エピソード10(脚本)
〇教室
教室のセットを囲う大勢のスタッフ。
セットには学ランを着た柄の悪い男子高校生が30名ほどおり、1人椅子に座る金髪の円城寺。
その表情は硬い。
その前で立ち話をする佐伯謙介。
耳や口にはピアス。
円城寺が佐伯の肩を叩く。
円城寺敏郎「や、やあ」
佐伯謙介「・・・誰?」
円城寺敏郎「佐伯君、だよね?」
佐伯謙介「そうだけど? 何か?」
円城寺敏郎「俺も、篠宮プロダクションに所属してるんだ」
佐伯謙介「ふーん。他に何出てんの?」
円城寺敏郎「実は、役付きは今日が初めてで。松田太一役」
佐伯謙介「ああ、あんたが」
円城寺敏郎「同じ事務所同士、よろしくね」
佐伯謙介「俺、そういうの嫌いなの」
佐伯謙介「それと、あんた、何年目?」
円城寺敏郎「3年目だけど」
佐伯謙介「俺は15年目」
円城寺敏郎「そんなに前から?」
佐伯謙介「あ、しばらく休んでたけどな。 それでも、活動再開したのは5年前だ。 あんたの3年より長い」
佐伯謙介「俺の方が芸歴長いんだから、タメ口やめろよな」
円城寺敏郎「あ、はい。すんません・・・」
佐伯謙介「それに、あんたの役って今日だけだろ? 俺に坊主にされて不登校になっちゃうんだよね?」
佐伯謙介「あー、えっと、陰陽師君」
円城寺敏郎「円城寺です。 今日だけだけど、一応クラスメイト役だし、一緒に作品を作る仲間なんだから」
佐伯謙介「またタメ口になってるよー」
円城寺敏郎「・・・失礼・・・しました」
佐伯謙介「あんたが初めてだろうと俺には知ったこっちゃない」
佐伯謙介「ちょい役らしく、頑張って俺を引き立ててくれよ」
円城寺敏郎「なっ」
佐伯謙介「何? 何か文句ある?」
円城寺敏郎「・・・いえ。頑張って演技します」
佐伯謙介「ふん。蟻め」
円城寺敏郎「蟻?」
佐伯謙介「ああ、そうだ。お前は蟻だ」
円城寺敏郎「どういう意味?」
「そろそろ本番始まりまーす」
佐伯謙介「まあ、いいさ。 くれぐれも俺の邪魔だけはしないでくれよ」
円城寺敏郎「・・・・・・」
佐伯謙介「返事は?」
円城寺敏郎「・・・はい」
拳を強く握りしめる円城寺。
〇教室
宮本が隅で腕を組んで座っている。
教室では生徒達が教室で待機している。
その中に佐伯、男子高生A、Bもいる。
宮本吾郎「シーン42、スタート」
佐伯と男子高生A、Bが話すふりをする。
〇教室
ドアが開き、円城寺が入って来る。
佐伯謙介「おい、松田。なんだこの頭は?」
円城寺敏郎「くっ。離せ!」
男子高生A「だっせ。夏休みデビューかよ」
佐伯謙介「おい。質問に答えろ。どうしたんだよ?」
円城寺敏郎「・・・・・・」
宮本吾郎「カーット! どうした? 台詞飛んだ?」
円城寺敏郎「はい。申し訳ございません」
宮本吾郎「すぐに台本読み直して」
円城寺敏郎「はい。皆さん、ご迷惑おかけします」
佐伯謙介「おいおい。冗談だろ? 大した台詞ないくせにいきなりNGかよ。 金閣寺君よお」
円城寺敏郎「・・・・・・」
〇教室
男子高生A、Bが円城寺を取り押さえ、円城寺の髪を鷲掴みにする佐伯。
佐伯謙介「おい。質問に答えろ。どうしたんだよ?」
円城寺敏郎「うるせえ。俺の勝手だろ」
佐伯謙介「なんだあ? その口の利き方は。 おい、あれ、持ってるか?」
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