読切(脚本)
〇東京全景
東京、日本。
〇おしゃれな大学
某名門大学──
〇化学研究室
ミノリ「実験水槽の溶液に、この薬品αをくわえてっと・・・」
ミノリ「これでよし。あとはデータを記録するだけね」
ミノリ「助手くん。私はお先に昼食に出かけてくるよ」
助手「え? まもなく学長がお見えになりますよ」
ミノリ「あ、そうだった。 私の研究を詳しく知っておきたいからって」
助手「しっかりしてくださいよ、教授」
助手「この前だって、実験用マウスの発注をPCのマウスと間違えるし」
ミノリ「いやいや、私のような超天才で美少女なパーフェクトヒューマンは、ドジッ娘属性くらいあったほうが可愛げがあるってものよ」
学長「お邪魔するよ、ミノリ教授」
ミノリ「学長、お待ちしておりました」
学長「どうかね、研究の進み具合は?」
ミノリ「きわめて順調です」
ミノリ「このままいけば、地球環境問題の全面解決の日も近いでしょう」
学長「おお! それは頼もしい!」
学長「ならば、わが大学10人目のノーベル賞受賞も夢ではありませんな」
ミノリ「お言葉ですが──」
ミノリ「私が尽力するのは、己の名誉のためではありません」
ミノリ「あくまで、人類の明るい未来に貢献するためなのです!!」
学長「おお!! さすがは世界的に高名な天才少女博士! 人格も高潔だ!!」
ミノリ「フッ・・・」
〇雲の上
大衆「ミノリ様!! 地球をお救いくださり、ありがとうございます!!」
大衆「ミノリ様こそ、われら世界人類の救世主です!! 女神様です!!」
ミノリ「ホーホッホ!!」
ミノリ「大衆ども、偉大なあたしをもっと称えなさい!!」
〇化学研究室
ミノリ「ウヒヒ・・・」
ミノリ(つーか、このオヤジ。今あたしのことを〝天才少女博士〟って言ったな)
ミノリ(天才の前に〝超〟を! 少女の前に〝美〟をつけろよ!)
学長「やはり、ミノリ教授をわが大学に招聘したのは英断だった」
ミノリ「私こそ感謝しています」
ミノリ「前にいた東欧の研究機関が、あんなことになってしまったので・・・」
学長「たしか大規模なテロで、施設ごと壊滅したとか」
ミノリ「なんなの、この異音は?」
学長「あそこの水槽からのようでしたが・・・ 何の装置かね?」
ミノリ「私が開発した地球環境のシミュレータです」
学長「ほほう」
ミノリ「あ!! さっき、薬品αと間違えて、うっかり飲みかけのサイダーをくわえたんだ!!」
ミノリ「学長!! 水槽に近づかないで!!」
学長「ん?」
ミノリ「ヤバイッ!! 学長が超有害な水槽の溶液をモロに!!」
助手「心肺停止してます!!」
ミノリ「すぐに救命処置をして!!」
助手「1、2・・1、2・・!」
助手「ダメです!! 救急車を呼びます!!」
ミノリ(面倒なことになったわね・・・)
「ウウッ・・・」
助手「教授!!」
ミノリ「なんじゃこりゃ!?」
助手「まるで映画のゾンビだ。ありえない!!」
ミノリ(ありえない? いや・・・)
ミノリ(以前、知り合いの学者から、ゾンビに関する極秘資料を見せてもらったことがある)
ミノリ(国家によって情報は隠蔽されてるけど、1985年のアメリカで、実際にゾンビ騒ぎがあったらしい)
ミノリ(資料には、ゾンビ発生の原因となった物質トライキシオン244の成分表記も記載されてたけど──)
ミノリ(たしかに、水槽の溶液の成分と共通している部分もある)
ミノリ「ということは、これは本物のゾンビ・・・」
ミノリ(ますますマズイことに・・・)
助手「学長が出て行きました!!」
ミノリ「え!? すぐに捕獲して!!」
