読切(脚本)
〇SNSの画面
〇塔のある都市外観
I.U.「私はI.U.─イフェイオン・ユニフロルム。 機械の街ロンロの管理者」
I.U.「ロンロは、全てが自動化された街」
I.U.「誰が来ても きっと、退屈しないでしょう」
I.U.「お待ちしています!」
〇パールグレー
〇仮想空間
A.I.アヤトリ「受信映像 以上です」
A.I.アヤトリ「映像データ解析しろ? はいはい 作業中」
A.I.アヤトリ「映像 位置情報 抽出 座標データベース照合 ヒット」
A.I.アヤトリ「区分 :廃棄都市 都市名:ロンロ」
A.I.アヤトリ「発信源 座標特定 完了 行くんです?」
A.I.アヤトリ「いや。 愚問でしたね」
〇戦闘機の操縦席(空中)
聞いてます?ササトリ
ササトリ「はーい、ササトリです」
ササトリ「私は部品ハンター! 放棄された廃品こそ宝の山!」
ササトリ「行くっきゃないでしょ それに──」
ササトリ「面白そうだ」
〇塔のある都市外観
区分:廃棄都市
機械の街 ロンロ
〇諜報機関
E.S.カタバミ「な、何事?」
〇諜報機関
???「侵入者です、カタバミ 手順書の項目1 参照」
E.S.カタバミ「ええと プロテクトキー 接続」
E.S.カタバミ「『管理者カタバミ』より 『街の権限を移行します』 クラウディア どうぞ」
〇電脳空間
A.I.クラウディア「起動 構築型AI クラウディア 識別 ロンロ管理者 カタバミ」
A.I.クラウディア「権限移行 受理 監視映像 照合」
A.I.クラウディア「ヒット 部品ハンター『ハイエナのササトリ』」
カタバミ「部品ハンター?」
A.I.クラウディア「主に珍しい部品を集めて、売買する者。 そして、このロンロは特殊部品の宝庫」
カタバミ「ロンロの部品を、持ってっちゃうの?」
A.I.クラウディア「そう。 彼らは、敵です!」
A.I.クラウディア「カタバミ 防衛機能の階層へ移動を」
カタバミ「階層、えーと」
A.I.クラウディア「マニュアル項目3 記載のコマンドを、手動入力です」
A.I.クラウディア「3回間入力ミスで、コマンドロックされますので気を付けて」
A.I.クラウディア「エラー ゆっくり、時間はあります」
A.I.クラウディア「エラー 1度キーの確認を──」
A.I.クラウディア「あっ」
A.I.クラウディア「エラー 入力制限により、ID凍結」
カタバミ「・・・ごめん」
A.I.クラウディア「大丈夫、カタバミ。 中枢PCで復旧してきますから」
〇地下実験室
ササトリ「お?施設に動きが」
ササトリ「想定より早く気づかれた。 この廃棄都市、管理者が生きてる?」
ササトリ「プロダクトコード 入力 インストール 完了 動作・接続 良好」
ササトリ「こっちの設置は全部済んだよ アヤトリ!」
〇サイバー空間
A.I.アヤトリ「起動 構築型A.I. アヤトリ」
A.I.アヤトリ「ん?僕の構築画像変えたの?」
アヤトリの基本形態は
鎧の青年
ササトリ「そ!かわいいでしょ」
A.I.アヤトリ「ダメだよ、他人の画像、勝手に使っちゃ」
ササトリ「勝手じゃないよ? 何時でも始動可能!」
A.I.アヤトリ「了解」
A.I.アヤトリ「街の管理権限を奪う」
A.I.アヤトリ「さて、僕に敵うかな?」
〇研究所の中枢
中枢PC
A.I.クラウディア「侵入者 探知 迎撃する」
〇地下実験室
みつけた!
A.I.アヤトリ「みーつけた」
〇黒背景
A.I.クラウディア「逆探知、された?」
A.I.クラウディア「私が?」
〇研究所の中枢
A.I.クラウディア「くっ リンク遮断不可」
A.I.クラウディア「ローカル回線 汚染拡大」
A.I.クラウディア「乗っ取られる?ロンロが」
A.I.クラウディア「街は渡さない」
A.I.クラウディア「例え共倒れても!」
〇塔のある都市外観
管理者権限 行使
防衛装置 起動
A.I.アヤトリ「街の負荷が大きくなる この時を待ってたよ」
A.I.クラウディア「未確認のサーバー?」
A.I.アヤトリ「侵攻をかける機器とは別に 僕の一部も持ってきた。 『大喰らい』の僕のサーバーを」
A.I.クラウディア「ああ」
A.I.アヤトリ「負荷が掛かると、働くだろう?」
A.I.アヤトリ「安全装置が」
〇塔のある都市外観
〇地下実験室
ササトリ「お、電源が落ちたか?」
ササトリ「聞こえてるよ。 やっぱ、アヤトリが本駆動すると落ちるね」
ササトリ「復旧は任せて! え? バッテリー型の迎撃システムは動いてるかも?」
ササトリ「わあ☆」
ササトリ「うわぁ☆」
〇諜報機関
E.S.カタバミ「え、ウソ、落ちた? クラウディア、クラウディア!」
E.S.カタバミ「外が騒がしい」
E.S.カタバミ「でも、電源スイッチは外だし プログラムじゃ操作できないし」
E.S.カタバミ「よしっ」
〇駅のホーム
ササトリ「ウヨウヨいるぅ」
ササトリ「でも私は『ハイエナ』」
ササトリ「闘いは、得意なんだ」
ササトリ「一発かますぜ!」
???「危ない!」
E.S.カタバミ「下がって」
ササトリ「機械が退いていく」
ササトリ(街の管理者?まさかこの子が?)
