千年寝た勇者と千年後の旅物語

にーな

エピソード2(脚本)

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〇薄暗い谷底
  パァアア・・・・・・
???「・・・・・・・・・・・・ぅ」
  目覚めると同時に酷い目眩に襲われる。
  そのまま膝をつけば、硬い感触がした。其に周りを観察する。
  古い・・・・・・朽ちた祭壇?
???「見覚えはあるが・・・・・・こんな廃墟に来た覚えはねぇな」
  祭壇は崩れかけ、苔が生えていた。
  何処だよ、此処・・・・・・
少年「うわっ、ビックリした」
???「あ?」
  声に視線を向けると、少年が立っている。
  その格好は変わった物だった。
  何処の国のだ・・・・・・?
少年「あーーー!」
???「!?」
  突然叫ぶ少年に思わず硬直する。
少年「あんたココにあった指輪盗んだの!?」
???「指輪?そんな所に指輪なんてあったのかよ」
  少年が指したのは、例の崩れ掛けた祭壇。
少年「あったんだよ、あんたの瞳と同じ色の金色の石が付いた・・・・・・って、それ!それだよ!」
???「それぇ?」
  次に少年が指したのは、俺が首から下げてる指輪。指輪の穴に紐を通した簡単なペンダントだ。
???「・・・・・・此れは俺んのだよ」
少年「えぇっ嘘だよ!だって、ココにずっと置いてあるの毎日見たんだし!」
???「うるせぇ・・・・・・こんな所に置いてたら、フツー誰か盗るだろ」
少年「盗れないからあったんだよ。指輪は誰にも触れない様になってたんだし」
???「ああ、結界魔法でも掛けてあったんだろ」
  試しに祭壇に解析魔法を向ければ、やっぱり結界魔法の痕跡があった。
少年「魔法って、お伽噺の?」
???「・・・・・・・・・・・・は?」
  お伽噺?
少年「あれ、何で誰も触れなかったのに、お兄さんは持てるんだ?」
???「いや、だからフツーに魔法で・・・・・・」
少年「魔法って女神?様が与えたってヤツでしょ?やっぱりお伽噺じゃん」
  女神の話がお伽噺?そんな筈はない。
  だって、俺は・・・・・・
少年「もしかして、父さんが言ってたのお兄さんかな?」
???「・・・・・・あ?」
少年「父さんがいつかココに指輪の代わりに誰かが居るから、その誰かは大切にしないといけないって」
???「指輪の代わりに・・・・・・?」
少年「そう。だとしたら大切にしないとだよなぁ」
  ・・・・・・あの日、俺はアイツによって封じられた。もしかして、その結果指輪に・・・・・・?
少年「ね、お兄さん名前は?」
???「名前だぁ?」
少年「そ。俺はブラン」
???「ブランね・・・・・・じゃあ、シロだな」
少年「え?何でシロ?てか、名前は!?」
???「キャンキャンうるせぇ・・・・・・クロ、とでも呼べ」
少年「・・・・・・それって、俺がシロだからとか言わないよね!?」
  騒ぐシロを放置して、俺は廃墟の外へ向かう。
???「・・・・・・森?」
少年「?森だけど?」
  廃墟の外は鬱蒼と木々が茂る森。
  俺の後ろから出てきたシロがそのまま横を抜けて前に出た。
少年「近くに俺達の村があるんだ。良かったら来なよ」
???「・・・・・・警戒心ねぇな」
少年「?」
  とは言え、まだ此処が何処かも分からねぇ。
  取り敢えず村とやらに行って、場所の確認だけでもしねぇとな。
  先を歩くシロの後をついて行く。

〇西洋の街並み
  先を歩くシロの後をついて行く。
シロ「此処が俺達の村。シロト村」
クロ「・・・・・・シロト?」
シロ「?」

〇教会の中
???「『兄さん!俺も兄さんの役に立ちたいんだ!』」

〇西洋の街並み
  ・・・・・・まさか、な。
ニール「ブラン?何してるんだ?」
シロ「あ、ニール!」
  その時・・・・・・ニール?が歩み寄って来た。
シロ「やっほ、ニール」
ニール「何時ものは終わった・・・・・・誰?」
シロ「祭壇で会った」
ニール「あの祭壇で?怪しい人じゃないの?」
  ニール?はジトーとした目で俺を見てくる。
シロ「多分父さんの言ってた人」
ニール「セフィドさんが?・・・・・・ああ、アレ冗談じゃなかったんだ」
シロ「そうみたい。あ、紹介するよクロ」
  そう言うとシロは彼女の隣に並んだ。
シロ「彼女はニール。俺の幼馴染みなんだ」
ニール「・・・・・・ハジメマシテ」
クロ「クロとでも呼んでくれ、ニール嬢」
「!」
  俺の言葉に二人は顔を見合わせる。
ニール「よく僕が女って分かったね」
  その言葉に今度は俺がニールを見詰めた。
クロ「・・・・・・どう見ても女だろ」
  顔的にも体格的にも女に見えるけど。
ニール「・・・・・・ふぅん。普通は僕の事、男だと思うのに」
クロ「?何で?」
ニール「恰好とか・・・・・・」
クロ「?」
  ・・・・・・そもそも服が見覚えねぇヤツだし。
ニール「変わってるね、アンタ。恰好も含めて」
クロ「だろうな」
ニール「まぁ、新入りなら村長の所に顔を出して。それだけはしとかないと」
シロ「だね。こっち」
  シロが俺の手を引いて歩き出すと、ニールもついて来る。
クロ「・・・・・・普通に受け入れすぎじゃね?」
ニール「この村は外から移住してきた人が多いからね」
クロ「・・・・・・ふぅん」
  ・・・・・・俺も外から移住しに来た様に見えたんかね。

