第二十話 ハリボテが壊れたら(脚本)
〇豪華なベッドルーム
「・・・」
「・・・」
堀田 晴臣「・・・」
堀田 晴臣「何だ、この空気は!」
初刷 論(はつずり さとし)「いや、当然ですよね。 三人死んでるんですよ」
浜 伊織「早く救急車呼べ、所長」
堀田 晴臣「浜くん、最近僕に厳しすぎない!?」
浜 伊織「普通です」
堀田 晴臣「はあ。見せた方が早いか」
堀田 晴臣「入っていいですよ」
栄田 駿「・・・」
栄田 栞里「し、駿!?」
奥平 庸子「堀田さん、これは一体?」
堀田 晴臣「つまりこういうことですよ」
〇小さい会議室
堀田 晴臣「栄田栞里のカード履歴を見た僕は」
堀田 晴臣「その中に睡眠薬やその他、 物騒な商品に気づきました」
堀田 晴臣「しかし幸いにしてその睡眠薬は ベンゾジアゼピン系だったのです」
〇豪華なベッドルーム
堀田 晴臣「さて、奥平先生。 ベンゾジアゼピン系睡眠薬の特徴は?」
奥平 庸子「薬物依存を形成しやすいことと、 自殺目的で使われやすいことでしょうか」
堀田 晴臣「そうです。 そして自殺目的で使われることから、」
堀田 晴臣「救急の現場ではあるものが必ず 用意されています。それは・・・」
奥平 庸子「拮抗薬!」
堀田 晴臣「その通り!」
〇おしゃれなリビングダイニング
堀田 晴臣「だから僕は、彼らが睡眠薬を使われても 立て直せるよう、準備しました」
栄田 駿「あれ? 僕かな」
栄田 駿「はい、栄田です・・・はい、はい」
栄田 駿「ごめん、仕事の電話っぽい すぐ済むから食べてて」
栄田 栞里「うん、わかった」
〇一階の廊下
栄田 駿「どうやってこの番号を知った? ・・・堀田」
堀田 晴臣「まだるっこい話はなしにしましょう 栄田駿さん・・・いえ、足立雄輔さん」
栄田 駿「まさか貴様、栞里にその話を──」
堀田 晴臣「その話はおいおい。それより、栄田さん あなた、このままだと殺されますよ」
栄田 駿「そんな与太話を信じろと?」
堀田 晴臣「栞里さんが、 あの赤坂運送の娘さんだと言っても?」
栄田 駿「栞里が!?」
栄田 駿「赤坂のことは叔父が勝手に──」
堀田 晴臣「彼女はそれを知りません。それどころか、 社長一家のせいだと思っています」
栄田 駿「そんな・・・でも、本当に?」
堀田 晴臣「少しでも信じていただけたなら 一つ、お願いがあります」
堀田 晴臣「二階の窓の鍵を全て 開けておいてもらえますか」
栄田 駿「ど、どうする気だ」
堀田 晴臣「詳しくは言いませんが僕は あなたを──あなた方一家を救いたい」
堀田 晴臣「それだけは言っておきます」
〇豪華なベッドルーム
堀田 晴臣「約束通り、栄田さんは 二階の窓を開けてくれました」
〇豪華なベッドルーム
堀田 晴臣「それからある人にお願いして窓から 忍び込んでもらい」
???「──」
堀田 晴臣「栄田さんを拮抗薬で目覚めさせ」
???「──」
栄田 駿「──」
栄田 駿「!!」
堀田 晴臣「用意した身代わり人形を ベッドに置きました」
〇家の廊下
堀田 晴臣「もちろん、子供たち二人も すり替え済みです」
栄田 駿「──」
???「──」
〇豪華なベッドルーム
堀田 晴臣「正しい手順と工程を踏めば──」
堀田 晴臣「”魔法”は生まれる」
堀田 晴臣「堀田晴臣の妙技、ここに極まれりってね」
堀田 晴臣「だからね、栞里さん。 あなたは、誰も殺してないんですよ」
堀田 晴臣「みんな生きてます。 もちろん、あなたのお子さんたちも」
栄田 栞里「あ・・・ああ・・・」
栄田 栞里「うわああああん!」
栄田 栞里「智、美雪! 良かった・・・」
浜 伊織「・・・」
初刷 論(はつずり さとし)「所長、僕ら聞いてないんですけど」
堀田 晴臣「言ってないよ」
堀田 晴臣「ほら、我々身動きとれないだろ?」
堀田 晴臣「だから部外者の人に協力してもらった」
堀田 晴臣「入って来ていいですよ」
???「誰が呼んだか、私の名を そう、私の名は・・・」
岡本 七菜「みんなのアイドル! 七菜ちゃんなのだーーー!」
栄田 栞里「七菜ちゃ、え、ええーー!」
堀田 晴臣「彼女も決して無関係ではなかったし、 何より栞里さん」
堀田 晴臣「彼女はあなたを助けたいと ずっと言っていた」
〇空港ターミナルビル
岡本 七菜「どうしようポッター!」
岡本 七菜「あんなしおりん、家に帰したら 絶対とんでもないことになる」
