エピソード2『方向』(脚本)
〇簡素な一人部屋
ショウゴ・センザキ 「・・・俺達、このままでいいのかな──」
部屋に戻った俺は、ひとり口を溢していた。
ふとカレンダーが目に入る。
そこにはやる気に満ちた文字で『絶対昇級!』と書いてある。
ショウゴ・センザキ 「昇級・・・」
ショウゴ・センザキ 「・・・あの頃の俺が見たら、なんて言うだろうな」
ショウゴ・センザキ 「第八防衛隊・・・」
〇講義室
ショウゴ・センザキ 「どうしてですか先生!! 納得いきません!!!!」
担任「センザキ君、君の気持ちは分かる。 でもアーレンクラインくんを任せられるのは付き合いの長い君だけなんだ」
ショウゴ・センザキ 「それはそうかもしれませんが・・・」
ショウゴ・センザキ 「──それでも俺ここには推薦で入学してるんです!!」
ショウゴ・センザキ 「1人前の魔法戦士になるためにここに来たのに、なんで第八防衛隊なんかに・・・!!!」
担任「第八防衛隊に所属になるからと言って、魔法戦士になれないわけではない」
担任「いくら成績不良者が集まるとはいえ、その言い方は同僚に失礼ではないか?」
ショウゴ・センザキ 「くっ・・・」
担任「ともあれ、防衛隊の組分けについてはもう決定事項だ。 今から変えられるものでもない」
担任「君が成績優秀な生徒なのは、担任の私がよくわかっている。 その実力で彼女らを救ってやってくれ」
ショウゴ・センザキ 「・・・・・・でも──」
担任「悪いが、話はここまでだ。 部屋に戻りなさい」
ショウゴ・センザキ 「・・・・・・はい」
教室の扉がしまる。
──忘れもしない、組分けの話。
自分で言うのもなんだけど、
俺はそれなりに成績優秀な方で。
絶対優秀なメンバーと組めると思ったのに。
エシュカが──
〇簡素な一人部屋
???「ショウゴく〜ん!」
ショウゴ・センザキ 「──!! エシュカか?」
???「入ってもいい〜?」
ショウゴ・センザキ 「え、あ・・・大丈夫・・・だけど・・・」
ガチャ
エシュカ・アーレンクライン「お邪魔しまーす♫」
ショウゴ・センザキ 「ど、どうしたんだ?なんか用・・・?」
エシュカ・アーレンクライン「ごはん食べにいこ〜!ってお誘いに来たの♫」
ショウゴ・センザキ 「あ、もうそんな時間か・・・ おっけー、飯食いに行こうか」
エシュカ・アーレンクライン「うん!一緒に食べよ〜!」
セレッサ「エシュカ!!早く!! 先生に見つかったら怒られるから!!」
エシュカ・アーレンクライン「あ、そうだった・・・! いけないいけない」
ショウゴ・センザキ 「セレッサも一緒だったのか・・・ 気をつけろよ、男子寮区間に女子が来るのはマズイからな」
エシュカ・アーレンクライン「うん!気をつけるね!」
ショウゴ・センザキ 「じゃあ行こっか」
〇学食
ショウゴ・センザキ 「ゆ、許してくれ〜!!! シイタケだけは食えないんだ〜!!!」
コユキ・ヒメシロ「ショウゴ、好き嫌いは良くないわ」
セレッサ・スウェルネー「そーそー、シイタケは栄養価も高いのよ」
たまたまコユキも食堂に来ていたらしく、
シイタケを残しているところを目撃された俺。
不運にも、
セレッサとコユキに問い詰められているところである。
ショウゴ・センザキ 「か、勘弁してくれ!!! 残しちゃいけないってルールはないだろ!!」
セレッサ・スウェルネー「何寝ぼけたこと言ってるのよ!!」
セレッサ・スウェルネー「あんたの出身国だとフードロスがおっきな問題になってんのよ!! 食材一つ無駄にせず食べきりなさい!!」
コユキ・ヒメシロ「セレッサの言うとおりよ。 同じ櫻和国(おうなこく)出身者として食べ残しは許さないわ」
ショウゴ・センザキ 「うわぁぁぁ!!! エシュカ!!助けてくれー!!」
エシュカ・アーレンクライン「ショウゴくん、二人の言うとおりだよ 好き嫌いしないで何でも食べなきゃ!」
ショウゴ・センザキ 「エシュカまで・・・」
セレッサ・スウェルネー「あ〜、もうトロイわね!! さっさと食べなさい!!!!!ほら!!」
ショウゴ・センザキ 「や、やめろセレッサ!!!! もごもご・・・」
セレッサ・スウェルネー「はいはい、よく食べられました〜」
エシュカ・アーレンクライン「ショウゴくん偉い偉〜い♫」
ショウゴ・センザキ 「ううう・・・ちっとも美味しくない・・・・・・」
コユキ・ヒメシロ「たかがシイタケくらいで大騒ぎしないで頂戴」
ショウゴ・センザキ 「そ、そんなこと言うなよコユキ・・・」
