刹那に願う

社 真帆

刹那に願う(脚本)

刹那に願う

社 真帆

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刹那に願う
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〇雪山
  この森へ来ようなどとは、誰も考えない

〇雪洞
  誰か来たとして、何かある訳でもない

〇雪山の森の中
  何かあったとして、私に気づくことはない

〇空
  でも──
  もし──
  私の願いが叶ったのなら
  それは、奇跡の他ないだろう


〇大きな木のある校舎

〇教室

〇学校の廊下

〇階段の踊り場

〇図書館

〇学校の昇降口

〇学園内のベンチ

〇学園内のベンチ

〇学園内のベンチ

〇学校の裏門
「お〜い!」
春幸「これ、借りてたノート」
気になるあの子「態々ありがとう」
春幸「そこの彼は?」
気になるあの子「私の彼氏」
春幸「へ、へぇ」
気になるあの子「それじゃ私達行くね」
春幸「あぁ、またな」

〇田んぼ
春幸「諦めよう」
春幸「彼女が幸せならそれでいいんだ」
春幸「この気持ちが間違いだったんだ」

〇空
「愛してしまったから」
「こんなに」
「辛いんだ」


〇雪山の森の中
春幸「感傷に浸りすぎてこんな所まで来てしまった」
春幸「迷ったらまずい、帰ろう」
春幸「綺麗だな」
春幸「この花は確か」
春幸「うわっ!」

〇雪山の森の中

〇黒

〇黒

〇黒
「きゃ!」
「何か落ちて」
「人?」
「どうして人が」
「ねぇ、大丈夫?」
「って、聞こえないよね」
「うっ」

〇雪洞
春幸「誰?」
雪那「え?」
雪那「見えてる?」
春幸「何が」
雪那「え、ううん」
雪那「何でもない」
春幸「?」
雪那「ねぇ」
雪那「君、名前は?」
雪那「私、雪那(せつな)」
春幸「春幸(はるゆき)」
雪那「ふ〜ん」
雪那「ねぇ、春幸」
雪那「私の恋人になってよ」
春幸「なぜっ!?」
雪那「だって私、あなたの命の恩人だもの」
雪那「私がいなかったら危なかったかもよ?」
春幸「そうか俺、滑り落ちて」
春幸「けど、ごめん」
春幸「帰らないと」
春幸「・・・」
春幸「ここ、どこだ」
春幸「迷った!?」
雪那「ふふっ、なら勝負しましょ」
雪那「夕暮れまでに一度でも私を捕まえれば、春幸の勝ち」
雪那「帰り道教えてあげる」
雪那「できなければ、付き合ってもらう」
春幸「いや、遊んでる暇は」
雪那「ほら、時間ないよぉ〜」
春幸「はぁ」
春幸「わかったよ」
雪那「決まりね!」
雪那「30秒数えてねぇ!」

〇雪洞

〇雪山の森の中

〇雪山の森の中

〇雪山の森の中

〇雪山の森の中

〇雪山の森の中

〇雪山の森の中

〇雪山の森の中

〇空

〇空

〇雪山の森の中
雪那「ふふっ、私の勝ちね!」
春幸「はぁはぁ」
春幸「走るのはやすぎだろ」
雪那「え?」
雪那(かなり遅く走ったつもりだけど)
雪那(まさか正体ばれて・・・)
雪那(大丈夫そうね)
雪那「じゃ、私の恋人決定ね!」
春幸「なぁ」
春幸「どうして俺なんだ?」
春幸「俺じゃなくてもいいだろ」
雪那「・・・」
雪那「それはね」
雪那「春幸が初恋だからだよ」
雪那「ほら、着いてきて」
春幸「ん?」
雪那「帰り道」
雪那「本当は教えたくないけど、今回は特別ね」
春幸「ありがとう」

〇けもの道
雪那「ここまで来ればわかるよね」
春幸「お前も帰るんだろ?」
雪那「私、そっちじゃないの」
雪那「それじゃ、春幸」
雪那「また明日ね!」
春幸「お、おい」

〇空

〇雪洞
雪那「まだかな」
雪那「まだ来ないかな」
雪那(楽しい)
雪那(誰かと過ごすことを考えるのが)
雪那(とても幸せで温かい──)
雪那「あっ、やっと来た!」
春幸「はぁ」
春幸「こんな所でずっと待ってたのかよ」
雪那「別にいいでしょ」
春幸「で、今日はどうするんだ?」
雪那「雪だるま作ったり!雪合戦したり!」
雪那「それからそれから!!」
春幸「どこかに出かけるって選択肢はないのかよ」
雪那「何よ、不満?」
春幸「いや、別にいいけど」
雪那「私ね、春幸とやりたいこといっぱいあるの!」
春幸「子供かよ」
雪那「むっ!」
春幸「わかったよ、付き合うよ」
雪那「ふふっ、優しいのね」
春幸「そりゃどうも」

