2本目:村田カスミについて(脚本)
〇渋谷の雑踏
人は、大なり小なり悩みを抱えている
〇渋谷駅前
──7月8日
村田 カスミ(家と会社の往復の日々)
村田 カスミ(給料低いから贅沢出来ないし)
村田 カスミ(本当 つまらない人生・・・)
男子生徒「アイ〜!俺 疲れた〜!」
男子生徒「花屋なんて他にもあるじゃん! なんであそこにこだわんだよ〜」
天草 アイ「お世話になった人がいてさ。 恩返しにならねぇかなって」
男子生徒「あ。俺 外で待たされたけど もしかして店員に恋しちゃった?」
天草 アイ「・・・相手 おじいちゃんだぞ」
村田 カスミ(楽しそう。私も昔に戻りたい)
村田 カスミ(高校の頃は幸せだったな ハヤトともたくさん遊べたし)
村田 カスミ(ハヤトからLIME!?)
──今月ピンチ。金貸して
村田 カスミ(ま またお金? 先月も貸したばかりだよ?)
──まとめて返すから!! お願い!!
──俺にはカスミしかいないんだって
村田 カスミ(私しかいない・・・)
村田 カスミ「しょうがないなぁ・・・」
〇二階建てアパート
──翌日
村田 カスミ(勝手に来ちゃった ハヤトの家 いつぶりだろ?)
村田 カスミ(せっかくだしご飯作ろうかな? ハヤト 料理苦手だから──)
〇アパートの玄関前
ハヤト「ハイ。って カスミ!?」
村田 カスミ「おはよう。来ちゃった」
ハヤト「『俺から家に行く』って言ったろ!?」
村田 カスミ「うん。でも久々に会えると思ったら・・・」
村田 カスミ「あっ これ。LIMEで言ってたお金ね」
村田 カスミ「でね。良かったらお昼──」
ハヤト「・・・4万!助かるわー! やっぱお前”イイ女”だよ!」
ハヤト「悪ぃ悪ぃ。昼がなんだって?」
村田 カスミ「ご飯作ろうと思ってて──」
ハヤト「腹空いてねぇし。悪いけど帰って?」
村田 カスミ「そ そっか。ごめんね──」
「ねぇ ハヤトォ? さっきから何してんのォ?」
村田 カスミ(女の人の声・・・?)
ハヤト「今日はサンキュ!また今度な!」
村田 カスミ「うん。また・・・ね」
〇駅の出入口
村田 カスミ「雨だ・・・ 傘 持ってないや」
村田 カスミ「まあいいか・・・」
〇街中の道路
──フローリスト・ハナサカ前
村田 カスミ「キャッ!!」
村田 カスミ「あーあ・・・ 全身びちゃびちゃ」
村田 カスミ「私ってばバカだなぁ・・・」
村田 カスミ「本っ当にバカ!!」
店長・花咲「雨脚が強くなってきましたねえ」
店長・花咲「と お嬢さん。どうされましたか? 傘も差さずに──」
村田 カスミ「なんでもないです・・・」
店長・花咲「よろしければ雨宿りがてらに 寄っていきませんか?」
村田 カスミ「いえ お気になさらず──」
店長・花咲「風邪。ひいたら大変でしょう?」
村田 カスミ「・・・すみません」
〇お花屋さん
村田 カスミ「わぁ きれい・・・!」
店長・花咲「今 タオルをお持ちしますね」
村田 カスミ(こんな所にお花屋さんなんてあったんだ)
村田 カスミ(忙しくて全然気付かなかったな)
店長・花咲「はい。どうぞお使いください」
村田 カスミ「ご迷惑をおかけしてすみません ・・・ありがとうございます」
店長・花咲「とんでもありません」
店長・花咲「あのまま帰らせるのも 気が引けましたし。それに」
店長・花咲「只事ではないと思いましたので」
店長・花咲「私でよければ話してみませんか?」
村田 カスミ(この店長さんの瞳 怖い。 見透かされてるみたいで──)
村田 カスミ「大したことではないんです。本当」
本当に──?
