私とデートしてよ弟さん!(脚本)
〇男の子の一人部屋
秀明「うるさいなぁ・・・・・・」
秀明「なんだよ姉ちゃん、急に開けんなよ」
深雪「・・・・・・お願い」
深雪「私とデートして!」
秀明「はぁ?」
〇男の子の一人部屋
深雪「と、いうことなの・・・・・・」
秀明「へー、あの人がねえ・・・・・・」
〇学校の部室
姉はサッカー部の渡辺キャプテンに、今週日曜日デートに誘われたらしい。
〇男の子の一人部屋
深雪「だから秀明に、デートの練習をしてほしいの」
深雪「どうせあなた帰宅部だし、土曜暇でしょ?」
秀明「・・・・・・シャクだけど暇だよ」
深雪「じゃあ決まりね。プランは──」
秀明「ちょっと待てよ。まだOKとは──」
深雪「・・・・・・ダメなの?」
姉ちゃんは俺をじっと見てくる
秀明「――分かったよ」
深雪「うん、ありがと」
深雪「それよりも、どうして私なんだろ?」
深雪「確かに彼とは同じクラスで席も近かったりしたときもあったけど・・・・・・」
秀明「姉ちゃんに興味があるからだろ?」
深雪「だからよ!」
深雪「彼はサッカー部のイケメンキャプテンで女子人気も高いし・・・・・・」
深雪「どうして私みたいな地味で陰キャな奴に・・・・・・何かの罰ゲームかしら?」
秀明「確かに姉ちゃんは地味で陰キャかもだけど」
秀明「顔可愛いし、優しいじゃん」
秀明「陰キャが陽キャと付き合っちゃダメなんて決まりなんかないし」
秀明「多様性だよ多様性」
深雪「褒めてくれてうれしいけど──」
深雪「シスコン過ぎてお姉ちゃんは心配です」
〇男の子の一人部屋
深雪「ということで、土曜はこのプランで行くから!」
日曜は今大人気のアニメ映画を観に行くことは決まっているらしい。
それ以外は決まっていないので、姉ちゃんが想定プランを組んで俺に説明していた。
秀明「映画を観た後カフェで話して公園か・・・・・・」
深雪「あんまり話したことないから、共通の話題がないのを懸念してて・・・・・・」
深雪「映画を観た後だったら、映画が共通の話題になるから、気まずくならないと思って」
深雪「その後ちょっと外で自分たちの話とかしたいなって」
秀明「・・・・・・やけに手練れてる気がする」
深雪「そりゃ、私は何人も色んな男を落として手籠めにしてきたから!」
秀明「え!?」
深雪「・・・・・・ゲームで」
秀明(なんだゲームか、ビックリした)
深雪「・・・・・・あーあ、ゲームみたいに選択肢が出て好感度とかも把握できればいいのに」
秀明「そりゃ分かれば苦労しないよ」
深雪「ま、とにかく土曜日はよろしくね!」
〇駅前広場
土曜日
俺は姉ちゃんを待っていた。
〇シックな玄関
深雪「デートなんだから待ち合わせでしょ!」
深雪「家から一緒に行ったんじゃおかしいじゃない!」
〇駅前広場
秀明(なんというか、律儀だよなぁ)
秀明(キャプテンもそういう所に惹かれたのかもな)
秀明「ん?」
深雪「いえーい、お待たせ!待った?」
秀明「姉ちゃん・・・・・・ いつもクラスでそんな感じなの?」
深雪「いや、全然」
深雪「明るい感じを出そうと思って・・・・・・」
秀明「やり直し!いつもの感じで来ないとキャプテンも驚くだろ!?」
深雪「ん~分かったよ」
深雪「お、お待たせ。待った?」
秀明(・・・・・・)
秀明(ヤバい)
秀明(ちょっと困ったような照れたような感じが可愛い・・・・・・)
秀明(やっぱり俺、シスコンなのか?)
