【1話完結】スピカが願いを叶えます!(脚本)
〇通学路
〇黒
???「──は!」
???「──こんばんは!」
〇電車の中
リゲル「ここは・・・?」
スピカ「ようこそ! 転生列車『ネブラマクラ』へ!」
リゲル「え、何・・・?」
スピカ「『ネブラマクラ』では、皆様が未練を断ち切れるように、来世の幸福を確約します!」
スピカ「前世の記憶は必要ですか?」
スピカ「顔はどうしますか? そのままですか? イケメン風ですか?」
スピカ「世界観は? 現代? 異世界? ゲーム世界?」
スピカ「チート能力とかいかがですか?」
リゲル「あ、え・・・じゃあ、オレは──」
スピカ「わっかりましたー! では、そのように手配しまっす! しばし銀河の旅路をご満喫ください!」
〇宇宙空間
スピカ「えーえー 当列車は間もなく『パンタシア』へ 到着します」
〇地球
リゲル「どう見ても地球なんだけど?」
スピカ「では、良き来世を! ご案内は車掌見習いスピカが 担当させていただきました!」
リゲル「聞いてないや」
〇華やかな裏庭
リゲル((これが、オレ・・・!?))
〇電車の中
ケンジ「お疲れさま、スピカ」
スピカ「車掌!」
スピカ「やったー! ありがとうございまっす!」
スピカ「おいし〜! スピカ好みの味でっす!」
ケンジ「得意料理なんだよ これしか作れないけど」
ケンジ「案内役には慣れてきたかな?」
スピカ「はいっ! スピカ、もうひとり立ちできそうでっす!」
ケンジ「お役御免、か」
ケンジ「スピカ、私を来世に導いてくれ」
ケンジ「もう1度会いたい人がいるんだ」
〇街中の道路
〇黒
〇電車の中
〇電車の中
〇電車の中
ケンジ「お願いできるかな?」
スピカ「はい! スピカは車掌のお務めを全うします!」
スピカ「それがスピカのねがいごとですからっ!」
〇黒
ケンジ「ありがとう、スピカ」
〇桜並木
ケンジ「こんにちは、藤村さん」
フジムラ「こんにちは。 あら、どこかでお会いしましたか?」
ケンジ「ええ、以前・・・思い出せませんか?」
フジムラ「ごめんなさいねぇ。 もう年なもんで」
ケンジ「・・・そりゃ、そうか」
〇電車の中
スピカ「なん、で・・・?」
スピカ「なんで気づかないの!? ずっと一緒にいたんでしょ!?」
スピカ「時間が経ったから忘れちゃったの? それじゃあ、スピカは・・・!」
〇公園の入り口
〇黒
???「お母さん、どこ・・・?」
???「お母さん、怖いよぉ・・・!」
〇電車の中
ケンジ「ようこそ、転生列車『ネブラマクラ』へ」
ケンジ「お嬢さんが未練を断ち切れるように 来世の幸福を確約しましょう」
???「・・・いらない」
???「お母さん、会いたい・・・!」
???「会いたいよぉ・・・!」
ケンジ「お母さんの子供として生まれるのは 難しいでしょう」
???「・・・だったら、ここにいる」
???「それなら、お母さんに・・・会える?」
ケンジ「お母さんがここに来れば、会えます」
ケンジ「いえ、必ず来るでしょう」
ケンジ「お嬢さんへの未練があるのですから」
〇電車の中
スピカ「お母さんがここに来るなんて ウソだったんだ・・・」
スピカ「お母さんも、きっと・・・ スピカのこと、忘れてるんだ」
スピカ「スピカは・・・じゃあ、 どうすればいいの・・・?」
スピカ「先代・・・教えてください。 先代ぃぃい・・・!」
〇黒
スピカ((・・・そうだ。お務め、果たさなきゃ))
〇電車の中
〇結婚式場の階段
〇黒
スピカ((みんな、幸せそう・・・))
〇電車の中
〇異世界のオフィス
〇黒
スピカ((願いが叶ったから・・・?))
〇電車の中
〇荒廃した教会
〇黒
スピカ((必要とされているから・・・?))
スピカ((愛されているから・・・?))
