枯れ木に花を咲かせましょう

落花亭

4本目:水野ユカについて(脚本)

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〇渋谷の雑踏
  人は、大なり小なり悩みを抱えている

〇おしゃれな食堂
  ──9月13日
水野 ユカ(はあ〜〜お腹空いた 今日は何食べよっかな?)
水野 ユカ(たまにはガッツリ食べたいし トンカツ定食にしよっかな?)
水野 ユカ(受付混んでる。スマホで時間潰そっと)
  ──注目を浴びたヘヴィロックバンド
  ”BACKBONE”が再結成!
  GtのSHO-GOをリーダーに・・・
水野 ユカ「マジッ!?」
水野 ユカ(受験のとき バクボンの曲に 励まされたんだよ〜!!)
水野 ユカ(解散して しんどかったけど嬉しい!! 推し活しないと!!)
女子生徒「ユカ探したぁ。皆 あそこに座ってるよぉ」
水野 ユカ「あっ うん・・・」
女子生徒「何 注文したの?トンカツ定食!?」
女子生徒「意外ぃ。ユカはパスタのイメージ」
水野 ユカ「あっ 間違って買っちゃってさ! パスタに変えてもらうんだ──」

〇おしゃれな大学
女子生徒「ねぇねぇ。もう講義ないし カラオケ行かない?」
女子生徒「いいねー 酉野カモ歌いたい! もちろんユカも行くよね?」
水野 ユカ「う うん!行こ行こ!」
水野 ユカ(本屋に寄るつもりだったのに。 何言ってんだろう あたし)

〇街中の道路
  ──フローリスト・ハナサカ前
水野 ユカ(二人には悪いけど 余計な出費だったな・・・)
新井 ショウゴ「おっ」
水野 ユカ(今の人 SHO-GOに似てる)
水野 ユカ「フローリスト・ハナサカ?」
水野 ユカ(SHO-GOが花好きなんて聞いてない)
水野 ユカ(でもさっきの人 激似だった・・・)
水野 ユカ(確認したらさっさと出よっと)

〇お花屋さん
店長・花咲「おや 雰囲気が変わりましたね」
新井 ショウゴ「分かります? 髪色変えたんスよ! 気持ち新たに!って」
水野 ユカ(意外と混んでる・・・)
村田 カスミ「こんにちは 店長さん!」
新井 ショウゴ「んっ?」
新井 ショウゴ「うわあああ!?!?」
店長・花咲「お客様 どうなさいましたか?」
新井 ショウゴ「あああああの えーっとえーっと」
新井 ショウゴ「いつも見てますッ!!!!」
村田 カスミ「い いつも・・・?」
新井 ショウゴ「やべぇやっちまったどうしよどうしよマジ ストーカーって誤解されたよなクソ死にて」
新井 ショウゴ「──失礼しますッ!!!!」
水野 ユカ(うわ ヤバいの見ちゃった あんなんSHO-GOじゃないわ)
水野 ユカ(用は済んだし さっさと出ちゃお──)
謎の男「いつになく今日は騒がしいですね」
水野 ユカ(ちょっ イケメン! しかもいい香りがする!!)
謎の男「”ブタさんクッキーの何とか” お持ちしましたよ」
謎の男「人間にしては良い物を作る・・・」
村田 カスミ「ブタさんクッキーって・・・?」
店長・花咲「たまに来る学生さんが おすすめしてくださいましてね」
村田 カスミ「へぇ。ちょっと気になりますね」
謎の男「そこのコンビニ?に置いてありますよ」
村田 カスミ「あ ありがとうございます。 見てこようかな・・・」
謎の男「・・・時に花咲さん」
謎の男「あちらで客人が お待ちになられているようで」
水野 ユカ「あ あたし!? あたしはその──」
水野 ユカ(うわ 完全に帰るタイミング失った!)
水野 ユカ「ごめんなさい。買う気はなくて・・・」
水野 ユカ「ちょっと見て帰る、でもいいですか?」
店長・花咲「えぇ 構いませんよ」
店長・花咲「覗かれるだけの方もいらっしゃいますし」
水野 ユカ「本当にごめんなさい・・・」

