〇荒廃したセンター街

〇荒廃したハチ公前
　　・・・はい、名前からですね。
　　タナカ サトコです。
　　17歳、Ａ型、誕生日は12月25日。
　　趣味は人間観察とか読書、油絵、彫刻、
　　小説を書いたりもします。
　　あ、植物を育ててました。
　　サボテンです。
　　緑色の上に赤いカボチャみたいなのが
　　乗ってる子です。
　　え？　・・・ああ、キメラですよ。
　　アレ緑色の所は柱サボテンなんです。
　　柱サボテンをザクッと切って、
　　赤いサボテンも根っこをザクッと切って、
　　くっつけるんですよ。
　　乗せておくと「あれ？　これ私の頭？」
　　「あれ？　これ私の胴体？」って
　　勘違いしてくっついちゃうんです。
　　可愛いですよね。
　　あ、ここも危ないですか。
　　移動しましょうか。

〇荒廃した街
　　続きですね。
　　好きな色は赤と黒です。
　　血と闇ですね。
　　好きな食べ物は人肉です。
　　嫌いな食べ物は髪の毛です。
　　冗談ですよ。
　　好きなのは軟骨、嫌いなのは涙腺です。
　　好きなアーティストはマーリーです。
　　好きな・・・はい？
　　マーリー、知りませんか？
　　マーリー・Ｇ・ガルダドレアですよ？
　　一週間に一枚、蜘蛛と老婆を描き続けた
　　画家です。
　　有名だと思いますけど・・・？
　　・・・あ、歌手のほうですか？
　　うーん、協奏曲とかなら分かりますけど。
　　アーティストと呼べる歌手には
　　まだ出会えてないです、ごめんなさい。
　　移動しましょうか。

〇荒廃した教室
　　良い所ですね。
　　気に入りました。
　　探してくれてありがとうございます。
　　さっきの続き、答えますね。
　　マンガとアニメはちょっと分かりません。
　　小説でも良いですか？
　　・・・良かった。
　　サドグッンの『歴史』が好きです。
　　81巻、全部読みました。
　　何周したか分からないぐらいです、うふ。
　　うふふ、うふふふふ、くくっ、うふっ。
　　あ、すみません。
　　本当にもう、思い出しただけで、うふっ。
　　あれ面白いですよね？
　　トカゲの拷問から逃げる王様とか、
　　求婚と球根を間違えたまま死んだ天使も、
　　その羽根をむしっちゃう人が、うふふっ。
　　・・・あ、知りません？　そうですか。
　　えっと、好きな映画は『ドール』です。
　　ヌサルッ監督の、やっぱり知りません？
　　人体実験に取り憑かれた医者に恋をした
　　人形の話です。
　　医者に愛されたくて
　　人間の内臓を自分に詰める描写が
　　美しくて・・・。
　　・・・。
　　あの？
　　これ、意味あります？
　　してくれと言うから自己紹介してるのに
　　何も知らないとか何なんですか。
　　画家も作家も映画も作曲家も知らない、
　　じゃあ何を知ってるんですか？
　　低俗な流行り物ですか？
　　私にそれを好きと言わせたいんですか？
　　私をからかってるんですか？
　　ああそういうのが楽しいヒトですか？
　　性格悪いですね？
　　なに笑ってるんですか？
　　怖い？　意味が分かりません。
　　なんですか？
　　怒ってません、不愉快なだけです。
　　アナタがまともに相槌を打ったのは
　　サボテンの話だけですよ？
　　なんですか？
　　怖いって何がですか？
　　一人で死ぬのが怖いから
　　私にまとわりついて適当に自己紹介とか
　　させてるんですか？
　　気持ち悪い。
　　なんて不潔、無教養、身勝手で卑劣。
　　死は全ての終わりの始まりの深淵の序章の奈落の棺の最短距離の事後承諾の昇天の街中の仮面の十字架の政治の紅茶ですよ？
　　何が怖いんですか？
　　カメラ止めて下さい。
　　私はこれを『バッカルコーンの刑』と
　　呼んでます。

〇荒廃した教室

〇荒廃した教室
　　・・・。
　　愚かなヒト。
　　・・・早く終わればいいのに、世界。
　　「滅亡します」から何日かかってるの？
　　もう元気に暴れてるヒトも減って・・・。
　　あっ。
　　それって食料が無くなるって事じゃない？
　　お腹が空くのはイヤだな。
　　でも本物の「空腹」を味わえるかも。
　　アーティストは飢餓で輝いたりする。
　　読み解く方にも私にも必要、うん。
　　ああ今『歴史』の15巻か48巻でもあれば
　　インベルの気持ちになって読めるのに！
　　読書したーい、文字が恋しいよー。
　　ああー、もうー、くふふふっ。
　　今こんな事が言えちゃう私スゴい、
　　えへ、奇才。
　　・・・。
　　こんなに高尚で気高くて聡く煌めいて勤勉で謙虚で微笑ましく葡萄で合縁奇縁で潔癖で奇才の化身で私は私でみんな何も知らないの？
　　意味分かんない。
　　自己紹介させて人も作品も何も一つも
　　ももももも知らないとか。
　　17年生きてる私が見つけたんだから
　　間違いないのに。
　　流行る歌は雑音、
　　マンガもアニメも小説すら紙の無駄。
　　あ、火事かな？　火がある。
　　焼いてこよう。
　　うん、焼きたては美味しいね。
　　こんなに便利で魔法みたいなチカラが
　　手に入ったのに。
　　失う物が世界だなんて。
　　・・・。
　　ああー！　私の才能が怖い、怖過ぎる！
　　書き残す紙も発表する場も無いなんて
　　もったいなーい！
　　・・・あ！
　　うふっ、あった、あるじゃんカメラ。
　　奇跡、録画中じゃん。
　　もっと語ろう。
　　じゃあ『私が世界なら、どんな世界？』
　　売れた物は駄作、発掘された物こそ傑作、
　　当たり前に目障りな物が存在しない世界。
　　ていうかー、私の小説読みなさいよー、
　　絵も上手いんだけどー、
　　なんで私が埋もれてんのよー！
　　・・・なんちゃって。
　　私が基準だとレベルが

〇荒廃した教室
　　あ、カメラ回収しなきゃ燃えちゃう。
　　うふっ。