千年寝た勇者と千年後の旅物語

にーな

エピソード3(脚本)

千年寝た勇者と千年後の旅物語

にーな

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〇西洋の街並み
  俺がシロト村に住み着いてから早一ヶ月。
「クロさん、こっちお願い」
クロ「ああ」
「この荷物を向こう側まで運んでくれないか?」
クロ「分かった・・・・・・風魔法、と」
  この一ヶ月で俺は今の時代について沢山の事を知っていった。
  先ずは魔法。俺が普通に使っていた魔法は千年の間に衰退したらしい。かわりに科学が発展し、魔法は特に必要ない。
「クロさんに頼むと仕事が早くていいねぇ」
クロ「そりゃどうも」
  まぁ、俺はこの村はそこまで科学的な物が無いし、俺の魔法は重宝されている。
「クロ~ちょっとコイツ解析してくれないか」
クロ「ちょっと待ってろ」
クロ「・・・・・・コレ、食えるