NO MORE ♡

落花亭

NO MORE ♡(脚本)

NO MORE ♡

落花亭

今すぐ読む

NO MORE ♡
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇一戸建て
  何これえええ!?

〇女の子の一人部屋
  朝 目覚めると
  私の頭上に〈♡〉が浮かんでいた!!
白銅 アスカ(はっ!? 昨日までこんなん無かったじゃん!!)
白銅 アスカ(ぐっ・・・引っ張っても取れない!!)

〇システムキッチン
白銅 アスカ「ねぇお母さん!! 頭に何か変な──」
アスカの母「あらアスカ。おはよう」
白銅 アスカ「えっ」

〇教室
  ──学校
女子生徒「カズヤの♡大きくない!?」
男子生徒「そりゃまぁモテるし?」
女子生徒「キモッ!!」
白銅 アスカ(ここでも♡の話で持ちきり)
朽葉 ラン「あっ アスカ!! おはよう!!」
白銅 アスカ「おはよ ラン」
朽葉 ラン「なんかヤバイ事になったね ウチん家 朝から大騒ぎ!!」
白銅 アスカ「ウチも。周りに与える影響力だっけ? ニュースで見た」
白銅 アスカ「影響力の数値が高くなると ♡の形も大きくなるとか何とか」
朽葉 ラン「それそれ!! 信じらんないよね」
白銅 アスカ「うん。てか 正直要らなくない? 何処にいても目に入ってくるし」
朽葉 ラン「兄貴も同じ事言ってた!! あと『これは人類にとって劇薬だ』って」
白銅 アスカ「劇薬?」
桑野 ミレイ「皆 おはよぉ!!」
朽葉 ラン「えげつないサイズ・・・ さすが美容インフルエンサーのミレイ あんだけでかかったら気持ちいいわな」
朽葉 ラン「・・・アスカ?」
白銅 アスカ「えっ? あっ ごめん!! ぼーっとしてた」
白銅 アスカ(一瞬 ミレイちゃんを見て 羨ましいと思ったなんて言えない・・・)

〇学校の廊下
  あれから月日が経っても
  ♡の話は収まるどころか過熱していった
  同時に 他人の影響力と比較して
  劣等感を抱く人も増えていた──

〇教室
教師「授業はここまで」
白銅 アスカ(暇だし絵でも描くかな・・・)
桑野 ミレイ「白銅さん 絵 上手くない!?」
白銅 アスカ「えっ!?」
白銅 アスカ(見られてた!?)
女子生徒「本当だ!! あの漫画のキャラだよね!?」
男子生徒「ヤバッ!! プロになれんじゃね!?」
白銅 アスカ「い いやぁ・・・」
桑野 ミレイ「私には描けないから凄っ!! もっと見せて!!」
白銅 アスカ(あっ・・・)
白銅 アスカ(私の♡が大きくなった!!)
白銅 アスカ(やばっ 超嬉しい)
朽葉 ラン「・・・」

〇美術室
  それから私は
  周りから頼まれた絵を描いたり
  美術の授業でも褒められたりして
  どんどん♡を大きくしていった
「凄い!!」
  蘭の影響力を追い抜き
  家族全員を追い抜き
  私自身も気付かないうちに
  もっと と貪欲になっていた──

〇学校沿いの道
  ──放課後
女子生徒「アスカちゃん ランちゃん またね!!」
白銅 アスカ「またね!!」
白銅 アスカ「・・・見て ラン あの子の♡小さくない?」
朽葉 ラン「えっ?」
白銅 アスカ「いや あんなに小さいと 凄いって思われてないってことじゃん」
白銅 アスカ「私だったらさ──」
朽葉 ラン「ねぇ もう♡の話は止めない?」
白銅 アスカ「えっ!?」
朽葉 ラン「この間から思ってたんだけどさ」
朽葉 ラン「『♡なんか要らない』って 言ったくせに気にしてるよね?」
朽葉 ラン「そんなに皆から チヤホヤされて嬉しかった?」
白銅 アスカ「何その言い方!?」
朽葉 ラン「ぶっちゃけ 今のアスカ 浮かれてるようにしか見えないんだよ」
朽葉 ラン「影響力の数値が高いだけで 他の人を見下して何様?」
白銅 アスカ「見下してなんか──!!」
朽葉 ラン「自覚無いの!?」
朽葉 ラン「前のアスカは人からどう見られてるか どう見られたいかなんて気にしてなかった」
朽葉 ラン「自分のやりたいようにやってた それが良かったんだよ!?」
朽葉 ラン「今のアスカはダサイし 付き合ってらんない!!」
白銅 アスカ「最悪なのはこっちだよ・・・!!」

〇学校の校舎
  ──翌日
  喧嘩後
  私たちは口も利かなくなった
白銅 アスカ(別にランがいなくても平気 他に”いい友達”がたくさんいる)

〇教室
男子生徒「白銅の♡もでかくなったな もうそろ桑野に追いつくんじゃね?」
白銅 アスカ「そ それはないよ──」
女子生徒「皆!! ミレイちゃんが倒れたって!!」
白銅 アスカ(ミレイちゃんが・・・!?)

