読切(脚本)
〇教室
倉松「今日からクラスメイトになる中島だ」
頭を下げる沙織
倉松「中島は虐待されてたらしくてな だから口がきけないんだそうだ」
倉松「まぁお前はまだ若いし、きっとすぐ喋れるようになるさ」
倉松「ん、どうした二宮? まだホームルーム中──」
倉松「急に何するんだお前!」
二宮陽子「黙って聞いてりゃベラベラといらんこと喋りやがって」
二宮陽子「口がきけないだけで中島のプライベートを無遠慮に喋んじゃねーよ!」
倉松「なっ、お前先生に向かって失礼過ぎるぞ!」
二宮陽子「センコーだからって調子乗ってんじゃねーよ!」
二宮陽子「行くぞ!」
倉松「おい、お前らどこに行くんだ!」
〇学校の校舎
二宮陽子「あんな息の詰まるところいる必要ねぇよ センコーもクソみてぇだし」
二宮陽子「あぁ、まだ名前を言ってなかったな あたしは陽子 あんたは中島・・・」
二宮陽子「沙織か 沙織って呼んでもいいか?」
コクン
二宮陽子「よろしくな沙織」
二宮陽子「お、笑うとカワイイじゃん 笑ってた方がいいぜ、美人は得だからな」
二宮陽子「さて、これからどうすっか センコー殴っちまった手前教室には戻れねぇよな」
グー
二宮陽子「何だ、もう腹減ったのかよ じゃあ何か食いに行くか」
ぐいっ
二宮陽子「おっ、なんだよ あたしと一緒に行くのが嫌なのか?」
フルフル
二宮陽子「じゃあ何だ・・・あっまだ初対面だもんな 急に連れまわされたら訳わかんねぇか」
ずりっ
二宮陽子「あたしも小さい頃はよく親にボコられててな ほら、これは煙草の痕」
二宮陽子「ひでー親でよ、なんかイラつくとあたしに焼けた煙草押し付けてくるの」
二宮陽子「しかもタチが悪ぃから他の人に見えない腹とか狙うんだ」
二宮陽子「ま、今は殆ど家かえんねーから会うこともないけどな」
ズッ
二宮陽子「おい、お前は脱ごうとしなくていいんだよ」
二宮陽子「親に嫌なことされたってのは分かってんだ わざわざあたしに古傷見せる必要はねぇよ」
コクン
二宮陽子「じゃあ今度こそ飯行くか」
コクコク
二宮陽子「やっと素直になったな」
〇ファミリーレストランの店内
中島沙織「!」
二宮陽子「なんだ、ハンバーガー食うの初めてか?」
コクコク
二宮陽子「そりゃよかったな 上手いだろ」
パクパクパクパク
二宮陽子「そんなに急がなくても誰も取らねぇよ」
中島沙織「んっ」
二宮陽子「もしかして詰まったか? ほら、飲んで流し込め」
ゴクッゴクッ
中島沙織「はぁ」
二宮陽子「ふぅ、驚かせんなよ」
二宮陽子「じゃああたしも食うかな」
ジー
二宮陽子「何だ、これも食いたいのか? 見た目の割に結構食い意地張ってるんだなお前」
二宮陽子「ほら」
パクっ
二宮陽子「はは、子供みたいだな 本当に同い年かよ」
中島沙織「ん・・・」
二宮陽子「何だ、怒ってんか? ますます子供みたいだな」
二宮陽子「あぁ、ゴメン 言い過ぎたよ」
二宮陽子「でもさ、別に悪口じゃねーから」
中島沙織「ん?」
二宮陽子「カワイイと思ったからさ もし妹がいたらこんな感じなのかなーって」
中島沙織「んー」
二宮陽子「ああ、そんな怒んなって」
ナデナデ
中島沙織「っ!?」
二宮陽子「乱暴するわけじゃねーって ほら、落ち着いたか?」
二宮陽子「落ち着いたか、よかった」
二宮陽子「なんかお前が何考えてるか段々分かるようになってきたわ」
中島沙織「!」
二宮陽子「なんだろう 結構似てるのかもな、あたしたち」
ナデナデ
二宮陽子「なんだろう、昔の自分を見てる気になるのかもな」
二宮陽子「なんか困ったことがあったら呼べよ いつでも助けてやっから」
中島沙織「ん!」
二宮陽子「お、今のは嬉しい「ん」だったな」
〇教室
次の日
倉松「昨日俺を殴っといてなんなんだその態度は!?」
二宮陽子「はぁ? あれはお前が悪かっただろ」
倉松「お・ま・えだと? 出てけ! もう二度と学校にくるな!」
二宮陽子「言われなくても出てってやるよ!」
倉松「なんなんだよあいつは・・・ あぁ、もうこんな時間になっちまった 朝のホームルームはここまでな」
倉松「中島、ちょっといいか?」
中島沙織「?」
〇学校脇の道
二宮陽子「ちっ、倉松のヤロー クズの癖に何で教師なんかやってられんだよ」
二宮陽子「あ、また鞄忘れちった」
二宮陽子「はぁ~仕方ない取りに戻るか」
〇説明会場(モニター無し)
多目的教室
倉松「ゴメンな中島、これから授業なのに ま、すぐに終わるから」
ガッ!