ショウゴ・センザキ 「じゃあお前は無いのか、嫌いなもの」
コユキ・ヒメシロ「嫌いな『食べ物』はないわ」
コユキ・ヒメシロ「──でも、苦手なことに挑戦しようともしないような、努力をしない人は嫌い」
ショウゴ・センザキ 「っ・・・!!」
コユキ・ヒメシロ「部屋に戻るわ 明日8時にまたバーチャルルームに集合」
コユキ・ヒメシロ「おやすみなさい」
セレッサ・スウェルネー「おやすみコユキ〜」
エシュカ・アーレンクライン「おやすみなさ〜い」
ショウゴ・センザキ 「・・・・・・んだよ」
ショウゴ・センザキ 「シイタケ食わなかったぐらいであそこまで言うか・・・?」
セレッサ・スウェルネー「まー、コユキは小難しいところあるわよね さすが櫻和国の女子って感じ」
ショウゴ・センザキ 「あんなに厳格なのはアイツぐらいだよ、 俺の知り合いとかはもっとフランクなやつが多いし」
セレッサ・スウェルネー「でもコユキのおかげでなんとかここまでやってこれてるんだから あんまり文句も言えないのよね」
コユキのおかげ──
エシュカ・アーレンクライン「そうね〜、 コユキちゃんがいると気が引き締まってやる気が出るわ」
セレッサ・スウェルネー「成績優秀なアンタには分からないかもだけどさ──」
セレッサ・スウェルネー「あたしみたいな落ちこぼれからみたら、コユキみたいにリーダーシップ取ってくれるのほんとにありがたいのよ」
エシュカ・アーレンクライン「えー!?セレッサちゃんは全然落ちこぼれなんかじゃないよ〜!!」
セレッサ・スウェルネー「はは、ありがとエシュカ」
セレッサ・スウェルネー「でも、ほんとのことよ。 じゃなきゃ第八防衛隊なんかにいないわ」
エシュカ・アーレンクライン「セレッサちゃん・・・」
ショウゴ・センザキ 「な、なんかごめんな、セレッサ・・・」
セレッサ・スウェルネー「気にしないで、 今度の昇級試験で合格すればいいだけだから」
セレッサ・スウェルネー「──絶対見返してやるんだ」
エシュカ・アーレンクライン「そうね、みんなで合格できるように頑張ろう!」
エシュカ・アーレンクライン「一番足を引っ張っちゃうのは私かもしれないけれど・・・」
セレッサ・スウェルネー「大丈夫大丈夫、 エシュカのことはショウゴが護ってくれるから」
ショウゴ・センザキ 「え!!? あー・・・うん、そうだな」
エシュカ・アーレンクライン「いつもありがとう、ショウゴくん」
セレッサ・スウェルネー「さーさー、シイタケも食べれたことだし 私達も戻ろっかエシュカ」
エシュカ・アーレンクライン「うん! じゃあまた明日ね、ショウゴくん」
ショウゴ・センザキ 「──ああ。 おやすみ、エシュカ」
ショウゴ・センザキ 「セレッサもありがとうな、おやすみ」
セレッサ・スウェルネー「はーい、おやすみ〜」
ショウゴ・センザキ 「──よし、もう行ったな?」
俺は膝の上に置いていた、一見何も無い皿をおもむろにとりだす。
ショウゴ・センザキ 「さすがにピーマンも残してたなんてバレたら余計叱られるだろうしな・・・」
スッと皿の上で手を横に動かすと、
大量のピーマンが現れた。
ショウゴ・センザキ 「これだけでも遮蔽魔法かけておいてよかった・・・」
アージュー・エレド「──俺が告げ口しなきゃ、な」
ショウゴ・センザキ 「うわぁぁあ!! お前いつからいたんだ!!?」
アージュー・エレド「ずーっと」
ショウゴ・センザキ 「まじか・・・!? 全然気配も感じなかった・・・」
アージュー・エレド「ひでーな、飯誘おうと思って部屋行ったら居なかったのはおめーだぜ」
ショウゴ・センザキ 「え、それはごめん」
ショウゴ・センザキ 「でも、一緒に飯なんてどういう風の吹き回しだ? お前一緒に飯食うような奴じゃなかっただろ」
アージュー・エレド「うるせー、特に深い理由はねーよ」
アージュー・エレド「──あーあ、やっぱ慣れないことするもんじゃねーな」
ショウゴ・センザキ 「悪い・・・ また今度一緒に食おうぜ」
アージュー・エレド「気が向いたらな──」
ショウゴ・センザキ 「・・・」
ショウゴ・センザキ 「お、おいアージュー!! 明日は遅れないで来いよ〜!!!!」
ショウゴ・センザキ 「(もしかして、アイツなりに歩み寄ろうとしてくれたのかな・・・)」
ショウゴ・センザキ 「(このまま、上手く行ってくれたらいいな)」
──ちなみに翌日、
ピーマンの件はアージューにチクられ、
俺は全員からこっ酷く怒られるのだった。