生きた人形

NekoiRina

生きた人形(脚本)

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生きた人形
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〇店の入口
女の子「うわぁ、パパ見て!」
女の子「可愛いお人形~!」
女の子「ねぇ、買って!」
オンジュ「お嬢ちゃん、ごめんなさいね~?このお人形は売り物じゃないのよぉ~?」
女の子「え~・・・ケチなおばさん!!」
オンジュ「はぁ!?このクソガキっ・・・」
「こらこら、大人げないよ?オンジュ」
女の子「オカマ・・・?」
ディアロ「僕はこんな声だけど、れっきとした美しい女性なのだよ?お嬢ちゃん」
ディアロ「そんなことも分からない愚かな子供は、今すぐ地獄に送ってあげようか?」
女の子「うわああん!パパー!」
オンジュ「大人げないのはどっちよ」
ディアロ「そんなことより、ほら見て?」
ディアロ「この「生きた人形」が完成するのも、あと少し。ようやく僕たちの願いが叶うよ」

〇牢獄
ティト「ヒヤラ!こっちへ!」
ヒヤラ「お姉さま!何が起こったの!?」
従者「なんだ!?隣国からの敵襲か!?」
従者「うわああ!」
オンジュ「やっと見付けた~♪こんなところに隠れていたなんて。貴方たちがグラディトのお姫様ね?」
ヒヤラ「て・・・天使・・・?」
ティト「まさか、「殺戮の天使」!?」
オンジュ「あらあ、お嬢ちゃんよく知ってるわね?」
オンジュ「そうなのよ~、貴方たちが中々見付からないから、色んな町を破壊しちゃった♪」
ティト「私たちも殺すの?」
オンジュ「大人しくついてくるなら、命は助けてあげる」
オンジュ「どうする?」
ティト「・・・分かりました」
ヒヤラ「お姉さま!」
オンジュ「物分かりが良くて助かる~♪」

〇近未来の開発室
ディアロ「ようこそ、我が国へ」
ヒヤラ「悪魔・・・?」
ティト「私たちを・・・どうする気ですか?」
ディアロ「君たちは、異国に伝わる「生きた人形」という昔話を知っていますか?」
ヒヤラ「生きた・・・人形?」
ディアロ「兄と生き別れになった娘が、兄を探す旅の道中で、ある呉服屋に飾られた一体のマネキンに目を奪われる」
ディアロ「その店の主人に「生きたマネキンにならないか?」と勧められ、娘はその店で「生きた人形」として働くことになる」
ティト「その娘は、その後どうなるのですか?」
ディアロ「たいした話にはなりません」
ディアロ「美しい「生きた人形」を手に入れて、高値で売ってやろうとする悪い人間に騙されそうになりますが、間一髪のところで」
ディアロ「生き別れの兄が迎えに来てハッピーエンド」
ディアロ「でもこの「生きた人形」の話には、語り継がれなかった続きがあるのです」

〇怪しげな祭祀場
オンジュ「美しい「生きた人形」が兄と店を去ると、あっという間に店は廃れた」
オンジュ「店の主人は美しい娘の代わりに「生きた人形」を務めてくれる娘を必死で探した」
オンジュ「だけど、自らすすんでマネキンになりたがる娘なんていない。焦った店の主人は、禁忌と言われていた魔術に手を染めた」
ヒヤラ「禁忌の魔術?」
ディアロ「それは「人格を眠らせる魔術」」
ディアロ「店の主人は美しい娘を連れ去り、人格を眠らせ人形にした。店は美しい人形に引き寄せられた客でまた活気を取り戻した」
ディアロ「めでたし、めでたし」
ティト「まさか・・・その店の主人って」
オンジュ「察しが良いのねぇ♪そうよ、その禁忌を犯した男が、貴方たちの祖先」
オンジュ「グラディト国を創った者」

〇飛空戦艦
ディアロ「人格を眠らせる力を使って、店の主人は周りの人間をどんどん傀儡にし、ついには自分の王国を創るまでの力を得た」
ディアロ「その力は代々受け継がれ、今「人格を眠らせる力」を持つ者は二人」
ディアロ「それが、君たちだ」
ヒヤラ「ええ!?私たちが!?」
ディアロ「おや、妹さんは知らないのかい?」
ティト「私たちは・・・特例なんです」
ヒヤラ「特例?」
ティト「代々受け継がれる「人格を眠らせる力」は、女性に継承されることはなく、あくまで意図的に王となる者だけに伝承されてきました」
ティト「でも・・・私は力に目覚めてしまった」
ティト「教えられてもいないのに、人をあやつることが出来た。そんな私を・・・王は恐れました」

〇近未来の開発室
オンジュ「自分たちがはるか昔から虐げてきた「女性」が力を持つ」
オンジュ「さぞかし王は怯えたでしょう」
ティト「力なんて使いこなせないのに、父は私をあの地下牢に閉じ込めました」
ヒヤラ「ええ!?お姉さま閉じ込められていたの!?」
オンジュ「いや、分かるだろ普通」
ティト「ヒヤラは、私があそこに引きこもっていると思っていたみたいで」
オンジュ「呑気な妹ね」
ティト「そんな私を貴方たちが連れ出してくれた」
オンジュ(だからあっさりついてきたのね)
ティト「ところで、貴方たちの目的は?」
オンジュ「願いを叶えるためよ」
ヒヤラ「お姉さんの願いって?」
オンジュ「私たちを」
オンジュ「殺してほしいの」

〇店の入口
ディアロ「君たちをさらったあの日から、どれだけの月日が経ったのだろう」
ヒヤラ「ヒヤラ、人形のフリ上手になった!」
ディアロ「ああ。人格を眠らせる、正確には「人格を吸い出し自身に吸収する」それが君たちの力」
ディアロ「その為に必要なのは、自身が「無」になること。すなわち、自身も「生きた人形」になることが必須条件」
ディアロ「ティトも上手く力を使えるようになったね」
ティト「本当にやるの?」
ディアロ「そのために連れて来たんだ」
ディアロ「私たちは全ての人格を眠らせて「死んだ人形」になりたいんだ」
ティト「どうして・・・」

〇魔法陣
オンジュ「私たちは創られたもの」
オンジュ「あらゆる力を与えられた」
ディアロ「私たちに出来ないことはない」
ディアロ「私たちの力はどんどん強くなって」
ディアロ「ついに自分で自分を制御できなくなった」
ディアロ「アンジュは「殺戮の天使」なんて名がつくほどに、破壊衝動を抑えられなくなった」
ディアロ「このままだと、この地上全てのものを消し去るまでアンジュは止まらない」
オンジュ「だからお願い。もう眠らせてほしいの」

〇店の入口
ヒヤラ「お姉さん・・・」
ティト「分かったよ」
ティト「貴方たちは命の恩人。約束は守る」
ディアロ「ありがとう」
ティト「ふたりの人格は私たちの中に」
ティト「いつかまた、貴方たちを元に戻せるように。私、もっとこの力をコントロール出来るように頑張るから」

〇店の入口
女の子「うわぁ、パパ見て!」
女の子「可愛いお人形~!」
女の子「ねぇ、買って!買って!」
ティト「ごめんね?このお人形は売り物じゃないの」
ヒヤラ「これは私たちの「大切なお人形」だよ!」

コメント

  • 表紙に惹かれて、初めて読みました。独特の世界観で、初体験でした。たくさんのキャラの中から、今回の話に選ばれたのも、作品の世界にあってるなと思いました。おもしろかったです。感謝。

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