〇結婚式場のテラス
シロ「ココが村長の家だよ」
ヴァイス「ブラン?帰っていたのかい」
シロ「ただいま!叔父さん」
  着くと同時に家の中から男が出て来た。
ヴァイス「そちらは?」
シロ「祭壇に居た」
ヴァイス「祭壇?・・・・・・例の?」
シロ「多分」
ヴァイス「そっか。じゃあ、お持て成ししないとね」
  ・・・・・・何か、シロと村長の周りにフワフワとしたものが見えんだけど。
ヴァイス「初めまして。このシロト村の村長をしている、ヴァイスと言います」
クロ「クロ、と呼んでくれ」
  俺の言葉に一瞬ヴァイスという男はおや?という顔をする。
クロ「何か?」
ヴァイス「ああ、いえ。さて、一先ず中へ・・・・・・」
ニール「村長。僕、空き家が無いか見てきます」
ヴァイス「ありがとう、ニール」
  その言葉を受けてニールは何処かに歩いて行った。
ヴァイス「さ、クロさんは中へ」
  招かれ、俺とシロは家の中に入る。

〇綺麗なダイニング
クロ「・・・・・・・・・・・・」
  シロを基調とした壁。
  木材じゃないな・・・・・・石、か?
ヴァイス「お茶は飲まれますか?」
クロ「・・・・・・どうも」
  テーブルに置かれたお茶。一先ず椅子に座り、其れを口にした。
シロ「へぇ、クロってそのお茶飲めるんだ」
クロ「ん?」
シロ「だって、そのお茶は叔父さんが趣味で作ってるヤツだし」
ヴァイス「ブランはジュースでいいかな」
シロ「うん」
  隣に座ったシロの前に出された紫の飲み物。何だ、それ・・・・・・飲んで大丈夫なものなのか?
ヴァイス「ブランが飲んでいるのは葡萄の果汁を使った甘い、ジュースという飲み物なんですよ?」
クロ「・・・・・・じゅーす?」
ヴァイス「やはり、貴方が伝えられていた指輪の方なんですね」
  指輪の方?ニコリと微笑むヴァイス。
ヴァイス「まぁ、まだ戸惑う事は多いでしょう。この村でゆっくり“今”を知って行けばいいのです」
クロ「今を・・・・・・知っていく・・・・・・?」
シロ「えっと、クロも村に住むって事でいいんだよね?」
ヴァイス「そうなるね」
  ・・・・・・何時の間にか俺がこの村に住む事が決まってる。
  まぁ、どうせ俺には行く場所なんざねぇんだろうけど。其れなら真っ白な所から始めんのもいいかもな。
  ピンポーン
  聞こえた音に一瞬警戒した。
シロ「あ、多分ニールだ」
  玄関へと駆けて行くシロにその警戒も解く。ノックの代わりみたいなもんか。
ヴァイス「・・・・・・・・・・・・さて、はっきり言いましょう」
クロ「?」
ヴァイス「ここは貴方が生きていた時代より・・・・・・千年程経っています」
クロ「は?」
  何、言ってんだ・・・・・・?
ヴァイス「貴方の本当の名前は・・・・・・───」
  ・・・・・・成程。俺の事は知ってる・・・・・・いや、伝えられてる、か。
クロ「それを伝えたのは・・・・・・──シロト」
ヴァイス「はい」
  ・・・・・・チッ。俺の事は要らねぇんじゃなかったのかよ。
ヴァイス「・・・・・・貴方が彼を恨む理由は分かっています」
ヴァイス「その上で、彼が作ったこの村に住んで下さい。贖罪としてサポートさせて頂きます」
クロ「・・・・・・本当に千年も経ってるのか」
ヴァイス「ええ」
クロ「・・・・・・・・・・・・世話になる」
ヴァイス「はい」
シロ「叔父さーん。ニールが空き家見つけたってー」
ヴァイス「ありがとう。さぁ、参りましょう」
クロ「・・・・・・ああ」
  こうして、俺は千年ぶりに目覚め・・・・・・シロトが作った村に住む事になった。
  To be continued.

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