エピソード1(脚本)
〇ホテルのレストラン
青木実愛(この世で一番簡単にお金を稼ぐ方法は、男を騙すことだ。 欲しい言葉を欲しい表情で言えば、大抵の男は心を許す)
青木実愛(結婚をちらつかせ、絞るだけ絞ったら捨てればいい。 これまでそうやって生きてきたし、これからだってそうだ)
青木実愛(今日のカモはこの男。榊蒼真(さかきそうま)誰よりも金払いが良く、誰よりも顔がいい(タイプではないけど))
青木実愛(それにしても馬鹿な男だ。 その気になれば貢がせられる女なんて、たくさんいるだろうに。私なんかに貢いで)
青木実愛(この男も結婚結婚、うるさくなってきたから切らないと。 金払いが良いだけに、少し惜しいけど仕方ない)
青木実愛(結婚詐欺は引き際が大事だ。 どれだけ金が手に入ろうと、豚箱行きじゃ意味がない。 そんな人生、死んでもごめんだ)
青木実愛(まぁ、こいつ程顔の良い男なら、すぐに他の女が見つかるだろう。私に捨てられても3日も経てば忘れるはずだ)
青木実愛(私なんかより何百倍も性格の良い女と結婚して、せいぜい幸せになればいい)
榊蒼真「綾ちゃんと結婚するの楽しみだなぁ。結婚式場とか新婚旅行先、どこが良いかなー」
青木実愛「私も蒼真さんのお嫁さんになるの、すっごく楽しみ〜」
青木実愛(・・・・・・本当に馬鹿な男だ)
〇女の子の一人部屋
青木実愛(榊蒼真を切って、一週間が経った。 LINEもブロックしたし、電話番号はそもそも教えていない)
青木実愛(偽名を使っていたし、私の写真も撮らせなかった。私はSNSもやっていないし、榊蒼真は私を見つけられないだろう)
青木実愛(・・・・・・なんか急にシュークリーム、食べたくなってきた。 めんどくさいけど、コンビニ行くか)
〇玄関の外
青木実愛「ふっふーん。シュークリーム。シュークリーム」
榊蒼真「シュークリーム食べたいなら、買ってこようか?」
青木実愛「え、いいの?ありが・・・・・・」
青木実愛「なんでいるの?」
榊蒼真「彼氏が彼女の家に来るのに、理由なんて必要ないでしょ?綾ちゃん。 ・・・・・・いや。実愛ちゃんだったね」
青木実愛「・・・・・・どこまで知ってる訳?」
榊蒼真「好きな人のことなら、なんでも知ってるよ。 実愛ちゃんの本名、ご両親、友達、元彼、俺以外にカモにしていた男、」
榊蒼真「歴代担任、歴代教科担任、飼っていた犬の名前」
榊蒼真「俺の前ではキャラメルラテを飲んでたけど、本当はブラックコーヒーが好きなこと」
榊蒼真「恋愛映画が好きと言っていたけど、本当はゾンビ映画が好きなこと」
榊蒼真「大好物のシュークリームは体型を気にして、週に一度しか食べないこと。 他には」
青木実愛「もういい。もうわかった」
榊蒼真「俺がどれだけ実愛ちゃんのことが好きか、わかってくれた?」
青木実愛「・・・・・・お金は全額返すから、もう付き纏わないで」
榊蒼真「いらないよ。そんなはした金」
青木実愛「口止め料として500万プラスで」
榊蒼真「だからいらないって。 俺が欲しいのは、実愛ちゃんだけだよ」
青木実愛「・・・・・・悪いけど誰かの物になる気はないの。 お金が要らないなら、さっさと帰って」
榊蒼真「実愛ちゃん。結婚詐欺の罪は重いんだよ」
青木実愛「・・・・・・脅してる訳?」
榊蒼真「ただ提案してるだけだよ。 刑務所に入り、なにもかも失った後の実愛ちゃんと結婚しても良いんだよ。 俺、気は長い方だから」
青木実愛「・・・・・・」
榊蒼真「実愛ちゃん。俺と結婚してください」
青木実愛(榊蒼真が跪いて、待っていた紙袋から花束を出した)
青木実愛(せめて指輪にしてよ。質にいれるのに。 花なんて枯れたら終わりじゃない)
榊蒼真「実愛ちゃん。選んで。 豚箱か、俺と入籍するか」
青木実愛(どっちも豚箱だろ。 ・・・・・・でも刑務所なんて、絶対に嫌だ)
青木実愛(・・・・・・・・・・・・私は)
青木実愛(私は仕方なく、榊蒼真の手を取った)
榊蒼真「・・・・・・実愛ちゃん。ありがとう。絶対に幸せにするから」
青木実愛(絶対、すぐに離婚してやる!!)
青木実愛(こうして私たちの奇妙な結婚生活は始まった)
実愛の「どっちも豚箱だろ」というセリフにしびれました。彼女はとことんプロに徹した根っからの詐欺師なんですね。詐欺師とストーカーの知恵比べor根比べ。結婚生活が楽しみなような怖いような…。
逃げられない結婚詐欺師、うわー大変なことに。。彼氏さん側も、リサーチを通り越したストーキングですよね。。壮絶な夫婦生活になりそうですねw
ヤバい人に捕まりましたね!彼氏の方が一枚上手で(笑)。