〇お花屋さん
水野 ユカ(ハーバリウムも置いてんじゃん あのお爺さん やるな〜)
水野 ユカ「何 この花。ウケるんだけど」
店長・花咲「そちらは鬼灯(ほおずき)と言いましてね」
店長・花咲「変わった形の花でしょう?」
水野 ユカ「うん。膨らんでてかわいい」
店長・花咲「鬼灯には『自然の美しさ』と 言う意味がありますが」
店長・花咲「中身が空洞になっていることから 『ごまかし』という意味もあります」
水野 ユカ「中身が空洞・・・ごまかし・・・」
水野 ユカ「今のあたしじゃん・・・」
店長・花咲「と 言いますと?」
水野 ユカ「あたし 中身がないから・・・」
  そのほうが安心だから──

〇教室
  ──16歳の夏
女子生徒「ユカ おはよっ!」
女子生徒「昨日のドラマ見た?」
水野 ユカ「おはよっ!見た見た!超泣いた」
  本当は SNSで感想を見た
  嫌われたくなくて嘘ついた
男子生徒「アイツの髪 痛いよなぁ ツインテールとかさぁ」
水野 ユカ「うん!痛いね」
  本当は羨ましかった
  好きな物を貫き通す姿勢が
水野 ユカ「でも 皆と違うだけで そういう風に言われる!」
水野 ユカ「見られる!」
水野 ユカ「それだけは嫌!!」

〇お花屋さん
水野 ユカ「本当はこの服だって好きじゃない もっと派手な服が着たい」
水野 ユカ「ランチもパスタやスイーツじゃなくて ラーメンとか定食とか食べたい!」
水野 ユカ「カラオケだって流行りだけじゃなくて 推しの曲を歌いたい!!」
水野 ユカ「でも 皆と違うことして嫌われたら・・・」
店長・花咲「なるほど。ううむ。 これは持論なんですが」
店長・花咲「お客様のおっしゃる”皆”」
店長・花咲「万人に好かれることは不可能と思います」
店長・花咲「嫌われるときは嫌われるものですから」
店長・花咲「極力 嫌われないように合わせて 生きる選択もありだとは思います」
店長・花咲「ですが お客様の気は晴れない では どうすれば?」
店長・花咲「”ありのままのご自身”をさらけ出し」
店長・花咲「なおも離れない”皆”に 目を向けるのはいかがでしょう」
水野 ユカ「簡単に言うけど・・・ 確証持てないじゃん」
水野 ユカ「全員離れていったらどーすんの?」
店長・花咲「おっしゃる通り 全員が離れていく可能性も否めません」
店長・花咲「ですが 私はお客様を見て思うのです」
店長・花咲「現状にご不満を 示されるだけの方ではないと」
店長・花咲「──で なければ 魂が込められた叫びは聴けませんから」
水野 ユカ「まぁね・・・」
水野 ユカ「おじいさんさ。 お悩み系ヨウチューバーになったら?」
水野 ユカ「そっちのほうがバズりそう」
店長・花咲「バズ・・・? ううむ 難しいですねぇ」
水野 ユカ「あはは。冗談。 お礼にSNSで宣伝しとく」
水野 ユカ「スマホで写真撮ってもいい?」
店長・花咲「店内でしたらよろしいですよ」
水野 ユカ「おじいさんはダメなの?」
水野 ユカ「SNSに投稿っと。 おじいさん ありがと!」
店長・花咲「・・・危ないところでした」
謎の男「人間は何かと”四角い箱”で 撮影したがりますね」
店長・花咲「スマァトフォンと呼ぶそうですよ?」
謎の男「・・・それくらい存じています!」

〇おしゃれな大学
  ──数日後

〇おしゃれな食堂
  案の定 いつもの友達は
  素の私を見て距離を置いた
  だけど──
男子生徒「いや マジでッ!? 信じられねぇんだけど!!」
男子生徒「お前がバクボン好きとか!!」
女子生徒「ウチも!清楚系女子と思ってた! ギャップがヤバイ!」

次のエピソード:3本目:新井ショウゴについて

コメント

  • 過去回のキャラクターが生き生きと動き回る姿って何か嬉しくなりますよね!
    「中身がない」というので鬼灯というのは盲点でした。私の幼い頃、近所で鬼灯を栽培する家が多くて、友達とイタズラ心で食べてしまったことがあります。苦くて吐き出しましたが、観賞用の中身って毒なんですよね。ユカさんの中身が毒々しくなく、キレイな心でよかったです。

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