第十八話 アンロック(脚本)
〇病院の廊下
佐伯 栞里「催眠・・・療法?」
〇病院の診察室
佐伯 栞里「催眠っていうとなんだか、 怪しいイメージしかないんですが・・・」
佐伯 栞里「人を踊らせたり、手がくっついたり するアレですよね?」
奥平 庸子「まあ、そういったことも可能ですが 臨床の現場ではやりませんよ」
奥平 庸子「当院で行っているのは記憶の操作です」
佐伯 栞里「記憶・・・」
奥平 庸子「あなたの統合失調症は、 大黒運送と足立雄輔に紐付いています」
奥平 庸子「だからその部分を塗り替えます」
奥平 庸子「例えばこういった具合です」
奥平 庸子「足立雄輔には告白されたけど断った。 両親は病気で亡くなった、と」
奥平 庸子「恐らくこの改変だけで 効果は劇的に現れるでしょう」
佐伯 栞里「そんなことが可能なんですか!?」
佐伯 栞里「・・・あ。 でもちょっと考えさせてください」
奥平 庸子「ええ、もちろん。 ゆっくり考えてみて下さい」
〇総合病院
〇病室
佐伯 栞里(催眠療法。それを受ければ 雄輔と大黒運送の記憶が消える)
佐伯 栞里(そうすれば、お父さんとお母さんの幻覚に 苦しまなくて良くなるかもしれない)
佐伯 栞里(でも・・・)
〇店の入口
栄田 駿「佐伯さん」
足立 雄輔「栞里!」
〇病室
佐伯 栞里(私の直感が間違いでなければ 栄田さんは雄輔だ)
佐伯 栞里(復讐のために、 私と結婚しようとするだろう)
佐伯 栞里(正直、彼に復讐されるなら それは構わない)
佐伯 栞里(構わないのだけど・・・)
佐伯 栞里(それは果たして記憶を無くした私で 良いのだろうか?)
〇総合病院
〇病院の廊下
奥平 庸子「お気持ちは決まりましたか?」
〇病院の診察室
佐伯 栞里「ええ。 催眠療法、お受けしようと思います」
奥平 庸子「わかりました」
佐伯 栞里「先生、ひとつ質問が」
奥平 庸子「何ですか」
佐伯 栞里「その記憶の改変って、例えば時間で 解けるようにってできますか?」
奥平 庸子「どうしてそんなことを?」
佐伯 栞里「ちょっと考えちゃって」
佐伯 栞里「記憶を変えた私って、 本当の私なのかなって」
奥平 庸子「根本を変えるわけではありませんからね 佐伯さんは佐伯さんですよ」
佐伯 栞里「でも・・・もし出来るなら10年後、 記憶が解けるように出来ませんか?」
奥平 庸子「オススメはしません。 また同じように発作が起きることも・・・」
佐伯 栞里「先生。私、もう逃げたくないんです。 彼が本当に雄輔なら、」
佐伯 栞里「今のこの私が、彼の復讐を受ける 義務があると思うんです」
奥平 庸子(確かに10年も経てば、トラウマを司る 記憶との繋がりは今よりずっと薄くなる)
奥平 庸子(発症の確率は低いとみていいか)
奥平 庸子(何より彼女自身が自分のトラウマに 立ち向かおうとする意志は尊重すべきだ)
奥平 庸子(その、復讐を受けようとする姿勢は あまり誉められたものではないが)
奥平 庸子(我々は彼女の人生までは干渉できない)
奥平 庸子「わかりました。しかし、彼が 足立雄輔でない可能性もあります」
奥平 庸子「その場合、むやみに記憶を取り戻すのは デメリットしかなくなります」
奥平 庸子「こういうのはいかがでしょう」
奥平 庸子「10年後以降、夫が足立雄輔であると わかった時点で記憶が解ける、と」
佐伯 栞里「わかりました。それで構いません」
奥平 庸子「何かあったらすぐ病院へ来て下さい」
奥平 庸子「私はあなたの主治医であり、 あなたの味方ですから」
佐伯 栞里「ありがとう、先生」
奥平 庸子「では、始めます。 私の目を見て、ゆっくり深呼吸を・・・」
〇黒
佐伯 栞里(さようなら、私の憎しみ)
佐伯 栞里(10年後、きっと迎えに行くから待ってて)
〇総合病院
佐伯 栞里「お世話になりました」
奥平 庸子「ええ、お大事に」
奥平 庸子「また再来週、外来でお待ちしています」
佐伯 栞里「失礼します」
奥平 庸子「・・・」
奥平 庸子(幸せになって下さい、佐伯さん)
奥平 庸子(出来れば10年経っても 催眠が解かれないことを祈ってますよ)
〇黒
〇炎
