1110688の話

飯沢 久納

些細なきっかけ。(脚本)

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飯沢 久納

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〇雑踏
  今日も、昨日も、何一つ変わらない。
  日常という名のループを繰り返してきた。
  変わらない、、
  この日常から外れたものは一体どうなってしまうのか。
  これは、そういう話

〇雑踏
鍔浦 みこと「うう、、 さぶい、、」
鍔浦 みこと「ふう、、 (今日も疲れたぁ、、)」
  街の雑踏をかき分けて、行きつく先は
  寿司詰め状態の満員電車、、、
鍔浦 みこと「鬱過ぎる、、、」
鍔浦 みこと(もういっそのこと 学校休みたいなぁー メックのキャラメルラテ飲みたいなぁー)
鍔浦 みこと「そうだ、電車降りたら たまには別の道から帰ってみよ」
鍔浦 みこと「いい気分転換になりそうだし」
  そうしていろいろなところを
  巡り巡って帰っていった結果、、
鍔浦 みこと「・・・」

〇郊外の道路
鍔浦 みこと「お! こんな道があったんだ」
鍔浦 みこと「あ!いい!このお店 かわいい!」
  そうしていろいろなところを
  巡り巡って帰っていった結果、、

〇シックな玄関
鍔浦 みこと「ガクガクガクガク」
  体調を崩してしまったのだ。
鍔浦 みこと「、、寝るか」
  これが異変の始まりだったのだ

〇荒廃した街
鍔浦 みこと「、、、今日も誰も出なかった。 これで、1110688回目かぁー」
  体調をくずしてしまって
  自分の部屋で寝ていただけなのに。
鍔浦 みこと「ここ、、どこだろ」
鍔浦 みこと「はぁー、、、」
鍔浦 みこと「、、梨生奈」
  梨生奈は私の、唯一の友達だ。
  彼女以外の生徒とは、
  誰とも連絡先を交換していない。
  梨生奈だけが頼みの綱なのだ。
  連絡がつかなければ?
  わたしは、ずっと一人になる。
  学校にも行かずに済む。
  だけど、
鍔浦 みこと「、、、寂しい」
鍔浦 みこと「自業自得、、か」
  考えてもどうしようもない。
  自分の電話番号を確認する。
  、、やはり
鍔浦 みこと「私の電話番号、また変わってる」
鍔浦 みこと「・・・」
鍔浦 みこと「(もう、諦めたほうがいいのかな。)」
  ふと、冷たい風が頬をよぎった。
  雨が来るかもしれない。
鍔浦 みこと「移動しよ、、」
  コツ、コツ・・・

〇荒廃した改札前
  改札内の雨が入ってこないような場所で
  
  サァーッ、、、と
  静かな雨音に耳をあずけていた。
鍔浦 みこと「・・・」
鍔浦 みこと「・・・」

〇開けた交差点
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「──」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「、、、でね、 ××ちゃんが最近調子悪いみたい、、」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「××ちゃん、、。 昨日、お見舞いに行ったんだけど 顔が真っ青だったの」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「早く治るといいな、、」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「、、ねえ、聞いてる?」
米蔵 俊 (よねくら しゅん)「ああ。聞いてるぞ。 、、早く良くなるといいな」
  『プルルルル』
  その時、梨生奈のスマホに着信があった。
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「、、みことちゃんかな」
  画面を見せてもらった。、、非通知だ。
  電話番号にも見覚えはない。
米蔵 俊 (よねくら しゅん)「これ、ほんとうにあってるのか?」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「大丈夫だよ、だってみことちゃん 『非通知だけど私だからよろしくね』って お見舞いの時いってたもん」
  ──ツ
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「切れちゃった、、、」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「もぉー 俊が割り込むから、、」
米蔵 俊 (よねくら しゅん)「あー悪かったって、、」
  そんなことを言い合いながら時間は過ぎていった