ササトリ(ともあれ)
ササトリ「助かったよ」
〇コンピュータールーム
ササトリ「E.S.(エマスト)・カタバミ 君は機械音痴なのかー」
E.S.カタバミ「だから、出来ること増やして、クラウディアを助けたい!」
ササトリ(なるほど、修行中ね。 マニュアルも持ってきてエライ)
ササトリ(ん?マニュアル?機械音痴?)
E.S.カタバミ「えーと、電源スイッチ」
ササトリ「エマストぉ!」
E.S.カタバミ「なに?」
ササトリ「もしや 手当たり次第スイッチONする気では?」
E.S.カタバミ「うん?」
ササトリ「スイッチってさ 入り切りの順番が、あるんでないかい」
E.S.カタバミ「切る?電源は入れるんだよ?」
ササトリ「おーう☆」
ササトリ「マニュアルを、お姉さんにもみせて」
E.S.カタバミ「い、いいよ?」
ササトリ「よし」
ササトリ「保守点検の要領でいこう」
〇黒背景
A.I.クラウディア「迎撃システムの駆動で、エネルギー消費が増えたとはいえ」
A.I.クラウディア「街の主電源が落ちるなんて」
A.I.クラウディア「バケモノ」
A.I.アヤトリ「街の安全装置が優秀で助かった」
A.I.アヤトリ「遮断機が正常に動いたね」
A.I.クラウディア「軽々しく、他人の姿を借りないで」
A.I.アヤトリ「ああ、この姿ね」
A.I.アヤトリ「知ってるの?I.U.を」
A.I.クラウディア「白々しい。あなたも私と同じでしょう?」
A.I.クラウディア「I.U.は都市管理A.I.の創造者」
A.I.クラウディア「アヤトリも、I.U.が組んだA.I.でしょ」
A.I.クラウディア「大規模で最新鋭のシステムだこと」
A.I.アヤトリ「トゲトゲだね」
A.I.クラウディア「私のスペックじゃ、あなたに敵わない 街を、守れなかった」
A.I.アヤトリ「ねえ」
A.I.アヤトリ「映像─昔のI.U.を発信したのは君?」
A.I.クラウディア「そうよ」
A.I.クラウディア「I.U.に、私は─ロンロはまだ生きてるって 知って欲しくて」
A.I.アヤトリ「そっか」
A.I.アヤトリ「メッセージがある。 きみに」
A.I.クラウディア「これは」
〇研究所の中枢
A.I.アヤトリ「わっ、復旧した」
A.I.クラウディア「復旧してよかった」
A.I.アヤトリ「画像データ変更 こっちがしっくり来る」
A.I.クラウディア「お願いがあるの」
〇宇宙ステーション
A.I.クラウディア「この街 迷子の衛星都市から」
A.I.クラウディア「連れていってやって 最後の人、カタバミを」
A.I.アヤトリ「その代わり 街は僕がもらうよ」
A.I.クラウディア「好きにして あなたなら、許すわ」
A.I.アヤトリ「わかった」
よろしく
〇飛空戦艦
〇洋館の玄関ホール
ササトリ「ただいまー!」
〇綺麗な部屋
E.S.カタバミ「おかえり」
ササトリ「我が家には馴染んだかい?」
E.S.カタバミ「うん。快適だよ、ありがとう」
ササトリ「朗報! クラウディアのサーバー移動が決まった!」
ササトリ「また一緒に暮らせるよ」
E.S.カタバミ「うん」
〇パールグレー
〇仮想空間
A.I.アヤトリ「映像報告書 以上です」
A.I.アヤトリ「うん?」
A.I.アヤトリ「預かっていたメッセージ?」
A.I.アヤトリ「はい、どうぞ」
〇SNSの画面
〇黒背景
I.U.「クラウディア やっと見つけた」
I.U.「アヤトリと、弟子のハナニラ・ササトリを迎えにやります」
I.U.「お金を貯めた!腕も磨いた! もう離れない、見失わない」
I.U.「今度こそ」
I.U.「一緒に暮らそう!」
〇黒背景
今度こそ、一緒に
近未来でありながら廃棄都市を舞台とするどことなくノスタルジックな趣がいいですね。A.I.同士であるアヤトリとクラウディアの会話や駆け引きとか、ちょくちょくアヤトリが画像データをI.U.に変えるのも面白い。そしてラストのI.U.のセリフには、ジーンとしました。
電脳世界の息を飲む攻防戦に、アナログなアイテムが像を差し込む優しさ、年寄りには嬉しく思いますw テンポの良さとキャラクターのビジュアルが作品世界にマッチしていて魅力的ですね!
未来ですね… 絵と流れるような場面転換がさらに未来を感じさせます。テンポよく楽しく読むことができました。