転生女神と屁理屈少年

碧野TOMATO

読切(脚本)

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〇男の子の一人部屋
「んんっ、重いな・・・」
  何だかいつもより身体が重い。
  僕は眠たい目を擦りながら身体を起こそうと試みた。
  だが───!
テンテン「おぉ、やっと目を覚ましたか! おはよう! 少年!」
  な、な、な・・・
「なんだ、コイツは! 不法侵入、泥棒か!?」
テンテン「泥棒じゃないよ。 見習い転生女神、テンテンだよ!」
「見習い転生、女神?」
テンテン「そうだよ、転生女神だよ。 早速だけど君を、特別に異世界に連れて行ってあげるよ?」
テンテン「どんな世界がいい?」
テンテン「無敵チートの勇者?」
テンテン「それとも美少女ばかりのハーレムな世界?」
テンテン「なにがいい? さぁ、選ぶんだー!」
  え、僕、死んだの?
  嫌だ、まだクリアしていないゲームもあるし、マンガだって・・・!
  大体、異世界転生って、ちっとも嬉しくない!
  魔法?
  ハーレム?
  チート? 悪役令嬢?
  ご遠慮願います!!
「それって拒否できるんですか?」
テンテン「え、えぇ・・・?」
「僕、異世界転生したくないです」
テンテン「えぇぇ─────・・・? 嘘でしょー? 異世界転生だよ?皆、よろこんで飛びつくでしょ?」
  いやいやいや、異世界転生なんてアニメの世界でしょ?
  そんな魔法やモンスターがウヨウヨしている世界に、誰が喜んでいくか。
  現代の文明を放棄してまで、行くような世界ではない。
テンテン「でもでもでも、どんな世界にでも行けるんだよ? ほら、例えば───」
テンテン「この小説の中に転生したりとかー?」
テンテン「君も好きでしょ? ほら、最弱劣等生からの成り上がり!」
テンテン「君をこの小説の主人公として、転生させてあげるよー!」
「断固としてお断りします。 そういう類はフィクションとして楽しむからいいんです」
「そもそもその小説の主人公、メッタメタのギッタギタンにされるんですよ? しかもその後も苦労続き・・・」
「僕は絶対に転生したくない!」
テンテン「えぇ──・・・。 うそでしょー?」
テンテン「君を転生させないと、ボク・・・」
テンテン「一人前の女神になれないのにー!」
「いやいや、そんなことを言われても・・・そちらの都合だし」
「困ってるのは僕なんですけど・・・」
テンテン「────君って中々ドライだねー」
テンテン「それじゃ、どんな世界なら行ってみたい? どんな世界でもいいんだよー?」
「別にないんだけど・・・」
「むしろ、平和な世界の金持ちイケメンに転生されるよりも、今の生活がいい」
「僕は(やり掛けのゲームや読みかけのマンガ、今シーズンのアニメを見切るまでは)今の世界がいい!」
テンテン「そ、そんな・・・! 金持ちイケメンを断ってまで現状を選ぶなんて!」
テンテン「そんな人・・・初めてだ!」
「そんなことを言われても・・・」
テンテン「・・・」
「・・・・・・・・・」
「ちなみに、もし異世界転生失敗したら・・・君はどうなるんだ?」
テンテン「───女神になれない」
「女神になれなかったら、どうなるの?」
テンテン「───死んじゃう・・・」
「しっ・・・」
「死ぬ───!!!?」
テンテン「────かもしれない・・・ (ボソッ)」
「いや、それ、大事なところ!!!!」
テンテン「えへへー♪ 前例がないから、分からないんだー」
テンテン「でも、ただでは済まないと思う。 何かしら罰が与えられるかも・・・」
「そ、そうなのか・・・」
「それじゃ・・・ 他の人を転生させれば?」
テンテン「でもね、 女神の存在を知られちゃったから・・・」
テンテン「君を、口封じしないと・・・」
「く、口封じ!?」
テンテン「君を・・・ 殺すしか───・・・」
「───!?」
テンテン「わ、わ、わァ!!!!」
スノウ「・・・あら、テンテン? まだ転生に手こずってるの?」
テンテン「す、す、スノウ先輩! ごめんなさい───!! ボクが悪いんじゃないんです!」
スノウ「あらあらー、そうなのー?」
スノウ「困ったわねー・・・」
スノウ「それじゃ、何が原因か・・・ 教えてくれるかしら?」
テンテン「えっと、その───・・・」
テンテン「こ、この人が! 転生したくないって渋るから!」
スノウ「ふぅん、そうなのねー」
スノウ「ねぇ、君?」
「は、はい! (なんだ、笑顔が逆に怖い!)」
スノウ「何で異世界転生したくないの?」
「え、だって・・・ ファンタジーの世界って、ゲームやテレビないですよね?」
「スマホも使えなければ、新作のマンガも読めない・・・」
スノウ「大丈夫よー? 並行世界に転生すれば、同じ生活レベルはキープできるわよー?」
「え、けど・・・それって転生の意味があるんですか?」
スノウ「あら、その通りだわねー。 困ったわねー・・・」
テンテン「こんな調子なんですよー。 すぐに駄々こねなんですよー」
スノウ「テンテン。 当たり前でしょ?人間っていう生き物は愚かで我儘な生き物なのですよ?」
「うっ、なぜか貶される羽目に・・・」
スノウ「ねぇ、君。 ちなみに彼女はいるの?」
「え、いや・・・ いないですが・・・」
スノウ「ならテンテンを彼女にしてみない?」
テンテン「な、な、なんで! 嫌ですよ、そんな!」
テンテン「こんな偏屈ばかり垂れる男なんて嫌です!」
スノウ「でもね、転生試験失敗してるから、テンテンにも罰を与えないといけないし・・・」
スノウ「死んじゃうよりも、彼女の方がいいでしょ?」
テンテン「そ、そうだけど・・・! でもでも、こんな駄々こねが了承するとは!」
「別にいいですよ」
テンテン「え!」
スノウ「あらー! 本当に?」
スノウ「それじゃ、それで! 一件落着ね!」
テンテン「いやいや、そんな! 先輩、先輩────!」
  こうして僕に、新しい彼女が出来た。
  彼女はテンテン。
  
  少しツンデレな、可愛い彼女だ。
テンテン「───しかたないなー・・・ これからよろしくね。 そういえば・・・」
テンテン「君の名前は何だっけ?」

コメント

  • 男の子が声だけなのも想像力を掻き立てていいですね。部屋で寝てただけでカワイイ彼女ができるなんて、「棚からぼた餅」どころの騒ぎじゃないですよ。ワンショットでもずっと見ていられるテンテンの可愛さもすごい。

  • テンテンちゃんがひたすら可愛いですね🤗
    転生しろってお願いされたら二つ返事で承諾しそう...

  • んー、テンテンが可愛いですね!ちょっとズレたところに面白さがあります!
    主人公との温度差が絶妙で、楽しくなってきますね。

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