堀田 晴臣「いや、しかし七菜さん。 探偵ってのは調査するだけで・・・」
岡本 七菜「しおりんは大好きな先輩なの! 何とかしてよ!」
岡本 七菜「魔法使いだって言ったじゃない!」
〇豪華なベッドルーム
堀田 晴臣「というわけで彼女に協力してもらい 駿さんを救えたというわけです」
奥平 庸子「で、でも拮抗薬は静注薬ですよ そんなのどうやって?」
岡本 七菜「静脈注射なら前にやってたことあるから 楽勝だったよ!」
「・・・」
「・・・」
堀田 晴臣「ん、ごほん。 では、これにて一件落着ということですね」
栄田 栞里「あ、あのー。堀田さん」
栄田 栞里「私、これからどうすればいいんでしょう」
堀田 晴臣「さあ? 僕、前にも言ったじゃないですか」
堀田 晴臣「調査はするけど後のことは 責任持ちませんよって」
堀田 晴臣「じゃ、お疲れ様でした」
初刷 論(はつずり さとし)「あっ、所長待って下さいよ!」
岡本 七菜「あたしも帰るー。 しおりん、また現場でねー!」
奥平 庸子「私も帰ります。 入院はもう必要無いでしょう」
奥平 庸子「必要なのは部屋の掃除と」
奥平 庸子「彼との隙間を埋めることだと思います」
栄田 駿「栞里」
栄田 栞里「駿・・・いえ、雄輔。 あはは、どっちで呼んだらいいのかしら」
栄田 駿「どっちでもいいさ」
栄田 駿「僕は君のことを全く分かってなかった まさか父の会社が、君のご両親を・・・」
栄田 栞里「ううん、私の方こそ。 ずっと間違った憎しみを持ったまま」
栄田 栞里「何年も生きてしまった」
栄田 駿「あのさ、栞里。 こんな時に言うのも何だけど」
栄田 駿「僕はこの10年、楽しかったのは本当なんだ」
栄田 駿「君に対する憎しみを秘めながら、それでも この家族が本物だったら、って」
栄田 駿「ずっと、思ってきたんだ」
栄田 栞里「駿・・・」
栄田 駿「僕らはとんだハリボテの家族だった でも」
栄田 駿「できることなら、本物にしたいと言ったら 駄目かな?」
栄田 栞里「駿!」
ギュッ
栄田 栞里「私も! ずっと言いたかった!」
栄田 栞里「あなたのことを本当はずっと 好きだったって!」
栄田 駿「栞里・・・ありがとう」
〇一戸建て
そうして、私たちは10年かけて
本当の家族になった
〇川に架かる橋の下
〇車内
初刷 論(はつずり さとし)「全く所長も人が悪いっすよ」
初刷 論(はつずり さとし)「普段は調査後のことは気にするな、 なんて言ってるくせに」
堀田 晴臣「まあ、それはそれで事実さ」
堀田 晴臣(・・・)
〇個別オフィス
???「いいかい堀田くん。 探偵は神様じゃない」
???「調査のみに扮する探偵こそが一流」
???「観察対象に介入を行うやつは 二流かそれ以下だ」
〇車内
堀田 晴臣「ふふ・・・」
浜 伊織「うわ、思い出し笑い。むっつりだ」
初刷 論(はつずり さとし)「あ、七菜さんの寝間着姿 思い出してんすね」
浜 伊織「キモっ」
堀田 晴臣「違うって!」
堀田 晴臣「全く。君たちね 所長に対する敬意が感じられないぞ」
堀田 晴臣(別に、一流じゃなくていいんです 僕はこれからもこのスタイルで生きますよ)
堀田 晴臣(師匠)
堀田 晴臣「ともあれ──」
堀田 晴臣「いたずら──完了、だね」
〇空
〇空
〇超高層ビル
大黒運送──本社ビル
〇大会議室
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完結までお疲れ様です!いろいろ濃厚で素晴らしかったです…😭
映画化しても遜色ないと思った程です😭(なんなら、タプノベTOPに常に置いといてほしいくらい…)
そして、薬のカタカナ名称をサラッと言える人はめっちゃカッコイイ!
タップノベルの機能を駆使して過去現在や心理描写表現など、さぞ苦心しただろうなと思うと😨(ホテルの階のトリックなんて、何か1つでもミスったら途端にわからなくなりそうで怖い)
一時はどうなる事かと思いましたが、ハッピーエンドでホッとしました。
続きが気になる展開の連続で面白かったです。
読み始めると日課になってしまいました。
某魔法メジャー作品の文字りも楽しかったです(笑)
正に一気読みしてしまいました!!!!!!!!!凄く面白かったですー!!!!!!!!!
途中ハラハラしたり、泣きそうになったり、絶望したりしましたが、、、最後に救われました!!!!!全部読んで良かったです!!!!!!!凄い作品ありがとうございました!!!!!!