第4話 ミシェルの過去(脚本)
〇城の廊下
勇者マリー(ここがミシェル様の部屋・・・)
宮廷魔導師リゼット「さ、マリー様 開けてください」
勇者マリー「・・・リゼットさんも一緒ですよね?」
宮廷魔導師リゼット「はい」
勇者マリー(・・・なら、だいじょうぶかな)
勇者マリー「じゃ、開けますね・・・」
〇謁見の間
皇帝トビアス「・・・では、気がついたらここにいた、と」
松本舞花「はい・・・」
皇帝トビアス「にわかには信じがたいな」
松本舞花「嘘じゃないです!」
松本舞花「お姉ちゃ・・・姉に会いたいって思ったら、すごい光が・・・」
皇帝トビアス「姉に・・・?」
松本舞花「姉は、光に包まれたと思ったらいなくなって・・・」
皇帝トビアス「姉がいなくなった日時と状況は?」
松本舞花「昨日の夕方・・・ あの女に刺されてすぐ」
皇帝トビアス(まさかリュテスが召喚したのは・・・)
皇帝トビアス「心当たりがないわけでもない」
松本舞花「ほんとですか!?」
松本舞花「お願い! 姉がどこにいるのか教えてください!」
皇帝トビアス「・・・いいだろう ただし──」
〇貴族の応接間
勇者マリー「甘い匂い・・・?」
第一王子ミシェル「マリー様・・・」
勇者マリー「・・・アップルケーキ? おいしそう・・・」
第一王子ミシェル「アップルケーキでお誕生日を祝っていたとおっしゃっていたので・・・」
勇者マリー「それでわざわざ買ってきてくれたんですか!?」
第一王子ミシェル「いえ、その・・・」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
勇者マリー「・・・ミシェル様?」
第一王子ミシェル「わたしとリゼットが作りました」
宮廷魔導師リゼット「わたしは材料を加熱しただけで、作ったのはほとんどミシェルです」
勇者マリー「えーっ、すごーい!」
勇者マリー「あたしが食べてもいいんですか?」
第一王子ミシェル「ええ、もちろん・・・」
勇者マリー「いただきまーす」
「・・・・・・」
勇者マリー「おいしい!」
勇者マリー「サクサクの生地にとろとろのリンゴがすごい合う!」
勇者マリー「カスタードクリームもふわふわ~」
勇者マリー「これ自分で作ったなんて、ミシェル様すごい!」
宮廷魔導師リゼット「・・・ええ、そうですね」
勇者マリー「このテーブルクロスもすごい綺麗ですね」
勇者マリー「城の食堂のやつは華やかな感じですけど、こっちは繊細で・・・」
勇者マリー「あのハンカチの刺繍と似てるかも?」
第一王子ミシェル「・・・マリー様」
第一王子ミシェル「あのハンカチは、わたしの私物です」
勇者マリー「そうなんですか?」
宮廷魔導師リゼット「・・・少し席を外します」
勇者マリー「あっ、リゼットさん!」
第一王子ミシェル「・・・マリー様」
勇者マリー「はっ、はい・・・」
第一王子ミシェル「・・・わたしは・・・」
〇湖畔
皇帝トビアス「なかなかさまになっているではないか」
松本舞花「ここここごえるようにさむいんですけど・・・」
皇帝トビアス「儀式用の衣装だからな」
皇帝トビアス「さあマイカ 教えたとおりにやれ」
皇帝トビアス「儀式を終えたら、姉の居場所の心当たりを教えよう」
松本舞花「わわわかりました・・・」
〇貴族の応接間
第一王子ミシェル「・・・わたしはこの王城で生まれ育ちました」
第一王子ミシェル「ですが、わたしの母はフィロメナの出身です」
第一王子ミシェル「リゼットの母・・・つまり、わたしの叔母も」
勇者マリー「フィロメナ・・・?」
第一王子ミシェル「大陸の北・・・ 今は帝国領となった、小さな国です」
第一王子ミシェル「母は出稼ぎのためにリュテスへ来た際、父に見初められ・・・」
第一王子ミシェル「フィロメナに残した家族を養うため、父の愛人となったのです」
