エピソード9(脚本)
〇レトロ喫茶
円城寺と女が向かい合って座っている。
女がコップを手に取り、円城寺に水をかける。
さらに円城寺の頬を思いきり叩くと、喫茶店から出て行った。
周囲の視線が、円城寺に集まる。
カーット!
〇川沿いの原っぱ
円城寺が川で溺れている。
カーット!
〇CDの散乱した部屋
円城寺敏郎「おお! ついにフォロワー100人突破!」
〇荒野
衣装を着たヒーローを、黒い全身タイツの怪人達が囲う。
ヒーローがポーズをとると、怪人の後ろで大爆発が起きる。
怪人達はそれぞれ大げさに転がる。
〇荒野
怪人がマスクを取ると円城寺である。
円城寺敏郎「いてて」
腕を捲ると、血が出ている。
丸山祐子「大丈夫? これ使って」
丸山祐子「ごめんねー。 本当はこういうのうちでは受けないんだけど」
丸山祐子「顔も出ないし」
円城寺敏郎「はは。なーに言ってんすか。 前から一度、こういうアクションものやってみたかったんすよ」
絆創膏を受け取り、貼り付けようとする。
しかし、片手で上手く貼れない。
丸山祐子「ほら、貸してごらん」
円城寺敏郎「・・・・・・」
丸山祐子「どうかした?」
円城寺敏郎「え、あ、いや。何でもないっす」
丸山祐子「・・・ねえ、円城寺。 その髪型ってこだわりあるの?」
円城寺敏郎「あ、これ? 見覚えないっすか?」
丸山祐子「?」
円城寺敏郎「『荒野の特急列車』に出てた時の篠宮さんの髪型、いただいてまっす」
丸山祐子「え、ええ。そう」
円城寺敏郎「髪型がどうかしたんですか?」
丸山祐子「今度、佐伯が出る学園ドラマで、追加枠のオーディションの話があるんだけど。 髪に条件があってね」
丸山祐子「嫌ならいいんだけど・・・」
円城寺敏郎「切ります! 坊主だろうがモヒカンだろうが、何でも来いです!」
〇オーディション会場の入り口
〇オーディション会場
長机に宮本吾郎と数名の関係者がおり、前の椅子に円城寺が座っている。
宮本吾郎「1分間あげるから好きにアピールして」
円城寺敏郎「え、好きにって? 何してもいいんですか?」
宮本吾郎「・・・・・・」
円城寺敏郎「げ、もう、始まった?」
慌てて立ち上がる円城寺。
円城寺敏郎「えっと、篠宮プロダクション所属の、円城寺敏郎です」
円城寺敏郎「篠宮さんに憧れて、役者になるために秋田から上京してきました。 趣味は映画鑑賞で、苦手なことは読書です」
円城寺敏郎「音楽はギターを少しばかり・・・」
宮本吾郎「・・・・・・」
室内は静まり返っている。
宮本吾郎「残り40秒」
円城寺敏郎「う・・・」
円城寺敏郎「・・・・・・」
円城寺、意を決して、服を脱ぎだす。
宮本吾郎「お、おい。君。何やってるんだ」
円城寺敏郎「何してもいいんすよね?」
円城寺、パンツ一丁になる。
円城寺敏郎「見ての通り、俺には何もありません。 だから、裸一貫で勝負します」
円城寺敏郎「篠宮さんの演技をお借りします」
宮本吾郎「残り10秒」
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