忍者一家、現代へ移住す

朝永ゆうり

キミの家族は何してる?(脚本)

忍者一家、現代へ移住す

朝永ゆうり

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〇寂れた村
  時は戦国
  ここは、とある忍者の集落──
「ガルル・・・」
二葉「犬っこら、村を荒らしやがって!」
二葉「許さねぇ! さっさと出ていけ!」
二葉「やった! おっぱらったよ、とーちゃん!」
父「二葉、それ・・・”言霊”か?」
二葉「ことだま?」
母「言ったことが本当になっちまう忍術だ 二葉、よりによってお前が──」

〇雲の上
神様(言霊だと? それは厄介だな)
神様(この乱世であの力を無闇に使っては 歴史が変わってしまうかもしれん!)
神様(そうなる前にどうにかせねば・・・)
神様(きっと平和な世なら 言霊も悪さしないだろう── 平和な世、平和な世・・・)
神様「よし、令和に決ーめた☆」
神様「はぁ〜〜」

〇寂れた村
三香「あにじゃ!?」
一基「何だこの地響きのような── 父上ーっ!」
父「一基、原因は──」
一基「分かりません! とにかく一度家の中に──」

〇幻想空間
神様「私は神だ 二葉殿の”言霊”の能力が 発現したことを受け──」
神様「乱世の世をさらに混乱に陥れることを 回避すべく 藤林一家には──」
神様「暫くの間500年後の”令和時代”に 移住してもらうことになった よろしく頼む」

〇黒

〇古いアパートの居間
一基「・・・?」
父「みんな、無事か!?」
三香「イテテ・・・」
二葉「なんじゃこの着物 首が苦しいぞー!」
母「そう? お洒落じゃない」
父「お前ら・・・」
父「うわ! 俺も服が──!」
二葉「とーちゃん 気付くのおっそ!」
一基「父上、ここはおそらく──」
父「ああ、にわかには信じがたいが──」
父「500年後の未来だ!」

〇星
  かくして現代へやってきた忍者一家
  藤林家──
神様「ま、楽しんでちょーだいな♡」

〇空

〇空き地
三香「お散歩お散歩〜♪ふふ〜ん♪」
母「・・・あら?」
三香「かか?」
母「これ、薬草だわ!」
母(緑が少ない気がしてたけど 500年後も悪くないじゃない)
三香「毒のやつ?」
母「違う違う、これは身体にいい方! ほら、すり鉢でよく丸薬作ったでしょ?」
三香「かかは薬師さんだもんね! れいわでも薬師さんするの?」
母「それもいいわね! 少し持って帰ろうかしら?」
「ちょっとアンタ!」
ご近所さん「ここ私の土地よ 勝手に入らないでくれる?」
母「スミマセン とてもいい薬草が生えてたので・・・」
ご近所さん「薬草? それ雑草じゃない」
母「いえ、これは薬草ですよ 血の巡りを良くしてくれるの 頭痛や肩こりなんかにとても効く──」
ご近所さん「・・・まあ、欲しいなら持っていきな」
母「いいんですか!? ではお言葉に甘えて!」
三香「ねえねえおばちゃん こっちのいい匂いの草はなあに?」
ご近所さん「これはカモミール こっちはレモングラス」
三香「かも・・・れ・・・?」
ご近所さん「お茶にして飲むとうまいんだよ ハチミツ多めに入れてね 気分も晴れてスッキリするさ」
母「へえ〜知らなかったです! 確かにいい香り・・・」
ご近所さん「こっちも少し持ってくかい? どうせ増え過ぎちまって困ってたし」
母「いいんですか!? 嬉しい〜」
ご近所さん「ほら、よ」
母「ありがとうございます! お茶、試してみますね!」
三香「かか、よかったね!」

〇古いアパートの居間
母(三香はお昼寝っと ・・・二葉は大丈夫かしら?)
母(今のところ何もないけど 少し心配ね)
母(言霊、発現してないといいけれど)