〇大衆居酒屋
──22歳の同窓会
ハヤト「──カスミ?気付かなかった スゲー綺麗になったじゃん!」
村田 カスミ(ハヤト!? 高校の頃と雰囲気が違う・・・)
ハヤト「実は俺 高校生ん時 お前のことが好きだったんだ」
村田 カスミ(私たち 両思いだったんだ)
村田 カスミ「わ 私も!同じ気持ちだった」
ハヤト「マジで! じゃあフリーならさ──」
〇お花屋さん
村田 カスミ「・・・でも付き合ってみたら ほぼお金の連絡ばかり」
村田 カスミ「今日なんて女を連れ込んでました 笑っちゃいますよね」
村田 カスミ「薄々気付いてたんです 『大切にされてないかも?』って」
村田 カスミ「それでもハヤトを信じたかった」
店長・花咲「・・・なるほど。 お辛い思いをされましたね」
店長・花咲「お金の貸し借りは肯定出来かねますが」
店長・花咲「それほどまでに彼を 想っていらっしゃったんですね」
店長・花咲「その一途さは 素晴らしいことだと思います」
店長・花咲「ただ 先ほど仰られていたように 大切にされていないと感じたのなら」
店長・花咲「ご自身の心の声を尊重して お別れを告げる勇気も必要かと思います」
村田 カスミ「心の声・・・?」
店長・花咲「ええ」
店長・花咲「お嬢さんを幸せにするのは 他の誰でもありません」
店長・花咲「──お嬢さんご自身です」
村田 カスミ「そうですよね・・・」
村田 カスミ「あんな男と付き合ってても 不幸になるだけですもんね」
村田 カスミ「気持ちの整理がつきそうです ・・・ありがとうございます」
店長・花咲「大したことはしておりませんよ」
村田 カスミ「タオル お返ししますね」
村田 カスミ「せっかくだからお花買っていこうかな おすすめのお花 あります?」
店長・花咲「ありがとうございます。 これなんかどうでしょう?」
村田 カスミ「ガーベラと かすみ草? 私の名前と同じ!」
村田 カスミ「これにします!」
店長・花咲「ありがとうございます 今 お包みいたしますね」
〇街中の道路
村田 カスミ(傘まで貸してくれるなんて 良い人だな。必ず返しに来よう)
「ありがとうございましたー」
新井 ショウゴ「おわっ!?」
〇街中の道路
──数日後
フローリスト・ハナサカ前
村田 カスミ(来るの 早かったかな・・・)
〇お花屋さん
謎の男「んっ?」
村田 カスミ(カ カッコいい!!)
謎の男「──花咲さん。客人です」
店長・花咲「ああ この間のお嬢さんですか」
謎の男「では 失礼いたします。 また様子を見に伺いますよ」
店長・花咲「お元気そうで何よりです」
村田 カスミ「先日はありがとうございました これ。お返しに」
店長・花咲「わざわざ届けに来てくださったのですね」
店長・花咲「──うん」
店長・花咲「あの時より良い顔をしていらっしゃる」
村田 カスミ「店長さんのおかげです! この後 久々に親友と会う約束してて──」
〇街中の道路
──なんで無視すんだよ
──別れるとかふざけんなよ
──お前みたいな女が調子乗りやがって
正直に言うと
まだ情が残ってる
でも 私──
村田 カスミ「私はもう”都合のイイ女”にはならない」
──ハヤトさんを削除しました
村田 カスミ「サヨナラ。ハヤト」
かすみ草綺麗ですよね。
花咲さんが、落花亭さんご本人に思えて仕方がないんですよ🥹いい意味で。
本作の主人公がカスミさんなので、かすみ草のような方かと思っていたら想像以上にピッタリな感じですね。繊細で、メインのお花に振り回されるところがある感じがw
ちなみに私は、かすみ草が大好きです。添え物ではなく単体で花束にしても凛として魅力的だと思っています。本作のラストの彼女にも、同様の魅力が感じられました。