【求める条件】ラーメン観の合う男!

關紅洋

読切(脚本)

【求める条件】ラーメン観の合う男!

關紅洋

今すぐ読む

【求める条件】ラーメン観の合う男!
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇ラーメン屋のカウンター
  10年前
麦(幼少期)「ねぇ、今の嘘でしょ!?」
麦の父「バーロー、二度も言わせるなよ・・・」
麦の父「今日でこのラーメン屋は店仕舞いだ」
麦(幼少期)「そんな・・・ もうお父ちゃんのラーメン食べられないの?」
麦の父「ごめんな、麦」
麦(幼少期)「うわぁぁん! どうして!どうしてなの!」
麦(幼少期)「お父ちゃん、「ウチのラーメンで皆を腹いっぱいにしたい」って言ってたのに!」
麦の父「してやりたかったさ。 でもこのデカ盛りラーメンがマスコミに出てから、皆変わっちまった・・・」
麦(幼少期)「みんなが残すから・・・?」
麦の父「そうさ、みんな写真だけ撮ってマトモに食いやしねぇ」
麦の父「ゲーム感覚で無理して、吐く奴もいた」
麦の父「だけどそういう連中にも赤字覚悟でラーメンを出してきたんだ・・・」
麦の父「でもよぉ、もうそれも限界みてぇだ」
麦(幼少期)「お父ちゃん! 私いつか、この店を復活させる!」
麦の父「嬉しいねぇ・・・ だけど一人じゃダメだ」
麦(幼少期)「えっ?」
麦の父「ラーメン観の合う男を探せ。 母ちゃんは俺とのラーメン観の違いで出ていったからな」
麦(幼少期)「お母ちゃん・・・」
麦の父「だけど、ラーメン観の合う男とならきっと最強のラーメン屋ができるはずだ!」
麦の父「それまで、待ってるからな!」
麦(幼少期)「がんばる!」

〇商店街
  現在
増名麦「私はラーメン好きを名乗る様々な男と交際していた」
男「おっ!見ろよ! マシマシG系ラーメンだってよ!」
増名麦「あら、美味しそうね。 でもあなた食べ切れるの?」
男「は?当然だろ? めっちゃ腹減ってんだよ!」
増名麦「ふーん、なら良いけど」

〇川沿いの公園
男「うっぷ・・・ もう無理、吐きそう・・・」
増名麦「はぁ・・・」
男「どしたん麦ちゃん? なんか不機嫌じゃね?」
増名麦「当然でしょ?」
男「へ?」
増名麦「まずあなた、なんて注文した?」
男「一番大きいサイズのトッピング全マシマシ」
増名麦「バカじゃないの!? 初見の店でしょ!? 量も何グラムか知らないくせに!」
男「ほ、他の店では食えたんだよ・・・」
増名麦「呆れた・・・ 同じ大ラーメンだって店によって全然違うのよ?」
増名麦「ちなみに今日のは1キロって書いてあったわ」
男「俺、どこの店も500グラム前後かと思ってた・・・」
増名麦「リサーチが足りな過ぎる。 あなたホントにラーメン好きなの?」
男「す、好きだよ! ラーメン食う時はいつも写真撮るし!」
増名麦「そこがまた問題よ! ちんたら写真撮る間に麺が伸びるのよ!」
増名麦「せっかくお店は出来たてのラーメンを提供しているのに・・・ 冒涜だわ!」
増名麦「それにねえ!お店は並んでいるお客さんの分まで計算して茹でてるのよ?」
増名麦「あなたがちんたら食べる分だけ、他のお客さんの麺も伸びるのよ!」
男「だってよぉ・・・ デカ盛りの写真はSNS映えするからさ・・・」
増名麦「ラーメンで自己顕示欲を満たすな! そんな物の為に半分以上残したの?」
男「ほらテレビでもよく大食いとかやるだろ? ああいうの見てるとついやりたくなって・・・」
男「ぐえ!」
増名麦「最低のラーメン観ね! 私、G系ラーメンを遊び感覚で食べる男とは付き合わないから!」
男「そんなぁ・・・」

