金は生きてるやつに

エドガーベイビー

エピソード1(脚本)

金は生きてるやつに

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〇荒れた倉庫
太郎「おい。皆いるか」

〇荒れた倉庫
康二「全員いるよ」
けいすけ「意外とうまくいったね」
英一「まあ、俺らプロだからな」
太郎「じゃあ今から金を分け合おう」

〇銀行
  俺たちはどこにでもいる銀行強盗団だ。
  小額だけ狙い、通報される前に逃げ、
  この廃墟に集まった。
  プロっぽいやり方だろ?

〇荒れた倉庫
康二「あれ?」
けいすけ「どうしたの?」
康二「分け前の額が合わねえんだ」
けいすけ「そんなわけないじゃん」
英一「ちゃんとあるぞ」
康二「いや、俺ら1人100万円の計算だろ。 でもここには300万しかない。 ほら、やっぱりおかしい」
けいすけ「ほんとだ。 でも計画の時から3人で300万円奪えば1人100万の分け前だって話になったよね」
太郎「考えてみろ! ここには4人いるんだぞ!」
けいすけ「あれ。ほんとだ」
英一「いや、でも俺たち計画の段階では3人だったろ」
康二「実行した時も3人だったよな」
太郎「ここに来た時も3人だった」
けいすけ「でもさ、今って4人いるよね?」
康二「誰か1人増えたって事か?」
英一「馬鹿らしい。 誰か知らねえ奴が混ざってんなら普通気がつくだろうがよ!」

〇荒れた倉庫
けいすけ「でも実際誰も気がついてないじゃん」
英一「う、うるせえ。 確かにそうだけどよ。 普通そんな事あり得ねえだろ。 全員ボケちまったんじゃねえか」

〇荒れた倉庫
康二「皆落ち着け! 確かに変だが、実際その変な事が起こってるんだよ!」
太郎「そうだ。 一旦冷静になろう」
英一「冷静って言ってもよ、 こんなバカな事が起こってんのに冷静になれるかよ。狐か狸に化かされてる気分だぜ」

〇荒れた倉庫
けいすけ「ねえ、ほんとにそうかもしれないよ」
英一「どういう事だよ」
けいすけ「だから、もしかしたらここに幽霊が紛れてるのかもしれないよ。 ほら、怪談とかでもよく幽霊が混ざってたって話があるでしょ」
英一「おいおい。 あんまり怖い話すんなよ。 俺そういうの苦手なんだよ」
康二「まあでも、こんな変な状況なんだ。 あり得ない話じゃないな」
太郎「もしかしたらこの廃墟が曰く付きの場所で、霊が紛れ込んでるかもしれねえって話だな」
英一「だからやめてくれよ〜」
太郎「まあ、紛れてるやつの正体が霊かどうかなんて今はそんなことは問題じゃない。 分け前をどうするかだ」
康二「だな。 とっとと金だけ分けて早いとこズラかろうぜ」
けいすけ「そうだよ。あんまりこんなとこ長居したくないよ」
太郎「ただ、そのためには結局幽霊が誰か見極めなきゃならねえ。 金が必要なのは生きてるやつだけだ」

〇荒れた倉庫
  議論してるうちに、すっかり夜も更けてきた。
  早くここを出ないと警察もやってくるかもしれない。

〇荒れた倉庫
太郎「まず、俺はこのグループのリーダーだ。 俺が幽霊なら誰が仕切ってきたんだ。 つまり俺は人間だ」
けいすけ「それなら僕は車の運転係だよ。 ここまで来るのに僕が運転して来たでしょ」
康二「それなら俺は金の管理やってたんだぞ。 現にここまで奪った金隠し持ってたじゃねえかよ」
英一「そもそも俺に関しては実行犯だぞ。 俺が幽霊ならこの強盗自体成立してねえだろうがよ!」
けいすけ(・・・!)

〇荒れた倉庫
  こうして、誰が幽霊なのかも分からないまま、時間が過ぎていった。
康二「くそ! なにがどうなってんだよ!」
英一「大体、ここが曰く付きの場所かどうかも分かんねえのに幽霊がどうとかバカらしくなって来たよ」
けいすけ「いや、たぶんここ事件か何かあったよ」
英一「え。何か証拠でもあんのかよ」
けいすけ「うん。ほら、あそこ見て」

〇地下室(血の跡あり)
  けいすけが指さした先には血痕がついた壁と弾丸のようなものがめり込んだ形跡があった

〇荒れた倉庫
英一「おい。嘘だろなんだよアレ」
けいすけ「血だね。 それと弾丸がめり込んだ跡がある。昔発泡事件があったんじゃないかな。事件になってるかどうかは分かんないけど」
康二「おい。もういい加減にしてくれ。 俺らが何したって言うんだ」
けいすけ「強盗でしょ」
英一「けいすけ、お前なんでそんなに冷静でいられるんだよ」
けいすけ「僕ね、分かっちゃったんだよ」
英一「分かったって、幽霊の正体か?」
けいすけ「うん。さっきの話、ずっと考えてたんだ。 そしたらさ、1人だけおかしい人がいたんだ」
康二「誰だ」
けいすけ「よく思い出してよ。 運転手や実行犯、みんな具体的な役割を言ってたでしょ。1人を除いて」
康二「!!」
けいすけ「だよね。リーダー」

〇荒れた倉庫
太郎「バレたか」
けいすけ「そもそも僕らのグループにリーダーなんていないし、すぐに分かったよ」
康二「お前、ほんとに幽霊なのか」
太郎「まあ、どうでもいいだろそんな事」
英一「いいわけねえだろうが!」
  怒った英一は太郎に殴りかかろうとした
太郎「おっと」
  太郎は咄嗟にナイフを取り出し英一を刺した
英一「!!!!」
  だが、英一からは血の一滴も垂れていない
英一「どうして・・・」
太郎「びっくりしたか?」
康二「な、なにがどうなってるんだ」
太郎「けいすけ、お前はもう気がついてるんじゃないのか」
けいすけ「うん。太郎は、幽霊じゃない」
康二「どういうことだ」
けいすけ「幽霊は僕ら3人なんだよね」
太郎「ああ」

〇地下室(血の跡あり)
  太郎は静かに事の真相を語り始めた。
  太郎『昔、強盗がここに隠れ、分け前を決めていた。そこに警察が押し入り・・・』
  けいすけ『撃たれたんだね』
  英一『その強盗が、俺たちって話か』
太郎「お前達も悪いんだぞ。散々暴れてたしな。 けいすけが見つけた壁についた血痕、あれはお前達のだ。 もう5年も昔の話だがな」
太郎「俺の職業は霊媒師だ。 毎晩お前らがここで『俺たちの金だ』って騒ぐから俺が依頼されてやってきたんだ。 なあ、もういいだろ」
  3人は全てを悟り小さく頷き、消えていった
太郎「もしもし、完了しました。 はい。では、ギャラとしてこの300万円は頂きます。ええ、あいつらも納得するでしょ」
太郎「金は生きてるやつが持つべきですから」
  終わり

コメント

  • あり得ないことからのストーリー展開と大どんでん返し。ぐいぐいと引き付けられる物語ですね。ラストの帰結もお見事なものですね。

  • お金が絡むと人間が変わる、悲しいけど事実ですよね。タイトルからイメージにつながり、ストーリーの展開も上手にされていて楽しかったです。

  • 幽霊はだれなんだと名探偵にでもなったような気持ちで読み進めましたが、さすが予想外の展開で一本とられた感じです。太郎さんとんだ悪党かと思ったら!!そういうことでしたか。。見事な結末でした。

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