〇学校の校舎
クラスメイト「おーい二葉 一緒に帰ろーぜ?」
二葉「おうよ!」

〇通学路
クラスメイト「なあなあ 二葉の家族ってどんなん?」
二葉「家族?」
クラスメイト「うん! 俺んちは昔からの八百屋でさ〜」
クラスメイト「かあちゃんも父ちゃんも ずっと家にいるし 俺も時々手伝いに店立たされるし」
クラスメイト「本当、嫌でさ〜 二葉はそういうことないのか?」
二葉「おいらん家はとーちゃんが会社で働いてる かーちゃんは家にいるけど薬師── じゃなくて、妹の面倒見てる」
二葉「あとは兄貴がいるよ 中学生の」
クラスメイト「へー、兄弟いいな 俺は一人っ子だからさ」
クラスメイト「でも兄弟いるとお金かかるんだろ? だから俺は一人っ子なんだって かあちゃんが言ってた」
クラスメイト「二葉の家は 貧乏じゃないのか?」
二葉「・・・びんぼーって何だ?」
クラスメイト「知らないのか!? お金がなくて貧しい暮らししてる 人のことだ」
二葉「へー よく分かんねーや 多分びんぼーじゃないと思うぞ?」
クラスメイト「そっか、じゃあ金持ちなんだな 羨ましいぜ」
二葉「おう! じゃあおいらん家ここだから──」

〇古いアパート

〇通学路
クラスメイト「なあ、お前んち──」
二葉「ん?」
クラスメイト「金持ちじゃねーじゃん! むしろ貧乏! ボロアパート住んでんのか!」
二葉「違う! びんぼーじゃない!」
クラスメイト「お前の父ちゃん 社長なのかと思った〜! ただの平社員なんだな!」
クラスメイト「平社員の父ちゃん 働かねえかあちゃん 3人兄妹で大変だ〜!」
二葉「そんなことない! おいらの家族は楽しいし 絶対びんぼーじゃない!」
二葉「それに、とーちゃんは──」
二葉「社長だ!!」
クラスメイト「あはは!んなわけねー! 貧乏の二葉〜またな〜」
二葉(嘘、ついちゃった・・・)

〇古いアパートの居間
「ただいま〜」
母「ああ、おかえり二葉」
二葉「ん? かーちゃんどうした?」
母「突然こんなものが届いて 困ってたんだ」
母「しかもその届けた人 お父さんのこと「社長」って呼んでて もう何のことだかさっぱり──」
二葉「しゃちょ・・・」
二葉「あ!」
「ただいま戻りました」
母「なあ一基」
一基「どうなさいました、母上?」
母「「社長」ってどういうことだい?」
一基「社長? 企業において一番上に立つ者で──」
一基「その会社における一切の決定権と 責任を持つ者──と教科書にあります」
一基「つまり令和の「殿様」と いったところでしょうか それがどうかいたしましたか?」
母「殿様!? あの人にそんなことが できるわけないじゃないか!」
母「忍は表立つことに慣れてないんだよ! むしろ使われてなんぼだというのに・・・」
母「ああ〜どうしよう! あの人大丈夫かしら! ここは私が・・・無理ね」
一基「母上!」
一基「二葉、どういうことだ?」
二葉「とーちゃんが社長に・・・」
一基「はあ!?」
「ただいま 戻ったぜぇ〜?」
一基「父上 その恰好は・・・?」
父「人の上に立つってのは 「殿様」のことだろ? なんたって俺は「社長」だからな!」
父「形から入る これ忍者もそうよ 着る物によって力がみなぎる」
一基「父上・・・」
???「失礼いたします」
会社の人「社長、こちら本日のお給料です まだ口座を作られていないということで 直接お持ちしました」
会社の人「では」
父「どうだ二人とも!」
父「一基も二葉も 何でも欲しい物買ってやるよ!」
「あなた・・・」
母「社長だか殿様だか知らないけれど あなたがそんな仕事 できるワケないでしょ!」
母「今まで影の存在として生きてきた忍が 急に殿様の真似事!? やめなさい!絶対に辞めなさいっ!」
父「だが・・・」
一基「父上 無礼を承知で申し上げますが 家臣(社員)たちは今どちらに?」
父「会社で仕事をしているはずだ」
一基「・・・父上、嫌な予感がします」
父「同行、頼めるか?」
一基「御意」

