Sea Glass-シーグラス-

危機綺羅

Sea Glass-シーグラス-(脚本)

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危機綺羅

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〇海

〇空

〇空

〇海辺

〇黒背景

〇おしゃれな居間
???「・・・ここ、どこ?」
「──おっと、起こしてしまったかな?」
???「失礼、ちょっと棚の整理をしててね」
???「棚──」
???「綺麗だろ? 自慢のコレクションなんだ」
???「わ、私もあんな風に飾るの?」
???「え?」
???「砕いて、瓶に詰めるの!?」
???「つ、詰めない、詰めない! そんなことしないから!」
???「そうか、ガラスだもんな・・・ 気持ちは良くないよな」
???「すぐ片づけるから! ちょっと待っててくれよ──」
「あー!? しまった!」

〇おしゃれな居間
???「──すまなかった!」
???「なにせ、ガラスの女の子と話すのは 初めてなもので・・・」
???「・・・別に、いい」
???「本当? それならよかった──」
???「人間に捕まったんだもの 砕かれるより酷いことになるんでしょ」
レウニール「・・・僕は”レウニール”だ」
???「なに?」
レウニール「名前だよ。きみにはないのかな?」
クリネ「・・・”クリネ”よ」
レウニール「クリネ、約束するよ 僕はきみを傷つけない」
レウニール「帰りたいなら、海にも連れて行こう 日が暮れてからの方がいいかな」
クリネ「そうやってへりくだって、 なにが目的なの?」
クリネ「腕? それとも脚?  目玉も使えるらしいわね」
レウニール「腕? 脚? なんの話だ?」
クリネ「あなた、私のこと知らないの?」
レウニール「話したことないって、言ったろ? 見るのだって初めてだよ」
クリネ「じゃあ、なんで捕まえたのよ?」
レウニール「捕まえたんじゃない、保護したんだ」
レウニール「漂流者かと思ったんだよ ガラスなのは、担いでから気づいた」
クリネ「・・・嘘に決まってるわ」
レウニール「そんなに疑うなら、 日が暮れるまで別の部屋にいるよ」
レウニール「そうしたら、 クリネに手を出すこともできない」
クリネ「好きにしたら?」
レウニール「そうするよ 僕は突き当りの部屋にいるからさ」
クリネ「鍵は──開いてる?」
クリネ「なんなのよ、もう・・・」

〇空

〇海辺
レウニール「──よし、見つからなかったな」
クリネ「本当になにもしなかった・・・」
レウニール「傷つけないって言ったじゃないか」
クリネ「聞いてた話と全然違う 人間って、もっと野蛮なはずなのに」
レウニール「いったいどんな風に聞いてたんだ?」
クリネ「捕まったら、豚みたいに解体されるって」
レウニール「酷い話だ」
クリネ「──でも、あなたはそうじゃなかった」
クリネ「ありがとう、レウニール 見つけたのがあなたで良かった」
レウニール「どういたしまして、クリネ 再会は期待できそうにないかな?」
クリネ「ええ、二度と会うことはないでしょうね」
レウニール「そうか・・・」
クリネ「もう行くわ 他の人間に見つかりたくないし」
クリネ「さようなら、レウニール」
レウニール「さようなら、クリネ」

〇黒背景

〇空

〇海辺
クリネ「・・・なによ?」
レウニール「これで何度目だっけ?」
クリネ「仕方ないでしょ? 泳ぎは苦手なの! ご先祖様は陸に住んでたんだから」
クリネ「人間から逃げて海に住んでるわけ! だから、仕方ないでしょ!?」
レウニール「その話も何度目だったかな」

