廃墟探検隊(脚本)
〇廃工場
夏梨「おっす〜 二人とも久しぶり!」
なずな「・・・久しぶり」
奈緒「久しぶり・・・! 一年ぶり・・・だね」
なずな「うん・・・ ねぇ、本当に行くの?」
夏梨「あったり前じゃん!」
奈緒「今更それ言う? ここまで来ておいて」
なずな「だって、奈緒ちゃんがどうしてもって・・・!」
奈緒「うんうん ありがとね」
夏梨「んじゃ、ま! 一年ぶりの廃墟探検隊の活動始めよっか!」
なずな「廃墟探検隊・・・」
奈緒「懐かしい響き・・・ でもそのまんまだよね」
夏梨「ちょっとちょっと、二人ともアタシが命名した名前が気に入らないの?」
なずな「まぁ・・・わかりやすくて良いんじゃないかな」
夏梨「でしょ!」
なずな「あ、奈緒ちゃん、ビデオカメラ持って来た?」
奈緒「当然! 廃墟探検隊の映像担当がカメラ忘れるわけないでしょ!」
夏梨「頼もしい! 今日も宜しくね!」
〇荒れた倉庫
夏梨「雰囲気あるね〜」
奈緒「廃墟探検隊の情報担当? ここの情報は調べて来た?」
なずな「う、うん。 一応・・・ でもここに来たいって言ったの奈緒ちゃんだよね」
奈緒「私は例の都市伝説をネットでチラッと見ただけだから」
なずな「私が集めた情報も殆どネットの物しかないけど良い?」
奈緒「十分! さぁ教えて。 ここでどんな凄惨な事件があったの?」
夏梨「凄惨な事件!?」
なずな「事件なんてないよ! ここが廃墟になった理由は所有してた会社が倒産したからだし」
奈緒「なーんだ」
なずな「えっとね、この倉庫を所有していたのはとある貿易商なんだけど」
なずな「ある時期を境に社長や何人かの従業員に不幸が続いて、あっという間に倒産したんだって」
「ある時期?」
なずな「社長が取引先から、沈没船から発見されたっていう鏡を買い取ったの」
奈緒「それが例の鏡ってわけね」
夏梨「奈緒、例の都市伝説とやらを教えてよ」
奈緒「夜中にその鏡を覗き込めば会いたい人に会わせてくれるっていう・・・」
なずな「会いたい人・・・」
奈緒「そんなの一人しか居ないよね」
夏梨「・・・」
夏梨「あ!ねえ、アレじゃない?」
〇廃ビルのフロア
なずな「条件は夜に見るだけ?」
奈緒「その筈だけど・・・でも私たち以外何も映らないね」
なずな「一人ずつ鏡の前に立ってみる?」
奈緒「そうしよっか。 じゃあまずは私からね」
奈緒「・・・」
奈緒「・・・何も映らないね・・・」
なずな「じゃあ次は私ね」
なずな「・・・・・・」
なずな「特に変化なし・・・」
夏梨「最後はアタシね!」
夏梨「・・・」
夏梨「やっぱ何も映らないか〜」
なずな「!!」
奈緒「どうしたの? なずな」
なずな「ね、ねぇ、鏡の奥に小さな光が見えない?」
「え?」
奈緒「ほ、本当だ・・・ それにだんだん近づいて──」
なずな「夏梨ちゃ──」
「こらー! 貴様らそこでなにやっとるかー!!」
「きゃー!!!!」
警備員のおじさん「まーた勝手に入り込んだ馬鹿者どもか」
奈緒「なんだ・・・警備員さんか」
警備員のおじさん「ここは私有地じゃぞ。 お前さんらのやってる事は不法侵入だという事はわかっておるか?」
なずな「・・・すみません」
奈緒「・・・ごめんなさい」
警備員のおじさん「まったく・・・若い者は怖いもの知らずで困る」
警備員のおじさん「ここはな、私有地と言っても何年も放ったらかしで老朽化も進んどる」
警備員のおじさん「それにな、ここは暴走族どもの溜まり場なんじゃよ」
「え・・・」
警備員のおじさん「今日はたまたま居ないみたいじゃが、鉢合わせなんかしたらお前さんらみたいな若い女は何されるか・・・」
「・・・」
警備員のおじさん「ほれほれ、人通りの多い場所まで送って行ってやるから、今日は帰りなさい」
奈緒「はーい」
なずな「はい・・・」
警備員のおじさん「ところでお前さんら、最初から二人じゃったか? 三人かと思ったんじゃが・・・ 鏡に映った影を見間違えたかの」
「え?」
〇公園通り
奈緒「・・・」
なずな「・・・」
奈緒「警備員のおじさん・・・三人て言ってたよね」
なずな「うん・・・ ひょっとして夏梨ちゃん、来てたのかな・・・」
奈緒「来てたんなら姿見せなさいよ馬鹿」
なずな「・・・」
奈緒「「廃墟探検隊」なんて作って私たちを巻き込んでおいて、勝手に死んじゃって」
なずな「奈緒ちゃんそんな言い方」
奈緒「わかってるわよ! 仕方なかったんだって。 運が悪かったんだ・・・て・・・」
なずな「若い分、進行も早かったんだろうね・・・」
奈緒「私たち、お葬式にも行けなかった・・・」
なずな「うん。 夏梨ちゃんのお姉さんから連絡貰うまで、亡くなった事すら知らなかったもんね・・・」
なずな「それって、夏梨ちゃんのお姉さんから送られて来たっていう手帳?」
奈緒「うん。 あの子の遺品。 色んな廃墟の事がびっしり書かれてる。 私たちと行った所も、行ってない所も」
なずな「もっと生きたかっただろうね・・・」
奈緒「そりゃそうよ・・・ ぜったい未練たらたらなんだから」
なずな「うん・・・」
奈緒「だから・・・私たちでここに書かれてる廃墟全部まわって、あの子の無念を晴らすわよ」
なずな「うん!」
〇黒背景
夏梨「来てくれてありがとうね二人とも」
夏梨「久しぶりに一緒に探検出来て楽しかったよ」
夏梨「奈緒に手帳を送ってくれたお姉ちゃんにも感謝しないとね」
夏梨「・・・」
夏梨「もっと生きて、廃墟もそれ以外も、あの二人と色んな所に行きたかったな・・・」
夏梨「でももうそれは無理だもんね・・・」
夏梨「あの二人がこれからいろんな廃墟に行ってくれるなら、いつかどこかでコンタクトを取れるかもだよね」
夏梨「また話せると良いなぁ・・・」
夏梨「・・・」
夏梨「それじゃあまた、どこかの廃墟で!」
鏡に取り込まれたのが先で歴史が変わったのかと一瞬勘違いしました。最初の時点で増えていたんですね。
幽霊や非科学的存在が姿を現すとき、周りの者が不自然に思わない、という雰囲気がすごく丁寧に描写されていて面白かったです。
こんにちは!居ないと分かった時はゾクッと、でも最後の3人それぞれその想いを聞いているとまだ三人は探検隊として繋がっているんだね、という気持ちにもなり心温まりました!
まさか主人公が!
また廃墟で会おうね、という言葉が切なかったです。