〇屋根の上

〇空
一基「ここが父上の会社・・・」
父「一基、落ちぬように 窓の外から見るだけだ 皆に気づかれぬよう頼む」
一基「御意」

〇事務所
社員「社長丸投げ〜」
社員「めんどい案件ばっかだし うちらも帰っちゃおっか」
社員「お、いいね」

〇空
一基「父上・・・」
父(これは!)
父「一基すまない 私はこの会社に忠誠を誓ったはず──」
父「なのに”社長”になった途端 調子に乗ってこのザマだ」
父「こんなの・・・間違ってるな」
一基「父上!?」

〇事務所
父「皆の者!」
「社長!?」
父「申し訳なかった!」
父「”社長”だからと 何もかもお前たちに任せ 勝手に家に帰ってしまった」
社員「社長・・・」
社員「わ、私たちは別に・・・」
父「影として生きていた私に 社長など務まらぬことは重々承知」
父「だが、なってしまったのだから やり遂げたい どうか皆の手を貸してほしい」
父「私も頑張るから・・・頼む! この通りだ!」
「社長〜・・・」
社員「はい、こちら──」
社員「──え!? 人事を間違えてた!?」
父「・・・ははっ」
「あはは・・・」
父(ほっ・・・)

〇空
一基(二葉と母上か・・・)

〇古いアパートの居間
二葉「とーちゃん、ごめんなさい 嘘ついたうえに うまく言霊も使えなくて・・・」
父「いや、身の程わきまえず 調子に乗った俺も悪かった」
父「それに二葉が言霊をしっかり コントロールできるようにサポート しなきゃいけないのが我々家族だ」
二葉「でも・・・」
「はいはーい 辛気臭い顔した男性のみなさーん!」
母「美味しいお茶が入りましたよ〜」
三香「たよ〜」
一基「見慣れぬ色ですね これは一体・・・?」
三香「ハーブティーだよ〜」
母「ご近所さんが分けてくださったの 気持ちも晴れてスッキリするらしいわ!」
父「へえ・・・」
二葉「とーちゃん おいら言霊連発しないように修行する!」
父「ああ だが、ほどほどにな」
一基「俺もお手伝いさせてください」
父「もちろんだ!」

〇雲の上
神様「令和の暮らしはどうだ? 藤林一家!」
神様「言霊うまく使えるようになるまで 楽しめよ〜♪」

コメント

  • さすが忍の一家、適応力が高い…!ちょっとズレつつも現代でほのぼのと暮らしているところや、二葉が子どもらしい理由で言霊を使っちゃうところ、困りつつも家族がおおらかに受け止めて対応しようとするところ…好きポイントがたくさんあって楽しかったです!

  • 私も忍者になれるなら分身の術使いたいですー!!!!!✨😊

    そしてっ!とても面白かったですー!!忍者✖️ファミリー良いですね✨新しいですし、かなり広い話になってしまいますが、海外ウケも良さそうですよね!?もちろん国内もですが!!

    Oh!!ジャパニーズ忍び!!と外国人がはしゃぐ姿を想像してしまいました✨😍

  • 令和に飛んだだけでも面白かったのに、『言霊を使いこなす』という課題!ワクワクします(´∀`=)
    令和ですと、スマホやパソコンもありますから、文字のやり取りでやり過ごそうとして、それが仇となるパターンも面白そう!電話も多少オブラートに包めるような感じになるのかな?テレビは?動画配信は?
    ネタが限りなくあって楽しそう!

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