〇電車の中
スピカ「でも、スピカは・・・」
チカ「こんばんは」
スピカ「こんばんは。 ここは転生列車『ネブラマクラ』」
スピカ「皆様が未練を断ち切れるように 来世の幸福を確約します」
スピカ「来世はどのようなご自分に なりたいですか?」
チカ「そうね・・・私は、 あの人にもっと長く、自由に生きてほしい」
スピカ「想い人、ですか?」
チカ「ええ。それと・・・ もう1度、あの子に会いたい」
スピカ「お子さん、ですか?」
チカ「ええ」
スピカ「残念ですが、おふたりとまた一緒に なるのは難しいです」
スピカ「同じような家庭を築くことなら──」
チカ「いいのよ。 もう・・・叶っているから」
スピカ「え・・・?」
チカ「遅くなってごめんね──ホノカ」
〇公園の入り口
チカ「ホノカッ!!」
チカ「救急車ッ!! 誰か救急車をッ!!」
チカ「お願いッ!! 目を覚ましてッ!! お願い、お願いだからッ!!」
チカ「もう、私を置いていかないでッ・・・!!」
チカ「お願いだからッ・・・!」
〇電車の中
スピカ「ひ、人違いです・・・スピカは、 『ネブラマクラ』の車掌で・・・」
チカ「間違えるものですか。 大事な・・・大事な、ひとり娘だもの」
チカ「1日だって、忘れたことはないわ」
スピカ「スピカは・・・!」
チカ「スピカ・・・良い名前ね。 誰がつけてくれたの?」
スピカ「車掌・・・先代が」
チカ「そう・・・うふふ。 本当に、いい名前」
チカ「もう1度、ホノカを産んで、 今度こそ、一緒に生きていきたい」
チカ「娘の晴れ姿も見ないで死ねるものですか」
スピカ「──さん」
スピカ「おかあさぁぁぁぁぁぁん!!」
チカ「ありがとう・・・待っていてくれて。 ごめんね、待たせちゃって」
チカ「もう・・・離さないからね」
〇電車の中
スピカ「お母さん、ありがとう。 でも・・・」
チカ「いいのよ。 お務めがあるのでしょう?」
チカ「頑固なところは父親譲りね」
チカ「自分の希望は口にしないのに、 他人の希望は叶えようとする・・・」
チカ「あらあら、だとすると天職ね」
スピカ「お母さん、ごめ──」
チカ「待ってるわ」
チカ「今度は、私が先に行って待ってるわ。 何年でも、何十年でも」
チカ「何度生まれ変わったって、 決して忘れない」
チカ「ホノカはどう?」
チカ「ホノカの気持ちを──ねがいごとを 教えてちょうだい」
スピカ「スピカは──」
〇地球
スピカ「良き来世を! ご案内は車掌スピカが 担当させていただきました!」
〇電車の中
スピカ「・・・さて、と」
ケンジ「スピカ」
スピカ「先代、ですかッ!? どうしてここにッ!?」
ケンジ「まだ心残りがあってね」
ケンジ「行ってきなさい、スピカ」
スピカ「で、でも、スピカは・・・ それに、先代は・・・?」
ケンジ「優しい子だね。 私は・・・大丈夫」
ケンジ「私の願いは、もうじき叶うよ」
ケンジ「スピカとも・・・きっとまた、会える」
ケンジ「憶えていてくれるかな?」
スピカ「・・・はい」
スピカ「スピカ、絶対に忘れまっせん!」
ケンジ「またね──ホノカ」
〇白
〇病室のベッド
〇空
ケンジ・チカ「この子の名前は──」
そうか、そこに繋がるのか……! 列車の中では決して皆が揃わないのに、記憶と願い事から繋がる物語。家族の絆に心打たれました。
来世では、幸せになれますように……。
バラバラだった線が一つにまとまっていき皆が幸せになれる…素敵なお話でした✨
スピカがしっかり車掌業をこなしてるので、はにみつ様のキャラがちゃんと車掌さんに見えてきますね😳 笑
来世の幸せを確約する列車の力が、他人のために頑張ってきた車掌たちに返って、報われる形になっていたのも良かったです
何気に、途中でいろんな「理想の転生」が見れたのも面白かったです 笑
心温まる素敵なお話ですね。2000字という制限の中で、濃厚なストーリーを堪能することができました!
スピカちゃんのキャラクターが生き生きとしていて、とっても可愛いです。
決して説明的ではないのに、すぐに読者が世界観を理解できる導入部分は、同じタップライターとして大変勉強になりました。