倉松「父親にも同じようなことされてたんだろ?」
倉松「大丈夫、声出さなければ俺は乱暴はしないから ほら、スカートも脱いで」
中島沙織「ん・・・」
倉松「なんだ、恥ずかしいのか? いつも同じことされてたんだろ?」
倉松「なっ」
倉松「優しくしてれば付け上がりやがって」
倉松「逃げるな! 俺が脱がしてやる・・・」
〇ファミリーレストランの店内
二宮陽子「なんか困ったことがあったら呼べよ いつでも助けてやっから」
〇説明会場(モニター無し)
中島沙織「たす・・・」
倉松「声出すんじゃねーよっ」
〇学校の廊下
二宮陽子「ん、今なんか・・・」
二宮陽子「気のせいか」
〇説明会場(モニター無し)
倉松「抵抗するなっつってんだろ どうせ誰も来ちゃくれねーよ」
中島沙織「よ・・・う・・・」
倉松「やっとスカートが脱げた 地味な割に派手なの履いてんじゃねーの」
中島沙織「よう・・・こ」
倉松「あー興奮してきた 父親が発情するのも仕方ないな」
中島沙織「陽子!」
倉松「うぉ、ビックリした」
倉松「声出すなっつっただろっ」
中島沙織「んっ!」
「分かるぜ 今の「ん」は悲鳴の「ん」だった」
倉松「な・・・」
二宮陽子「何してんだぁ クズ松」
中島沙織「陽子・・・」
倉松「なんでお前がここに」
二宮陽子「鞄取りに戻ったらよ 聞こえたんだよ、沙織の声が」
倉松「がっ」
二宮陽子「大丈夫か」
中島沙織「ん」
二宮陽子「あぁ、よかった まだ変なことはされてなかったんだな」
中島沙織「ん!」
二宮陽子「はは、待ってろ 服着させてやるから」
中島沙織「よう・・・こ」
二宮陽子「おう、やっと名前呼んでくれたな」
ガバッ
二宮陽子「おぉう」
ガタガタ
二宮陽子「そうだよな、怖かったよな」
中島沙織「ん・・・」
二宮陽子「大丈夫だ、あたしが守ってやるから」
中島沙織「よう・・・こ わた、し・・・誰にも・・・」
二宮陽子「無理に喋らなくていい あたしは分かってるから」
二宮陽子「あたしがずっと一緒にいてやるから な?」
中島沙織「・・・ん!」
二宮陽子「へへっ」
沙織はストレスで声が出なくなる「失声症」ではあるけれど、陽子の優しさで少しずつ回復していきそう。一方の陽子は、妹のような沙織を守って信頼を得ることが自身の傷ついた心のリハビリになっているようで、お互いに救いとなる相手に出会えて本当に良かったと思えるストーリーでした。
彼女達の育った環境はあまりにも悲惨で、教師までが悪魔側にいるなんてこの上ない怒りを覚えました。大事なのは、誰かに助けを求めることができるかですね。2人のこれからが少しづつ良い方向に向かうことを祈ります。
同じ境遇で同じ経験をしているからこそわかることもありますよね。それにしてもこの先生はクズだ!
先生もクズだし親もクズ。胸糞悪く感じてしまいました!