〇海辺
クリネ「もういい、邪魔したわね」
クリネ「いつものゴミ拾いに戻ったらいいわ」
レウニール「ああ、そうするよ」
レウニール「──ちょっと待った! ゴミ拾い? そんな風に思ってたのか!?」
クリネ「違うの?」
レウニール「僕が拾ってるのは”ゴミ”じゃない! ”シーグラス”だよ!」
クリネ「単なるガラスでしょ?」
レウニール「綺麗なガラスさ」
クリネ「あら、じゃあ私もシーグラスね」
レウニール「それもそうだ! 上手いこと言うね?」
レウニール「クリネ?」
クリネ「え? なに?」
レウニール「急に黙るから・・・」
クリネ「別に? なんでもないから!」
クリネ「それより──そう! そのシーグラス!」
クリネ「集めて、それからどうするの?」
レウニール「ん? アクセサリーにする人もいるね」
レウニール「僕は瓶に詰めて、飾ることが多いかな」
クリネ「ああ、あの・・・」
レウニール「あ、すまない! クリネには、嫌な物だったな」
クリネ「気にしないで あの時は、気が動転してただけだから」
レウニール「そうなのか? なら、よかった・・・」
クリネ「たくさん飾ってあったわね 一番気に入ってるものとかある?」
レウニール「どうだろ・・・ 一つ一つ違うものだからね」
レウニール「ただ、一番見せたい人はいるかな」
クリネ「私?」
レウニール「違うよ、妻のこと」
クリネ「つ、妻・・・?」
レウニール「昔、事故にあってね 目が見えなくなったんだ」
レウニール「いつか治れば、また・・・」
クリネ「レウニール・・・」
レウニール「──すまない、余計な話だった」
レウニール「今日は帰るよ また明日──で、いいかな?」
クリネ「ええ、きっとまた上手く泳げないから」
クリネ「・・・また明日、レウニール」

〇海沿いの街

〇ヨーロッパの街並み
レウニール「──え?」
レウニール「今の話、詳しく聞かせてくれ!」

〇空

〇海辺
クリネ「おはよう、今日も流されちゃった」
クリネ「どうしたの、暗い顔して?」
レウニール「クリネ、きみのことが噂になってる」
クリネ「ああ、そういうこと・・・」
レウニール「見つかる前に、海へ帰った方が良い」
クリネ「本当にいいの?」
レウニール「友人がいなくなるのは寂しいよ」
クリネ「ううん、そうじゃなくて──」
クリネ「私の体のこと、噂にはなかった?」
レウニール「腕なら義手に、脚なら義足に」
レウニール「きみの体は、なくなった手足の 代わりになるんだね」
クリネ「目玉も、ね」
レウニール「・・・そうだったね」
クリネ「あなたになら、あげてもいいわ」
レウニール「お礼のつもりか? 僕は喜ばないぞ。彼女だって──」
クリネ「私、あなたのことが好きよ」
クリネ「髪の毛でもあげて、 飾ってもらおうと思ってたんだけどね」
レウニール「な、なんの話?」
クリネ「どうせ私は、あなたの一番にはなれないわ」
クリネ「ならせめて、一番のガラスとして いつまでも覚えててほしいの」
レウニール「だからって、なんで目を・・・」
クリネ「この先、あなたが何度も見るものを 考えてみたのよ」
クリネ「コレクション? ううん、違う──」
クリネ「きっとあなたは、 愛する人の顔を見て過ごすの」
クリネ「だから目を使えば、 あなたは何度だって私を思い出すの」
クリネ「ね? 名案でしょ?」
レウニール「・・・ああ、そうだね」
レウニール「きっとずっと、きみを思い出すよ」
クリネ「よかった」

〇黒背景
「どう?」
「綺麗だよ。どのガラスより、ずっと」

〇空

〇海辺
「レウニール! そっちになにかあるの?」
レウニール「いや、なんでもないよ!」
「ならこっちに来て! とっても綺麗よ!」
レウニール「今行く──」
レウニール「クリネ?」

〇海

〇海辺
レウニール「あっ・・・」
「レウニール?」
レウニール「今行くよ!」

〇海

〇水中

コメント

  • 切ない、素敵なお話でした。
    ガラスの少女、想像するだけで綺麗だろうなと思います。奥さんはガラスの瞳になったのかな。
    ずっと気になっていたのですが、もっと早く読めばよかった。

  • 画面も内容もとても美しいストーリーでした。悲しいはずの別れの場面も明るい雰囲気もあって、心温まるお話でした。

  • 切ないけれど幸せ漂う素敵なお話でした。
    流されてくるのがわざとなんだな、というのが途中でわかって、妻というワードに胸がきゅっとしました。
    透明感のあるスチルがとても良かったです。

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