〇組織のアジト
　　電話を切る新堂。
新堂信明「岩重君子から連絡があった」
灰島竜也「なんと？」
新堂信明「不破が結城あかりに寝返ったそうだ」
灰島竜也「やっぱりあの人は甘いなぁ」
新堂信明「不破と結城あかりを消すようにと依頼があった」
灰島竜也「俺の出番ってことですね」
新堂信明「・・・不破」

〇オフィスのフロア
石田克典「殺し屋って、冗談っすよね？ 不破さん」
不破誠「・・・・・・」
中堀伸介「殺し屋なんて、いるわけないだろ」
不破誠「・・・・・・」
星野千尋「何か言ってください、不破さん」
不破誠「・・・・・・」
石田克典「何も言わないってことは、やっぱり」
中堀伸介「この人、もともと話さないだろ」
不破誠（普段から無口なのが功を奏している）
磯ヶ谷敏文「不破くん、説明したまえ！」
不破誠（暢気なことを言ってる場合じゃなかった。 絶対絶命の大ピンチ）
結城あかり「・・・誰がこんなファックスを」
不破誠（おそらく、東条という男。ぬかりのない奴だ）
磯ヶ谷敏文「君が答えないなら、我々は警察を呼ぶしかないんだよ」
不破誠（・・・ここまでか）
高井雄太「待ってください」
不破誠「！」
結城あかり「高井くん！」
磯ヶ谷敏文「高井くん、今までどこにいたんだね！」
中堀伸介「みんな心配してたんだぞ」
石田克典「とりあえず生きてたんすね」
星野千尋「・・・良かった」
高井雄太「ご迷惑おかけしてすいませんでした」
不破誠「・・・・・・」
高井雄太「そのファックスは僕がふざけて送ったんです」
不破誠「！」
磯ヶ谷敏文「君が？」
高井雄太「皆を脅かせようと思ったんですけど、度が過ぎました」
高井雄太「反省してましゅ」
石田克典「ましゅって、お前酔ってんのか？」
高井雄太「酔ってないでしゅよ」
中堀伸介「間違いない。こいつは飲んでる」
星野千尋「なんでまた殺し屋だなんて」
高井雄太「不破さんいつも話さないから、たまには注目浴びたいでしゅよね？」
不破誠「・・・・・・」
高井雄太「よく考えてください。 不破さんが殺し屋のはずないじゃないでしゅか」
磯ヶ谷敏文「・・・・・・」
高井雄太「部長、全部僕のしたことでしゅ」
不破誠「・・・・・・」

〇休憩スペース
結城あかり「・・・高井くん、ありがとう。 あんな嘘までついて助けてくれて」
高井雄太「僕の役目は終わりました」
高井雄太「これからあいつらの目の届かない場所へ行こうと思います」
不破誠「・・・・・・」
高井雄太「そんな場所、あるか分かりませんけど」
結城あかり「ごめんなさい。高井くんまで危険な目に」
高井雄太「謝るのは僕のほうです。 お金、あいつらの手に渡ってしまって・・・」
不破誠「・・・・・・」
高井雄太「自分がしたことを、これで償えたとは思ってません」
不破誠「・・・・・・」
高井雄太「・・・それじゃ」
不破誠「お前は、酒に酔ってるだけだ。礼は言わん」
結城あかり「皆を納得させるために酔ってるふりをしただけで」
不破誠「・・・・・・」
高井雄太「・・・どうかご無事で」
結城あかり「素直に嬉しいって言えばいいのに」
不破誠「・・・・・・」
結城あかり「・・・私たちも、もうここにはいられないわ」
結城あかり「皆とこうして会うのも今日が最後」
不破誠「発信機を確認した。 金はまだ屋敷から動いていない」
結城あかり「・・・・・・」
不破誠「・・・最終局面だ」
「おーい」
間瀬口徹「いたいた。聞いたよ、ファックスの件。 今日は災難だねぇ」
不破誠（相変わらず白白しいスパイだ）
結城あかり「・・・噂を耳にするのが早いですね」