枯れ木に花を咲かせましょう

落花亭

3本目:新井ショウゴについて(脚本)

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〇渋谷の雑踏
  人は、大なり小なり悩みを抱えている

〇センター街
  ──8月25日

〇レンタルショップの店内
「──大人気ロックバンド ”Un-official アゴ男dism”のシングル」
「”シャボテンダー”が CD売上ランキング3位にランクイン!!」
新井 ショウゴ「チッ・・・」

〇住宅地の坂道
  ──翌日
新井 ショウゴ「はー。仕事かったりぃ」
新井 ショウゴ(今日は”あの子”に会えっかな・・・)

〇街中の道路
  ──フローリスト・ハナサカ前
新井 ショウゴ(んな 都合良く会えるわけねぇか)
「ありがとうございましたぁ♡」
謎の男「人間の作る物はどれも奇妙ですね・・・」
謎の男「花咲さんに頼まれた”梅おにぎり” これで合っているでしょうか?」
謎の男「んっ?」
謎の男「”ブタさんクッキーの何とか” 忘れるところでした!」
「いらっしゃいませぇ♡」
新井 ショウゴ(なんだ今の・・・?)

〇大衆居酒屋
新井 ショウゴ「当店自慢のだし巻き卵が1つ 大ビールが2つっすね」
新井 ショウゴ「しばらくお待ちください」
新井 ショウゴ(あっ!?)
女性「──例のハヤトくん。 完全に吹っ切れたんだ?」
村田 カスミ「はい!! 今思うとなんで あんな奴が好きだったのか!!」
女性「”恋は盲目”ってやつでしょ」
女性「花屋のお爺さん グッジョブだわ」
村田 カスミ「・・・でも あの店長さん 初めは怖かったんですよね」
村田 カスミ「人だけど 人じゃないような なんて言ったらいいんだろ」
女性「カスミ アンタそりゃ失礼──」
新井 ショウゴ「”あの子”だ・・・」
新井 ショウゴ(か かわいい〜〜〜〜!!)

〇渋谷のスクランブル交差点
新井 ショウゴ(”カスミちゃん”か・・・ 彼氏と別れてフリーなんだな)
「──それでは最後に ”Un-official アゴ男dism”から」
「ファンの皆様にメッセージを!!」
シゲル「今回の曲は”友情”を テーマにした曲となっています」
新井 ショウゴ「・・・良い人ぶりやがって!!」

〇街中の道路
  ──フローリスト・ハナサカ前
新井 ショウゴ(どこに行ってもアイツの話ばっか)
新井 ショウゴ「クソッ!!」
新井 ショウゴ「やべっ 割っちまった!!」
店長・花咲「な 何事でしょうか!?」
新井 ショウゴ「す すいません。俺が石蹴って それ割りました・・・」
新井 ショウゴ「弁償します・・・」
店長・花咲「・・・わざとではないんですよね?」
新井 ショウゴ「・・・ハイ」
店長・花咲「そうですか」
店長・花咲「では 弁償の代わりに後片付けを お願いしてもよろしいですか?」
新井 ショウゴ「ハイ・・・って そんなんでいいんスか!?」
店長・花咲「ええ。鉢も苗もいくらでも 調達できますから」
新井 ショウゴ(いくらでもって爺さん 金持ちなのか・・・?)
  ──数分後
新井 ショウゴ「こんなもんか」
店長・花咲「ご苦労様です。手が気になるでしょう」
店長・花咲「洗っていかれたらどうですか?」
新井 ショウゴ「軍手してたし平気っスよ」
店長・花咲「まあまあ 遠慮せずにどうぞ。中へ」
新井 ショウゴ「・・・じゃあ水道 お借りします」

〇お花屋さん
新井 ショウゴ(うっわ 花だらけ)
店長・花咲「そこの洗面台をお使いください」
新井 ショウゴ「ハイ」
店長・花咲「苛立ちは収まりましたか?」
新井 ショウゴ「そっすね。くだらねぇことで イライラしてたなって思います」
店長・花咲「くだらないこと?」
新井 ショウゴ「爺さん グイグイ来ますねぇ」
新井 ショウゴ「マジでくだらねぇことっス」
  だって──