勇者マリー「・・・・・・」
第一王子ミシェル「父は初め、母を王妃にするつもりだったようですが・・・」
第一王子ミシェル「異国の平民・・・それも帝国領出身の母が認められるはずもなかった」
第一王子ミシェル「そして・・・双子を産んだことで、母への風当たりはさらに強くなりました」
勇者マリー「どうして?」
第一王子ミシェル「リュテスでは、双子は忌み子といわれているのです」
第一王子ミシェル「・・・母は、双子のどちらかを殺すように迫られました」
勇者マリー「それで・・・どうしたの?」
第一王子ミシェル「母は結局、わたしたちのどちらも殺せず・・・」
第一王子ミシェル「・・・わたしの兄弟は、赤子のうちに異世界へ送られたそうです」
勇者マリー「ひどい、そんなの・・・!」
第一王子ミシェル「そして母は・・・」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
第一王子ミシェル「・・・母は・・・」
〇水たまり
松本舞花「ささささむい・・・」
松本舞花(半袖短パンで体育やらされてたときが天国みたい)
松本舞花「・・・・・・」
松本舞花(トビアスさんの言ってたこと ほんとなのかな・・・)
〇謁見の間
皇帝トビアス「いつからか、ガンディアからは自然の力が失われた」
皇帝トビアス「日が射さず、腐った大地では作物は実らず・・・」
皇帝トビアス「海は荒れ、漁に出ることもままならない」
松本舞花「・・・・・・」
皇帝トビアス「ゆえに豊かな周辺国をわが領土としてきたが・・・」
皇帝トビアス「根本的な解決にはならない 神の声を聴く者が必要なのだ」
松本舞花「神の・・・声?」
皇帝トビアス「神の怒りをひもとけば・・・ きっと以前のような豊かなガンディアに・・・」
〇水たまり
松本舞花(自分の国の衰退が神様のせいだなんて・・・)
松本舞花(ほんとにそんなこと、あるのかな・・・)
松本舞花(・・・ううん ほんとかどうかなんて、どうでもいい)
松本舞花(お姉ちゃんに会うために、ちゃんと儀式をしなきゃ)
松本舞花「・・・天におわす神よ わが声を聴き、御心を示したまえ・・・」
〇貴族の応接間
第一王子ミシェル「・・・いえ」
第一王子ミシェル「すみません・・・ マリー様のお祝いにふさわしい話題では・・・」
勇者マリー「話してください ミシェル様が話したいなら」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
第一王子ミシェル「母は・・・ ならず者に暴行されました」
第一王子ミシェル「先導したのは・・・ 同じフィロメナ出身の魔導師です」
第一王子ミシェル「母は同郷の彼を信用していました」
第一王子ミシェル「わたしにとっても、城の中で信用できる数少ない人物でした」
第一王子ミシェル「ですが彼は・・・ 出世のために母を売ったのです!」
勇者マリー「・・・ミシェル様・・・」
第一王子ミシェル「その事件を皮切りに、母は表立って心ない言葉を投げつけられるようになり・・・」
第一王子ミシェル「心労がたたって、そのまま・・・」
勇者マリー「ひどい・・・ そんなのって・・・」
勇者マリー「その魔導師は、今も城にいるんですか!?」
第一王子ミシェル「・・・いえ リゼットが彼の罪を暴き、追放処分としました」
第一王子ミシェル「そのせいでリゼットへの風当たりはますます強くなったのですが・・・」
勇者マリー「・・・・・・」
第一王子ミシェル「・・・このハンカチは母の形見です」
第一王子ミシェル「ハンカチとテーブルクロスのこの刺繍はフィロメナ特有のもので・・・」
第一王子ミシェル「マリー様が綺麗だと言ってくださって、うれしかった」
勇者マリー「そんな、あたし・・・」
勇者マリー(ミシェル様が話したいなら・・・ なんて言っちゃったけど)
