカフェ
  あまり混むことなく時もすぎ──

〇シックなカフェ
  夜になった。
斗真「仕込みもオッケー、仕入れもオッケー」
斗真「あとは帰るだけだな」
斗真「ムギ、そろそろ帰るよー!」
ムギ「はいにゃっ!」
斗真「じゃあ僕は着替えるから」
斗真「先にタイムカード押しといてね」
ムギ「りょーかいにゃっ」
斗真「(ムギちょっとテンション高い?)」
斗真「(っていうかソワソワしてる?)」
斗真「ムギ、どうした?」
ムギ「え、っと、これ!」
  彼女はポケットから頭の部分のたい焼きを取り出した。
斗真「どうしたのこれ」
ムギ「えっと、あの、ね」
ムギ「ありがとう、って言いたかったの・・・にゃ」
斗真「(ちょっと干からびてるけど)」
斗真「(初めてムギから何か貰った)」
斗真「くれるのか?」
ムギ「(こくり)」
斗真「ありがとな!」
斗真「じゃあ俺着替えてくるから」
ムギ「はいにゃっ」

〇シックなカフェ
斗真「(急にどうしたんだろうか。なんか特別な日だったりするのかな?)」
斗真「(むしゃむしゃ)」
斗真「硬っ」

〇スーパーの店内
ムギ「ふーんふーふふーん」
斗真「さーて、今日は何にしようかなー」
斗真「サバにサンマにシャケ・・・いつも食べてるやつだな」
斗真「マグロにするか? でもどうやって食べさせよう・・・」
  するとムギが何かを見つけた。
ムギ「にゃにゃ?」
ムギ「とーまとーま、ムギこれが食べたいにゃ」
斗真「ん? ツナ?」
ムギ「うん、なんか懐かしい感じがする」
斗真「そうだな、なんか懐かしいなぁ」
  斗真はふと、昔のことを思い出した。

〇勉強机のある部屋
「ほらツナ缶だぞー」
あの頃のムギ「にゃぁぁん」
「いっぱい食べろよー」

〇スーパーの店内
斗真「(まさか。ムギってまさか)」
斗真「(昔飼ってた猫だったりするのか?)」
斗真「(そして確か今日誕生日だった気がする)」
ムギ「とーまぁ、ねえとーま!」
斗真「うぉ! どうした?」
ムギ「ツナ缶持ったままちょっとぼーっとしてたにゃ」
斗真「あ、ごめん ちょっと昔のこと思い出して」
ムギ「昔のことって、猫飼ってた・・・こと?」
斗真「そうだけど・・・」
斗真「やっぱりムギって」
斗真「僕が中学生の時まで一緒にいたムギか?」
ムギ「あっ、やっと気づいてくれたんだにゃっ」
斗真「そして化けて今のムギになったのか?」
ムギ「そうみたいだにゃ」
斗真「そんなこと起こるんだなぁ・・・」
斗真「じゃあツナ缶買って帰ろうか!」
ムギ「やったぁ!」

〇勉強机のある部屋
斗真「ほい、ツナ缶」
斗真「誕生日おめでとう」
ムギ「にゃ! 覚えててくれたんだ!」
ムギ「じゃあムギが誕生日祝うまで、まっててにゃ」
斗真「おう」
ムギ「これからもよろしくおねがいします、です」
斗真「明日からも頑張ろうな」

〇綺麗な一戸建て
  こうして化け猫と大学生の新たな日常が始まった。

〇綺麗な一戸建て
  完

コメント

  • 動物を飼ったことがある人なら誰しも、以前飼っていた動物が生まれ変わって人間になっても一緒にいたいな・・・と想像したことがあると思います。斗真に気付いてもらってよかったね〜ムギちゃん。

  • ほのぼのしていて、安心して見ていられました。喫茶店なのでこれからたくさんの出会いや思い出が待ってるのかな?今後の展開が楽しみです!

  • とても心あったまる作品でした。
    ムギちゃんかわいいなぁ。
    自分が大好きなものを食べずにお礼としてあげるなんて、凄く目頭が熱くなりました。

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