こんなファンタジィは、嫌だ。(脚本)
〇闇の要塞
ああああ「・・・」
ああああ「・・・・・・」
ああああ(三点リーダって、どうやって入力するんだろ・・・)
〇謁見の間
冬木幸太郎「ふっふっふ・・・」
冬木幸太郎「よくぞここまで辿り着いた。我こそは魔王・・・」
ああああ「タイトルがさ・・・」
冬木幸太郎「え・・・」
ああああ「タイトルが、リアリスト無双っていうんだよ。私が君を倒す、この話なんだけどね?」
ああああ「作者がさ・・・」
冬木幸太郎「・・・さ、作者?」
冬木幸太郎「ふっ。そうか。我が力の強大さに、恐れ慄いているのだな?」
ああああ「現実主義(リアリズム)っていうのは、政治的な意味の言葉であって、これから起こる事のような意味ではなかったんだ」
ああああ「ウィキペディア先生が教えてくれたから、間違いない」
冬木幸太郎「・・・?ゆ、有能な師のもとで修行したということか?」
冬木幸太郎「しかし!たかが人間ごときが、如何に鍛錬を積もうとも無駄だぁ!」
ああああ「シュールなコント、的な意味合いでリアリズムって単語を使ったんだけどさ」
ああああ「あんまり大業な意味で、調べてからずっと後悔してんだって」
ああああ「でも、語呂が良いから変えたくないんだと」
冬木幸太郎「貴様・・・、さっきから何をブツブツとっ!」
冬木幸太郎「我が秘術!獄炎魔法で・・・」
ああああ「そうそう。そんなふうに炎上したらどうするんだろうね?」
冬木幸太郎「・・・なに?」
ああああ「現実主義の意味も分からない阿呆、とか言われたらどうしよう、とか思わないのかな」
冬木幸太郎「なんなのだ、貴様。それが、遺言なのか?」
冬木幸太郎「この炎は、魔王にのみ使える燃え尽きぬ永遠の焔。触れた者は一瞬にして灰燼に・・・」
ああああ「魔法ってさ」
冬木幸太郎「・・・ッ!なんなんだっ!」
ああああ「ああ、ごめんね。一生懸命考えた設定を述べ連ねる時って、気分が良いよね」
ああああ「割って話し出しちゃった。邪魔してゴメン」
冬木幸太郎「くっ」
冬木幸太郎「まあ良い。この炎を放てば・・・」
ああああ「いや、放てないでしょ」
冬木幸太郎「なにっ!」
ああああ「だって、それ放って私が死んだら、物語終わっちゃうじゃん。バッドエンドじゃん」
ああああ「放ったとて、そうはならないけどさ」
冬木幸太郎「バッド・・・、なんと?」
ああああ「そもそもさ。その・・・、なんて言ったっけ?ゴクエンマホー?」
ああああ「なにが燃えてるわけ?」
ああああ「酸素?」
ああああ「この部屋さ、広いけど、だいぶ密閉されてるよね?」
ああああ「お互い、酸欠とかになんないのかな?ちゃんと燃焼してる?一酸化炭素中毒になったりしないの?」
冬木幸太郎「イッサンカ、タン・・・?」
ああああ「火傷をしないのは、炎の一番近くにいる君を見れば分かるんだけどさ。ちょっと心配でね」
ああああ「頭がボーッとしてこない?」
冬木幸太郎「い、言われてみれば、そんな気も・・・」
ああああ「マズいよ。一回、炎しまって?」
冬木幸太郎「あ、ああ」
ああああ「あと、換気しないと。屋内で火なんか、料理と暖房以外で使っちゃダメだよ?」
冬木幸太郎「・・・・・・」
と、鳥っ!鶏っ!「はっ!」
冬木幸太郎「なんか・・・、窓あけてって」
と、鳥っ!鶏っ!「はっ!ただちに!」
ああああ「今の子、変な名前だったね」
ああああ「私が言えたことじゃないけど」
ああああ「どう?頭はスッキリした?」
冬木幸太郎「貴様は・・・、いったい・・・」
ああああ「なんか、偉い人が言うにはね。魔法が効かないんだって」
冬木幸太郎「魔法が効かな・・・、はぁ?」
ああああ「信じてないから」
冬木幸太郎「・・・ナトハ(爆発)」
ああああ「え?」
ああああ「・・・・・・」
ああああ「どうかと思う」
ああああ「どうかと思うよ?効かないとは言ったけど、驚かないとは言ってないからね?」
冬木幸太郎「ば、バカな・・・」
冬木幸太郎「お前はいったい・・・」
ああああ「こんな格好はしていますが、馬子にも衣装。正体はしがない農家です」
冬木幸太郎「の、のうみ・・・、勇者ではないのか?」
冬木幸太郎「我を倒すために、人間共が送り込んだのではないのか!?」
ああああ「ユーシャ・・・」
ああああ「・・・ちょっと存じ上げないなぁ」
ああああ「私は、宮沢賢治の詩に出てくるような、ホントもう、しがない農民だよ?」
冬木幸太郎「ミヤザワ・・・?詩・・・?だ、誰だ、そいつは!?」
ああああ「作者が好きなんだよ。小一時間、話してもいいんだけど、私の権限でバッサリとカットしておくね?」
ああああ「なんでも死んだ母親が小さい頃に・・・」
冬木幸太郎「フィジャルムザムハ(空間切断)!」