〇学校の廊下
  ──18歳の秋
シゲル「ショウゴ! ”モノクロ”の新曲 聴いた!?」
新井 ショウゴ「聴いた!!」
新井 ショウゴ「MUSASHIさんのギター巧ぇわ」
新井 ショウゴ「練習してっけどムズイもん」
シゲル「あのさ。高校卒業したら 一緒にバンド組まね?」
シゲル「俺 お前のギターセンス認めてんだよ!」
新井 ショウゴ「俺でいいの?」
シゲル「お前がいいの!」

〇ライブハウスのステージ
  ──数年後
新井 ショウゴ「今日の動員数 良かったな! SNSでも好評みたいだし」
新井 ショウゴ「マジでメジャーも夢じゃねぇかも──」
シゲル「・・・そのことなんだけど俺 他のバンドに移籍しようと思う」
新井 ショウゴ「はっ?」
シゲル「今まで黙っててごめん 俺 もう少し真剣に活動したい」
シゲル「現状だと理想に辿り着けない・・・」
新井 ショウゴ「俺たちは遊びって言いたいのかよ?」
シゲル「そういう意味じゃない!! ただ技術のレベルが違いすぎる──」
新井 ショウゴ「・・・あぁ そうかよ。 だったら好きなところに行けよ」
新井 ショウゴ「解散だ解散! 元々”お前のためのバンド”だしな」
新井 ショウゴ「二度とツラ見せんじゃねぇ!!」

〇お花屋さん
新井 ショウゴ「で。シゲルは新しいバンドで メジャーデビュー」
新井 ショウゴ「そんなシゲルに嫉妬する俺。 くだらねぇっス」
店長・花咲「・・・私はくだらないとは思いません」
店長・花咲「苦楽をともにしたご友人だからこそ 『なぜ?』と思う気持ちは強いもの」
店長・花咲「あなたは彼とともに同じ舞台に上がり 同じ景色を共有したかったんですよね」
新井 ショウゴ「爺さんに俺の何が分かるってんだよ!?」
店長・花咲「気に障ってしまったならすみません ですが・・・」
店長・花咲「私には あなたがまだ野心を 捨てていないように見えるのです」
店長・花咲「本当に”ご友人のためのバンド”なら 現在のご活躍も応援できるはず」
店長・花咲「それが嫉妬に変わってしまうのは 『自分もそこに行きたい』」
店長・花咲「『自分もそこに立ちたい』という 想いがあるからだと思うのです」
新井 ショウゴ「・・・怖ぇな。爺さん」
新井 ショウゴ「その通りだよ。俺は夢を諦めてない」
新井 ショウゴ「でも技術力足りねぇし・・・」
店長・花咲「そう思い込んでいるのは あなただけかもしれませんよ」
店長・花咲「一度はデビューの手前まで 登りつめたのでしょう?」
新井 ショウゴ「・・・ははっ。 なんかやる気出てきたっス」
新井 ショウゴ「もう一回 夢追いかけてみっかな」
店長・花咲「──人生、一度きり。 悔いのないように生きるべきです」
新井 ショウゴ「・・・なんか知んねぇけど 爺さんが言うと説得力ぱねぇっス」

〇街中の道路
新井 ショウゴ「クローバーの鉢・・・」
新井 ショウゴ「壊したのは悪ぃけどスッキリしたぜ」
新井 ショウゴ「──人生、一度きり。か」

〇散らかった部屋
  見てろよ
  返り咲いてやる──絶対に!
  ──シゲル 新曲に込めた想いとは?
  ──バンドを組むきっかけが
  学生時代の友達だったんですけど
  俺 ソイツと大喧嘩しちゃって(苦笑)
  後悔しても遅いんですけど
  ふと思い出す時があるんですよ
  何してるかな?とか
  音楽活動してないかな?とか
  ソイツのギター また聴きたいとか──

次のエピソード:2本目:村田カスミについて

コメント

  • ええと、どこかで耳にしたことのあるアーティスト名のような…気のせいですよねww
    今回も、心に刺さったトゲが抜けたようなスッとした感じで気持ちいい読後感です。そして、フローリスト・ハナサカと謎の男さんの正体が気になるエピソードが、、、今後明かされるのを楽しみにしています!

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