〇講義室
増名麦「講義前のランチがあの男のせいで台無しだわ・・・」
増名麦「ん・・・この匂い」
盛田油打太「あ、匂いましたか? ごめんなさい・・・」
増名麦「いいえ! この香り、ニンニクが強いG系特有の匂いだけど、香ばしさがある・・・」
増名麦「ラー油トッピングかしら? となると駅前のあのお店?」
盛田油打太「すごい! よく匂いだけでわかったね!」
増名麦「でもあのお店、かなりの人気店よね。 よく午後イチの授業に間に合ったわね」
盛田油打太「以前からラーメン掲示板で調べてて、どうしても食べたかったから朝から並んだんだ」
増名麦「ラーメンの為に朝から並んだの! しかもラーメン掲示板を見て!」
盛田油打太「え?ああ、掲示板は欠かせないよね。 分量とかコールとかの情報も載ってるからね」
増名麦「わかるわぁ〜! お店ごとのローカルルールがあったり、店主の性格まで載ってるのよ!」
増名麦「で、何を注文したのかしら? やっぱり朝から並ぶとお腹空いて、大きいサイズ行っちゃう?」
盛田油打太「いやぁ、初めての店だし、混雑時にロットを乱したくないから並盛りにしたよ」
増名麦「くぅ〜!なんて気の使える男! ロットは一度に茹でられる麺の量!」
増名麦「並んでる人の分まで先に茹でるから、食事に時間をかけると店のオペに支障が出るのよね!」
増名麦「ち、ちなみに写真とかって・・・」
盛田油打太「あぁ〜、今日は撮らずに食べちゃった。 撮ってもホント一瞬だけどね」
増名麦「今のところ、なんて完璧なラーメン観。 だが油断はならないわ・・・」
増名麦「でも、そんなにラーメンが好きだとお腹のお肉とか気にならない?」
盛田油打太「あー、実は結構気にしてて。 最近ジム行き始めたんだ!」
盛田油打太「病気になったらラーメン食べられないし、それにラーメンを悪者にしたくないからね」
増名麦「「ラーメンを悪者にしない」! なんて良い台詞なの! 全ラーメンがきっと惚れるわ!!」
増名麦「いや、ラーメンだけじゃなくて、私も惚れたわ!」
増名麦「あなた、結婚しましょう!」
盛田油打太「えぇ!?」
増名麦「私と・・・作って欲しいの」
盛田油打太「な、何を?」
増名麦「最強のラーメン屋♥」

〇ラーメン屋のカウンター
  5年後
客「やってる?」
「いらっしゃいませ〜!」
客「すげぇ腹減ったから、大盛りくれよ」
盛田油打太「あのー、ウチのラーメンは普通でもかなり多いですが、大丈夫ですか?」
客「うるせぇ!さっさと出しやがれ!」
増名麦「ちょっとあなた! ウチのラーメン食べた事あるの?」
客「ねぇけど、なんか文句あんのか?」
増名麦「ウチの大盛りは麺1キロに野菜が500グラム。 しかも麺は茹でたらもっと増えるわ!」
客「げぇ、そりゃ無理だ」
客「小さいのにするよ」
「はい! かしこまりました!」
  おわり

コメント

  • ラーメン好きが一緒になって、最高のハッピーエンド。きっとお父さんも喜んでいるはず。こういうお店でラーメン食べたいです。

  • 作品から半端なくラーメン愛が伝わります!
    ラーメン好き美少女から告白されたら断われませんね!

  • 自分が一番大事にしていることで価値観が一致する人って、まさに結婚相手にふさわしいと経験からも思います。たとえ些細なことでけんかしてしまっても、自然にもとさやに納まっていけるのは、こういう関係が必要ですよね。ラーメンのようにあったかいお話でした!

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