〇荒廃した街
  すっかり雨はやみ
  ようやく日の光を浴びることができる。
鍔浦 みこと「ーいい天気」
  タッタッタ
  誰かの足音が聞こえる。
  誰?
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「みことちゃん、、」
鍔浦 みこと「梨生奈!?」
  梨生奈が目の前にいる。
鍔浦 みこと「ほんもの?」
  梨生奈の左腕を咄嗟につかんでしまった
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「きゃ! 、、、みことちゃん?」
  出会えたことが何よりうれしくて
  思わず涙かあふれてくる。
鍔浦 みこと「梨生奈、、」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「みことちゃん、帰えろっか」
鍔浦 みこと「うん」
  梨生奈が両手で包んでくれた右手は優しい温もりに満ちていた。
  ?
  帰る?どうやって?
  私、、
  どうして、、
  景色がグニャグニャ溶けていく、、
  ──
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「早く、よくなりますように」

〇女の子の一人部屋
  キィ・・・
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「小声:、、お邪魔しまーす」
  静かな声が部屋に響く。
  下校したさながら
  気になって家まで来てしまった
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「大丈夫かな、、みことちゃん」
  みことちゃんの家には以前
  お邪魔させてもらったことがある。
  そのこともあり、親御さんとも知り合えた。
  こんな急にお邪魔させてもらったのに快く受け入れてくれた。ありがたいことだ。
  彼女を起こさないように
  そーっと
  ベッドの近くまで歩み寄る。
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「!!」
  そこには高熱にうなされていて苦しんでいる
  みことちゃんが横たわっていた。
鍔浦 みこと「うーん、、うーん、、」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「しっかりして、みことちゃん!! (うっかり大声を出さないように、、 気を付けて、、)」
鍔浦 みこと「あ、、 アリゾナ焼きリンゴガトーショコラ」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「!?──」
  寝言、、、だったのかしら。
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「ほっ、、」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「わたしにできること、、、」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「、、手を握ってあげる事くらいかな」
  そっと右手を両手で包み込む。
  どうか、、
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「どうか、はやくよくなりますように」
鍔浦 みこと「う、、、ん」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「みことちゃん、、?」
鍔浦 みこと「梨生奈、、? あれ、、どうしてここに、、」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「よかった、、」
鍔浦 みこと「そうだ、、 夢かどうかはわからないけど、 梨生奈が出てきたんだ」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「、、うん」
鍔浦 みこと「、、梨生奈が両手で、私の右手を、包んで くれたんだ」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「、、、それ、本当のことだよ」
  えー とか ほんとにー? とか
  そのあとは、他愛もないおしゃべりを
  日が暮れるまで続けてた。
  そのころにはすっかり体調も元に戻り、
  明日とか、明後日とか、またいつも通りの日常がはじまるんだろうな。なんて思っていた。
鍔浦 みこと「、、ありがと。梨生奈」
鍔浦 みこと「わたし、 梨生奈が、友達で本当に良かった」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「わたし、、大したこと何もできなかったけど ありがとう、 私も、みことちゃんが友達でよかった」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「じゃあ、また明日ね、、 あ! 、、明後日かもしれないけど、」
塔ノ木 梨生奈 (とうのぎ りおな)「(∀`*ゞ)エヘヘ」
鍔浦 みこと「フフッ、、」
鍔浦 みこと「うん。ちゃんと、 行けるようになったら 、、ね?」
  また明日。
  その言葉がいつになるかわからないけど
  会えるその日が明日だといいな。

コメント

  • 物語を読んだ後で改めて見てみると1110688という数字が怖いです。人間が無意識下で他者を渇望するどん底までみことの精神が降りていった事を表す数字のような気がして。梨生奈がいかにも今時の女の子っぽいキャラクターと行動で、読者も救われる思いでした。

  • 夢?の中の世界がとても寂しい世界で、友達の力を借りて戻って来れて本当に良かったと思いました。とてもハラハラしました。素敵なお話をありがとうございました。

  • たった一人でも自分が辛い時になにも言わずにそばで手を握って見守ってくれる友人がいることって、この上な幸せだと思います。実話であってほしいと思いながら読みました。

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