〇オフィスの廊下
ミノリ「もう! どこに行ったの!?」
ミノリ「こんな事件が公になったら、あたしの経歴に傷がつくじゃない」
ミノリ「食堂のほうだ!!」
〇学食
ミノリ「まずい!! すでにパニックになってる!!」
ミノリ「あそこだ!!」
ゾンビ学長「ムシャムシャ!!」
ミノリ「遅かった・・大腸までほじくり出されて」
ミノリ「たしかに資料にも、ゾンビは人肉を好み、旺盛な食欲があると書いてあったわね」
ゾンビ学生「グルルルッ・・・!!」
ミノリ「そして犠牲者もゾンビとして蘇った!!」
ミノリ「ゾンビ化の感染!! これも資料どおりだわ!!」
ミノリ「おい、みんな!! すぐにここから離れるんだ!!」
ミノリ「よし、注意喚起の義務は果たした」
ミノリ「私も、いの一番に避難しよう」
〇オフィスの廊下
ミノリ「なにせ私には、世界を救うという大きな使命があるからね」
ミノリ「世界人類のために、何かあったら大変だ」
ミノリ「でも、その前に・・・」
〇化学研究室
ミノリ「念のために、セットはしておこう」
ミノリ「えーと、たしかここに」
ミノリ「ゴソゴソ・・・」
〇講義室
ゾンビ学生「ウウ・・アア・・・!!」
〇渡り廊下
ゾンビ学生「アア・・グルル・・・!!」
〇屋上の入口
〇物置のある屋上
ミノリ「くっそ、逃げそこねた!!」
ミノリ「あっという間に、学内はゾンビでいっぱいだわ」
ミノリ「まあ、しょうがないわね」
ミノリ「山下君、可及的速やかに、大学の屋上まで迎えに来てちょうだい」
ミノリ「理由は後よ! こんな時のために、ふだん高いお金を払ってるんでしょ!」
〇おしゃれな大学
ゾンビ学生「ウガガ・・グルル・・・!!」
〇物置のある屋上
ミノリ「やっと来たわ」
〇空
〇ヘリコプターの中
ミノリ「やれやれ、やっと一息ついた」
山下君「下はゾンビだらけですよ」
山下君「今度は何をしでかしたんですか?」
山下君「前にいた東欧の研究機関も、博士のせいで壊滅したんでしょ」
ミノリ「あれは、ついうっかりミスで・・今回もそうだし」
ミノリ「まあ、あたしってドジっ娘属性だからしようがないよね」
ミノリ「だけど研究者として、この騒動を放っておくわけにはいかないわ」
ミノリ「学内からゾンビが外へ出たら、被害は一気に拡大してしまうもの」
ミノリ「ここは心を鬼にして」
〇化学研究室
〇おしゃれな大学
〇おしゃれな大学
〇ヘリコプターの中
ミノリ「科学の発展とは、尊い犠牲の上に成り立ってるのね」
ミノリ「さ~て、次はどこの研究所にしようかな?」
ミノリ「そうそう、アメリカの巨大企業から誘われてるんだった」
ミノリ「たしか、最先端の核融合技術を持ってるところだったわね」
ミノリ「あたしの研究に取り入れれば、環境問題はすべて解決するわ」
ミノリ「よし、山下君。このまま成田に直行しちゃって!!」
ミノリ「さあ、世界を救うぞー!!」
山下君(早くこいつを止めないと、いつか世界を滅ぼされるぞ)
〇骸骨
おわり♥
博士のイラスト、ミドリのキャラクターにピッタリでかわいいですね。肩に乗ってる子も一緒に驚いた顔になったりして👍。ノーベル賞を取りそうな博士がノーベルが発明したダイナマイトで施設を吹っ飛ばすのも皮肉がきいてますね。
核はダメー!とツッコミたくなるラストですねww
科学者からリスク管理と倫理を除くと、そんな見本のようなダメ主人公ですね!
天才の天災…笑
とてもポジティブな考え方で、見習わないとなぁと感じてしまいました笑
判断力、決断力も有り、世界を救うのか、それとも破壊するのか、続きが見たくなりました!