勇者マリー(こんな話しをさせちゃって、よかったのかな・・・)
〇城の廊下
宮廷魔導師ユーグ「リゼット殿」
宮廷魔導師リゼット「ユーグ殿・・・ なにかご用ですか」
宮廷魔導師ユーグ「日々、頼りないいとこの尻拭いとは 貴殿も大変ですね」
宮廷魔導師リゼット「・・・あの方は頼りなくなどありません」
宮廷魔導師ユーグ「聞きましたよ ミシェル様が厨房を借りたとか」
宮廷魔導師ユーグ「懲りない方ですね 12年前と同じ過ちを犯すとは」
宮廷魔導師リゼット「・・・過ち?」
宮廷魔導師リゼット「殿下は、虐げられる母君を喜ばせようとしてケーキを焼いただけです」
宮廷魔導師ユーグ「ケーキなど城下町で求めればよい話です」
宮廷魔導師ユーグ「料理人でもない男が厨房に立ち入るなど、王にふさわしい行動ではない」
宮廷魔導師ユーグ「あのとき貴殿も後始末に追われていたではありませんか」
宮廷魔導師リゼット「王にふさわしいかどうかを決めるのは貴殿ではありません」
宮廷魔導師リゼット「・・・話は終わりですか? では、失礼」
宮廷魔導師ユーグ(あの女・・・ 前ならあんなふうに言い返してこなかった)
宮廷魔導師ユーグ(やはり、あの勇者は邪魔だな・・・)
〇貴族の応接間
第一王子ミシェル「マリー様・・・ あなたが話を聞いてくださってよかった」
勇者マリー「え?」
第一王子ミシェル「信用できるのはリゼットだけ ずっと、そう思っていましたが・・・」
第一王子ミシェル「わたしたちのために力を尽くそうとしているあなたを見て・・・」
第一王子ミシェル「わたしは・・・ あなたを信じたいと・・・」
勇者マリー「ミシェル様、どうしてそこまで・・・」
勇者マリー「あたし、初対面のミシェル様を殴っちゃったのに・・・」
第一王子ミシェル「妹君を強く想うがゆえの行動でしょう?」
勇者マリー「それは・・・まあ?」
第一王子ミシェル「マリー様・・・僕は・・・」
宮廷魔導師リゼット「お待たせしました」
勇者マリー(よかったぁ・・・ リゼットさんが来てくれて)
勇者マリー(もしミシェル様に告白されても、あたしは応えられない)
勇者マリー(ミシェル様のこと、嫌いじゃないけど・・・)
勇者マリー(舞花を置いて、あたしだけ幸せになるわけにはいかない)
勇者マリー(それに、あたしはいずれ日本に帰る)
勇者マリー(伊達に復讐をして、舞花が幸せになるまで見届ける)
勇者マリー(ミシェル様は、この世界の人と一緒にいたほうがいい・・・よね)
第一王子ミシェル「ところでリゼット、そのワインは?」
宮廷魔導師リゼット「マリー様のお誕生日のお祝いですから 盛大にやりましょう」
第一王子ミシェル「これ、当たり年のワインじゃないか?」
宮廷魔導師リゼット「ユーグ殿のワインセラーから拝借してきました」
勇者マリー「いいですね! どんどん飲みましょ!」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
勇者マリー「さ、ミシェル様も!」
第一王子ミシェル「ええ・・・」
〇水たまり
松本舞花「・・・なにも起きないか」
わたしを呼ぶのはおまえか
松本舞花「え?」
・・・ほう
なかなか素質があるようだな
よかろう
その肉体、わが依代としよう
〇湖畔
「きゃああああ!」
皇帝トビアス「・・・マイカ!?」
皇帝トビアス「これは・・・いったい・・・」
双子……あっ( ゚д゚)
……は後々の楽しみとしてともかくとして、関係性のヘビィさがやはりクセになるものがあります……✨
ハンカチやケーキなどの小物でジワジワと仲良くなっていく様が良かとです……ユーグさんのワインwww
舞花ちゃんにまさかの……、驚きです!
そして語られるミシェル殿下のエピソード、繊細で優しい心根が伝わってきますね。真理とは相互補完しそうなイイ組み合わせですね!