ああああ「ナイスツッコミ。危ない危ない。勝手にセリフ欄を書き加えられそうだった」
ああああ「作者の過去になんか、読者は微塵の興味もないからね」
冬木幸太郎「ま、魔法防御が高い・・・?いや、今のは防御無視魔法だぞ!?」
ああああ「あと、魔法を使うんなら、あらかじめ言ってよ」
冬木幸太郎「あらかじめ言う不意打ちがどこにある!?」
ああああ「あ、それもそうだね」
ああああ「私を倒したい君と、無駄が嫌いな私の、立場の違いから生じた齟齬だね」
冬木幸太郎「わ、我が魔法を・・・」
冬木幸太郎「言うに事欠いて、無駄とは・・・」
冬木幸太郎「許さんっ!許さんぞぉお!」
ああああ「・・・・・・」
ああああ「気は済んだ?」
冬木幸太郎「そんな・・・」
ああああ「こんなんで泣かなくても・・・」
ああああ「冬木君ってさぁ・・・、あ、冬木君って呼んでいい?」
冬木幸太郎「きっ、貴様!なぜ我の真の名を!?」
ああああ「いや、セリフの上に白く書いてあるから・・・」
冬木幸太郎「どこでその名を・・・。我は誰にも教えていないというのに・・・」
ああああ「じゃあ、リアクションしちゃダメじゃない。秘密なんだったら余計にさ」
冬木幸太郎「ぐぐぐ・・・」
ああああ「ぐぐぐって悔しそうにリアクションする人、現実では会ったことないなぁ」
ああああ「でさ。冬木君って、人魔戦争とか言って、めっちゃ人間を虐殺しちゃったじゃない?」
冬木幸太郎「・・・・・・」
冬木幸太郎「その通りだ。誰か身近な者でも、戦禍で死んだか?」
ああああ「両親が・・・」
冬木幸太郎「ふっふっふ。そうか。親が殺されたか。我が憎かろう?その憎しみこそが、我が力となり、人間共の破滅を・・・」
ああああ「あ、いやいや。両親が早くに死んでから、私は天涯孤独だったから」
冬木幸太郎「え・・・」
ああああ「農作物と堆肥だけーがっとぉーもだっちさ♪」
冬木幸太郎「なんなんだ!アンパンマンの歌みたいに!」
ああああ「・・・・・・」
ああああ「そう。アンパンマンを知っているって事は、君は異世界人だね?」
ああああ「宮沢賢治も知ってたでしょ?」
冬木幸太郎「あ・・・」
ああああ「まだ宮沢賢治やウィキペディアで異世界人バレした方が格好もついたかもしれないのに」
ああああ「アンパンマンで身バレとか」
ああああ「表情は変わりませんが、こちらとしては笑いを堪えるのに必死だよ」
冬木幸太郎「まさか貴様も日本人か!?」
冬木幸太郎「我と同じ、日本からの転生者なのか!?」
ああああ「正真正銘、こちらの世界生まれの、しがない農民ですってば」
冬木幸太郎「・・・・・・」
冬木幸太郎「なんなんだ貴様はぁっ!同郷への郷愁を誘っておいてぇえっ!我を、コケにしてぇ!」
ああああ「そんなに怒らなくても。ここまで来ると、飽きた読者は君の感情になんて興味もないよ?」
冬木幸太郎「ドク・・・、シャ・・・?」
ああああ「もうすでに何人かは、戻るボタンをタップしちゃったかもしれない」
冬木幸太郎「戻る・・・?タップ・・・?」
ああああ「そうだよ。だから読者が飽きないような、新しい展開を・・・」
冬木幸太郎「ギザム・シャリムダゴバ(多重状態異常)!」
ああああ「それはもういいから」
ああああ「諦めない?色々と。私を倒すことも。世界征服も」
ああああ「ここまで成し遂げたことは偉いよ。感服する」
ああああ「ホントはそんなこと、微塵も思ってないけど」
ああああ「各国の偉い人には、私からうまく言っておくからさ」
ああああ「解散しよう」
ああああ「静かな片田舎で、穏やかに暮らそうよ」
ああああ「ほら、みんなもそうしたいって・・・」
冬木幸太郎「だっ、誰がそんなことを・・・」
うわぁ…「魔王様ぁ、もうやめましょぉおお」
すっぱいだ「ギギギィ(もう無理ですぅ!諦めるしかないですぅ!)」
マチスモの権化「静かに暮らしたいですだぁあ!」
ああああ「ここに来しな、すでに説得済みというわけで、ね?」
冬木幸太郎「そうか・・・」
冬木幸太郎「・・・・・・」
冬木幸太郎「そうか・・・」
ああああ「・・・・・・」
ああああ「・・・」
ああああ「大勝利!」
現実に目を背けて生きてきたであろう冬木さんをそんなにいじめなくても…..と思ったけど冬木さんなんだから日本人ですもんね。なんなら冬木さんが一番魔力とかどうでもよさそうですしね。デーモン閣下みたいなもんですもんね。きっと肩の荷が下りたと思います。
ファンタジーのテンプレ要素に片っ端からツッコミ入れて回るこの展開、楽しいですね!
メタ要素もふんだんに取り入れたせいで、魔王こと冬木くんの立場ったら……
二人のやり取り、とても面白かったです笑
こういうコントのような作品は中々ユーモアが必要で書くのが難しそうです。是非続編も!