〇けもの道
雪那「また明日ね」
春幸「あぁ、またな」
雪那「はぁ」

〇空
「こんな日々がずっと、続いたらいいのに」

〇ソーダ

〇雪洞
  それから雪那とは毎日会う様になった

〇雪山の森の中
  でも、住所も電話も学校も教えてくれなくて
  揶揄ってるだけかと思ったけど
  やっぱり、あの目は俺を思っている様で

〇けもの道
  いつも笑顔のくせにどこか
  儚げなんだ──

〇雪山の森の中
  幾日か過ぎた日
雪那「春幸」
雪那「どうしてあの日、森に来ようと思ったの?」
雪那「ここには、あまり人は来ないから」
春幸「それは・・・」

〇学校の裏門

〇雪山の森の中
春幸「雪那には関係ないことだよ」
雪那「何で・・・」
春幸「まただ」
春幸「俺のことは聞いてくるのに」
春幸「雪那は何も教えてくれないんだな」
春幸「・・・」
春幸「ごめん」
春幸「帰るよ」
雪那「ま、待って」

〇雪山の森の中
春幸(何故俺は、腹を立てているんだ)
春幸(俺は刹那のことなんて何とも)
春幸「・・・」
春幸「くそっ!」

〇雪山の森の中
春幸「どこだ、ここ」

〇雪山の森の中
春幸「はぁはぁ」
春幸「あれ」
春幸「体が」
春幸「熱い」

〇黒

〇空
  あれ
  どこだここ
  誰かいる
  あれは

〇雪に覆われた田舎駅(看板の文字無し)
あっちの子「恋人作りたいなぁ」
そっちの子「作って何するのよ」
あっちの子「雪の中でいい感じになるの」
そっちの子「あんた、ロマンチストねぇ」
「ねぇ!その話詳しく」
あっちの子「森の方から?」

〇雪山の森の中

〇雪に覆われた田舎駅(看板の文字無し)
あっちの子「誰もいない」
そっちの子「やだ気味悪い、行こ」

〇雪山の森の中
雪那「あ、もう咲いてる」
雪那「はぁ・・・」
雪那「ううん、だめ」
雪那「楽しいことを考えるの」

〇空
「もし」
「誰かと恋ができたら」
「それはきっと」
「温かいんだろうなぁ」


〇ソーダ
「もうすぐ雪が解けてしまう」
「解けてしまえばもう」
雪那「いや」
雪那「もういやだ」
雪那「一人はいやだ」
  雪那が泣いている
  いっぱい泣いている
雪那「ごめんね、私のせいで」
雪那「ごめんね」
  俺はなんて愚かなんだ
  こういう時に限って体が言うことを聞かない
  雪の様に冷たい雪那の手が、俺の手をそっと握りしめると
  心がギュッと締め付けられて、なんだか悲しくなって
  とても温かくて
  優しかった

〇黒

〇岩穴の出口
春幸「雪那!」
春幸「いない・・・」

〇雪洞
春幸「雪那!!」
春幸「どこ行ったんだ」

〇雪山の森の中
「雪那!」
「雪那!!」
  俺は森中を走り回った

〇雪山の森の中
「俺が悪かった」
「頼む」
「返事をしてくれ!」
  でも、雪那の姿はどこにもなくて
「・・・」

〇雪洞
  何度呼んでも
  何も返ってこなくて

〇けもの道
「はぁはぁ」
「うわっ!」

〇けもの道

〇空
  まるでこの世には自分以外誰もいないんじゃないかと思えてきて
  とても辛かった
「そうか」
「君はずっと・・・」
春幸「雪那」

〇雪山の森の中

〇空

〇けもの道
  会いたい、雪那に会いたい
  伝えるんだ、この気持ちを
  頼む、届いてくれ!
  俺は雪那のことが──!!
春幸「誰かが泣いている」
春幸「雪那」

〇けもの道

〇雪山の森の中
「雪那!!」
雪那「春幸・・・」
雪那「ごめんね」
雪那「私、これから遠い場所へ行かなくちゃいけないの」
雪那「だからもう」
雪那「会えないの・・・」
  俺は雪那を優しく抱きしめた
  冷んやりとしていて気持ちよくて、優しさで胸が痛くて、こんなに愛おしくて──
春幸「ごめん」
春幸「今まで、自分に嘘をついていたんだ」
春幸「気づいたらまた辛くなってしまう気がして」
春幸「でも」
春幸「違ったんだ、やっとわかったんだ」
春幸「俺・・・」
春幸「雪那のことが好きだ」
雪那「・・・」
雪那「なによ・・・ばか・・・」
雪那「そんなの知ってるよ」
春幸「雪那」
春幸「ありがとう」
雪那「──」
雪那「うん」
雪那「うん」
雪那「最後まで」
雪那「付き合ってくれて」
雪那「ありがとう」
雪那「楽しかった」
雪那「私も」
雪那「春幸のこと」
雪那「好きよ──」

〇けもの道

〇空
  こうして雪那は遠い場所へ登って行き
  彼女がいた場所には冬の終わりを知らせるようにそっと
  待雪草が咲いていた──

コメント

  • 暖かい春になると姿を消してしまう雪那との刹那の時間。好きになった相手の名前に春がついているのも切ない。ひと夏の恋とはよく言いますが、ひと冬の恋は淡雪のように儚いですね。二人は再会できるのでしょうか。情景描写やBGM、効果音の作り方も丁寧でとてもよかったです。

  • なんて切ないお話なのでしょうか。
    でも二人にとっては凄く良い出会いだっのでしょう。
    話のまとまりもすごく良くて、世界観に入り込んでしまっていました。

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