〇保健室
白銅 アスカ「ミレイちゃん 大丈夫?」
桑野 ミレイ「うん 心配かけてごめんね」
桑野 ミレイ「──ねぇ、白銅さん」
桑野 ミレイ「この♡の壊し方 知らない?」
白銅 アスカ「えっ なんでそんなこと・・・」
桑野 ミレイ「この♡に振り回されるのはもう嫌なの」
桑野 ミレイ「初めは皆より大きくて嬉しかった けど 少しずつ♡の形が気になって」
桑野 ミレイ「昨日と比べて小さくなった!とか 明日は大きくなるかな?とか」
桑野 ミレイ「ずっと♡のことばかり気にしてる」
桑野 ミレイ「バイト先から注意力散漫って怒られるし 友達からも陰口言われてた」
白銅 アスカ(あっ──)

〇学校沿いの道
朽葉 ラン「ぶっちゃけ 今のアスカ 浮かれてるようにしか見えないんだよ」

〇保健室
桑野 ミレイ「こんなのあっても良いことない!! 面倒なだけ!! うぅ・・・」

〇階段の踊り場
白銅 アスカ(面倒なだけ・・・か あんなに♡が大きくて凄いのに)
女子生徒「──最近の白銅さんって 少し褒められたからってウザくない?」
女子生徒「分かる!! ♡が大きいからって 調子に乗ってるよね」
白銅 アスカ(う 嘘・・・!?)
女子生徒「ね!! 他の子も言ってたし 皆でシカトしちゃお──」
朽葉 ラン「ねぇ アンタらそういうことして楽しい?」
白銅 アスカ(ラン!? どうして!?)
朽葉 ラン「確かに今のアスカは浮かれてる だからって虐めていい理由にならない」
朽葉 ラン「ただの嫉妬にしか見えないし それで楽しいって言うならダサイよ」
女子生徒「何 ウザッ!! 行こっ!!」
  ──私 馬鹿だ
  ランに言われた通り
  周りから褒められていい気になってた
  『もっと私を見てほしい』
  『もっと褒めてほしい』
  そんな欲にまみれていくうちに
  大事なことを見失ってた──
  ごめん ラン!! 私──・・・

〇学校の廊下
  ──数日後
朽葉 ラン「アスカの♡ すっかり落ち着いたね」
白銅 アスカ「うん」
桑野 ミレイ「──やだ マジ!? ウケる!!」
朽葉 ラン「ミレイの♡も それでもまだでかいけど」
朽葉 ラン「前より吹っ切れてて楽しそう 何かあったんかな?」
白銅 アスカ「きっと 人からどう見られてるとか どう見られたいかとか」
白銅 アスカ「あまり気にしなくなったんだよ ・・・私も」
白銅 アスカ(あれ!? 今 私の♡が──)

〇学校の校舎
「今 褒めてくれたでしょ」
「え? 褒めてないよ?」
「嘘 ランって顔に出るからすぐ分かる──」

コメント

  • ハートの可視化❗️斬新な設定で面白かったです🙌キャラクターの背景も丁寧に練られていて読み応えがありました✨

  • いやぁ、こんなの見えたら大量にこの世を去る人出ますね笑
    SNSの普及により、それまでは感じてても抑えられたものがみんな爆発したと痛感しております。
    みんな違ってみんないい、という割になんでも数値化して比較が見えるようになってしまいました😢
    みんなの心が飢えて、満たされなくなってしまったという点で、考えさせられます。

    ありがとうございました。
    アイコンの使い方、面白かったです笑

  • SNSが一般化して、人からの共感や羨望が可視化された問題ってありますよね。このお話し程、直接的ではないにしてもそれに類する影響は確実にある。沢山の人に認められたい、自分を見て欲しいって気持ちは誰しにも。テーマ性分かりやすく、イイネ等を貰えるだけが大事じゃない、それで振り回されて自分を見失ってもいけないということに共感します。アイコンの使い方も秀逸でした😆😆😆

コメントをもっと見る(6件)

ページTOPへ