深雪「あの、私の顔に何かついてる?」
秀明「い、いや大丈夫 それじゃ行こうか」
深雪「う、うん」
〇映画館の座席
映画のチケットを買い、隣同士に座る。
秀明(そういえば・・・・・・)
秀明「明日も同じ映画観る事になるけどいいのか?」
深雪「・・・・・・どうせ明日は緊張しまくって内容なんか頭に入ってこないから」
深雪「この監督の作品はちゃんと観たいし」
秀明(やっぱり、律儀だよなぁ)
〇映画館の座席
〇テーブル席
秀明「いや~面白かった!」
深雪「あのキャラのあのセリフが伏線だったんだ!」
秀明「うんうん、それすごくよく出来てると思った!」
秀明「あと、あのキャラのあの行動がそういう意図があったんだって最後まで観ると分かる!」
深雪「映像のきれいさにも圧倒されたし、本当に観て良かった!」
秀明(・・・・・・映画の感想について話す姉ちゃんは本当に生き生きしている)
秀明(コロコロ変わる表情を見ていても可愛らしい)
秀明「・・・・・・明日のデート、たぶん大丈夫だと思う」
深雪「え!?」
秀明「今日みたいに話せれば姉ちゃんの魅力、伝わると思うよ」
深雪「あ、ありがとう・・・・・・」
〇公園のベンチ
俺と姉ちゃんは他愛もない話をしながら公園内を歩く。
深雪「・・・・・・ちょっとベンチで休まない?」
秀明「うん」
俺と姉ちゃんは隣同士に座る。
深雪「・・・・・・今日は本当にありがとう」
秀明「どうしたの、急に改まって」
深雪「私、本当に不安だったの」
深雪「ゲームではデートなんて何度もしたけど、実際にはしたこともなかったし」
深雪「日曜は競馬観るからって言って、ドタキャンしようとも考えたよ」
秀明「それでドタキャンは無理があると思うけど・・・・・・」
深雪「まあ、競馬は冗談としても、ドタキャンしたかったのは事実」
深雪「それに──」
秀明「それに?」
深雪「秀明に今日のデート断られたらどうしようって不安だった」
秀明「練習できないから?」
深雪「ううん、そうじゃなくって・・・・・・」
深雪「なんだろう、私も人の事言えないくらいブラコンだね・・・・・・」
秀明「え、なんて?」
深雪「・・・・・・なんでもない」
姉ちゃんは俺の肩に頭をのせる
秀明「ね、姉ちゃん!?」
深雪「・・・・・・少し疲れちゃった」
深雪「ちょっとだけこうさせて」
秀明「・・・・・・分かったよ」
深雪「秀明・・・・・・明日頑張るね」
〇男の子の一人部屋
日曜日
秀明(姉ちゃん、大丈夫かなぁ)
秀明「帰ってきた?」
秀明「・・・・・・どうだったの?」
深雪「た、多様性・・・・・・」
深雪「うわあああああん!!ばかあああああああああ!!」
秀明「はぁ!?」
秀明「どういうことだ、一体・・・・・・」
秀明「ん?」
俺は携帯を見る。
メッセージが入っている。
俺は携帯を閉じる。
秀明「・・・・・・多様性、か」
END
日曜は競馬観るからと言ってドタキャンしようとする深雪のキャラ、真面目なんだかふざけてるんだか、陽気なんだか陰キャなんだか。そんなつかみどころのない不思議な魅力あふれる深雪の方も、もしかしたら多様性のお姉様方からモテるかも。それにしても多様性…。便利な言葉だなあ。
深雪姉ちゃん、台詞も行動も素直でかわいいですね😆テンポが良くてオチもスッキリ面白かったです🌟
終わり方が衝撃的で驚きが隠せません。
今の世の中、確かに多様性が大切ですが…。
まぁ、結果的に、みんながみんな良かったようにも思えます笑