栄田 駿「僕は憎しみを抱えたまま 彼女と10年を過ごす」
栄田 駿「10年後、僕は自分の憎しみを迎え、 彼女に復讐を果たすんだ」
栄田 栞里「私は自分の中の憎しみを10年間、 記憶の奥に封じ込めた」
栄田 栞里「10年間、無防備でいれば 彼はきっと私に復讐を果たすだろう」
栄田 栞里「目を覚ました後、 私がどうなっていても構わない」
栄田 栞里「それが、彼に対する私の贖罪だ」
栄田 栞里「10年後に私が憎しみを迎えたところで もう時はすでに遅いだろう」
栄田 栞里「それでいいんだ」
雄輔は心の奥に憎しみを
私は記憶の奥に憎しみを隠し
ハリボテの家族を作り上げていった
〇高速道路
それから10年後──
私は駿の追っ手から逃げ延び
探偵さんの運転する車内にいた
〇走行する車内
栄田 栞里「足立 雄輔。 これが駿の、本当の名前」
堀田 晴臣「心当たりが?」
栄田 栞里「え、ええ。高校の・・・同級生です」
堀田 晴臣「差し支えなければ、 ご関係などお伺いしても?」
栄田 栞里「あ、ええ。その、高校の頃の話ですが 彼に告白されたんです」
栄田 栞里「その時は付き合ってる人もいたし、 お断りしちゃいましたけど」
栄田 栞里(あれ? 本当に、そうだっけ?)
〇病院の診察室
奥平 庸子「10年後、夫が足立雄輔であると あなたが確信したとき」
奥平 庸子「あなたの記憶は全て、元通りに戻ります」
〇走行する車内
栄田 栞里(先生!)
栄田 栞里「・・・!」
〇小さい倉庫
〇倉庫の搬入口
〇事務所
〇綺麗なキッチン
〇倉庫の搬入口(トラック無し)
〇学校の校舎
〇地下の部屋
〇白いバスルーム
〇走行する車内
栄田 栞里「・・・」
堀田 晴臣「なるほど。その後彼は? あなたのストーカーになったり?」
栄田 栞里「まさか。ギクシャクはしましたけどね」
栄田 栞里「同じクラスだったので元々お話は してたのですけど」
栄田 栞里「最後半年くらい会話が無いまま 卒業してしまいました」
堀田 晴臣「そうですか。 答えにくいことをありがとうございました」
栄田 栞里「・・・」
浜 伊織「・・・」
〇セルリアンタワー東急ホテル
堀田 晴臣「それでは、また」
栄田 栞里「・・・」
栄田 栞里「ふふ、ふふふ・・・」
〇炎
栄田 栞里「お帰りなさい」
栄田 栞里「お父さん、お母さん」
〇炎
赤坂 浩基「この10年間、彼は復讐をしなかった 何故かな?」
赤坂 千草「さあ? 情にでもほだされたんじゃない?」
赤坂 浩基「まあいい。彼がどう動こうと、 僕らのやることは決まってる」
赤坂 千草「そうね」
「大黒運送の血を引く者に死を!」
栄田 栞里「大黒運送の血を引く者に死を!」
佐伯 栞里「大黒運送の血を引く者たちに死を!」
栄田 栞里「ふふふ・・・」
〇空港の滑走路
〇一戸建て
栄田 栞里「久しぶりの我が家」
栄田 栞里「みんな、元気かしら」
栄田 栞里「ふふ・・・」
〇総合病院
〇病院の診察室
奥平 庸子「私、非番なんですけど」
奥平 庸子「病院まで呼び出して何のご用でしょう?」
堀田 晴臣「すみません。急を要する話でして どうしてもお話を伺いたかった」
奥平 庸子「手短に頼みますよ」
奥平 庸子(全く。理事長が大恩人だからと言うから 出てきてみれば探偵とはね)
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いよいよ、最終抗争!
最後までドキドキが止まらない〜!!
ホッターが最後までキーマンなのが、私的には好印象です。金儲けではないホッター事務所はお値段以上!
繋がって参りました…!!
封印していた憎悪が目を覚ました栞里は本当にその物騒なアイテムたちを使ってしまうのか…!?(夕食のスープが怪しすぎる…)
雄輔が子どもたちのために一歩踏みとどまったように、栞里も…?そうであってほしい😭
怖いですが、クライマックス楽しみです!!
成程、催眠療法とは。で、フラッシュバック…… あかんやんけー😱 トラウマ級の記憶を10年も抑え込んでいて、それが一気に開放されたら……
もう全部忘れてしまえば良かったのに😭 誰も怒らないよ……
お膳立ては完了。残すはクライマックスのみ。待ち遠しいです。