読切(脚本)
〇グラウンドの水飲み場
私は時田アンナ、この学校の生徒会長です
花子「ワンワン」
時田アンナ「よしよし、あっち行ってなさいね」
野良犬の世話をするのは生徒会長の仕事ではありません
なんか、用務員さんがエサをあげているそうです
〇学校の廊下
校内に一つ、毎日問題を起こす組織があります、それは科学部
部員の殆どは幽霊部員状態、活動しているのは一人だけ、しかしその一人が問題なのです
科学と称して意味不明な実験を繰り返しては、校内各所に迷惑をかけています
生徒会長である私には、それを止める義務があります!
・・・いや、義務はなかったかな?
でも私は止めに行きます!
〇学校の部室
科学部の部室は部活棟の一角にあります
問題を起こしすぎて理科室を追放された科学部・・・
仕方がないので私が空き部屋の使用を許可したのです
時田アンナ「科学部! 今日は何をしてるの?」
倉岡ユウヤ「うわっ? 生徒会長? 何しに来たの?」
科学部、ただ一人の活動部員、倉岡ユウヤ、頭はいいけどいい加減で頼りない人です
時田アンナ「科学部が何かやらかしたら私に迷惑がかかるんです」
倉岡ユウヤ「今日はまだなにもしてないよ!」
時田アンナ「どうせこれから何かするんでしょう? そしてみんなに迷惑をかけるんだわ」
「それは偏見です、思い込みで人を非難するのは失礼に当たります」
時田アンナ「ん?」
時田アンナ「えっ?」
この女は誰?
まさか倉岡君の彼女?
私という女がありながら?
倉岡ユウヤ「これは僕が作ったアンドロイドだよ」
時田アンナ「あ、アンドロイド?」
アンドロイド「初めまして、生徒会長さん」
こんなものまで作れるなんて、科学部って何なんでしょうか?
いや、倉岡君が凄いだけかな
倉岡ユウヤ「生徒会長、ちょっと頼みがあるんだけど」
時田アンナ「何かしら?」
倉岡ユウヤ「服を脱いで写真を撮らせてくれないかな?」
時田アンナ「はあああああっ?」
時田アンナ「あ、あなた変態なの? 私の写真を何に使う気なの?」
倉岡ユウヤ「ち、違うよ、これは科学のためだよ!」
時田アンナ「どう言うことよ!」
倉岡ユウヤ「このアンドロイドはボディーの状態に合わせて学習するんだ! だからリアルなボディーを与えたい」
時田アンナ「今でも十分リアルでしょ!」
倉岡ユウヤ「顔は頑張ったけど、首から下はマネキンなんだ、これじゃあ科学が完成しない」
時田アンナ「科学ってそう言うものなの?」
倉岡ユウヤ「だから生徒会長の体を参考にさせて欲しくて・・・」
時田アンナ「っ・・・」
なるほど、話はわかりました
しかし、倉岡君には常識が欠けています
女の子にそんなことを頼むから、問題行動扱いされるのです
倉岡ユウヤ「生徒会長がダメって言うなら、他の人に頼むけど・・・」
時田アンナ「や、やめなさい! また校長先生に呼び出されるわよ!」
倉岡ユウヤ「大丈夫だよ、掲示板にチラシを張って募集すれば・・・」
時田アンナ「だ、か、ら! それをやめなさい!」
そんないかがわしい掲示物、生徒会は許可できません
それに万が一、普通に応募してくる子がいたらどうするのですか?
その子を裸にして写真を撮影するのですか? 私を差し置いて?
時田アンナ「う、う、う・・・わ、わかりました、私がやります」
倉岡ユウヤ「えっ?」
時田アンナ「私が脱ぎますから・・・」
倉岡ユウヤ「え、生徒会長?」
時田アンナ「服を脱ぐから、あ、あっちを向いていてください」
私は越えたら戻れない一線を越えようとしています
科学のためなんて、本当は嫌です
でも仕方ないんです
こんなどうしようもない人を、好きになってしまったんだから
倉岡ユウヤ「あ、あの生徒会長・・・」
時田アンナ「脱ぎます、今脱ぎますから・・・」
倉岡ユウヤ「時田さん!」
時田アンナ「っ?」
倉岡ユウヤ「ごめん、やっぱりいくら科学のためでもこんなのは違うと思うんだ・・・」
時田アンナ「倉岡君、よかった、思い止まってくれたんですね・・・」
いえ、私は倉岡君のためになるなら、裸ぐらい見せてもよいのですけど・・・
次に頼む時は、もっとロマンチックな頼みかたをして欲しいですけど
〇学校の部室
数日後
時田アンナ「科学部、どうせ今日も何か変な物を・・・」
時田アンナ「ギャアアッ!」
部室にいたのは倉岡君、そして人間の顔がついた犬でした
時田アンナ「ば、化け物!」
「人を化け物と呼んではいけません 失礼に当たります」
時田アンナ「その声は・・・ この前のアンドロイド?」
よく見れば首から上は前と同じでした
どうしてこんな変わり果てた姿に?
倉岡ユウヤ「人間の体を参考にするのは諦めたんだ」
倉岡ユウヤ「用務員さんが飼ってる犬の写真を撮って、再現してみたよ」
時田アンナ「な、何ですって?」
時田アンナ「あなたの中で、私の裸は犬と同列の扱いなのね!」
倉岡ユウヤ「な、何に怒っているの?」
時田アンナ「いくら倉岡君でも許せません!」
倉岡ユウヤ「わからないよ、説明して・・・ あれ? アンドロイドはどこに行った?」
〇グラウンドの水飲み場
用務員「おーう、花子、今エサをやるからな」
用務員「ん? 何だ? 友達か?」
「学習中・・・ 犬はこのように栄養を摂取するのですね」
用務員「ウワアアアアアアッ?」
用務員「犬の体に人間の頭がついている! 人面犬だあっ!」
この一件以来、生徒の間で人面犬の噂が駆け巡り・・・
倉岡君は校長室に呼び出されましたとさ
おしまい
冒頭の犬と用務員さんがまさかの伏線だったとは!倉岡君がまだ何にもしてないのに何かするはずだと決めつけて部室にいそいそと日参する恋する生徒会長さんがかわいかったです。
倉岡くんの振り切れっぷりがイイですね。穏やかな人柄で問題行動を行う、まさにマッドサイエンティストという様子で。アンナさんに幸あれと思ってしまいます。。
生徒会長…も恋する乙女ですよね。
恥じらいがむしろ可愛く感じます。
風が吹けば、桶屋が儲かる、そう言った言葉があるように、結局最後は予想しなかったところで怒られるのですね笑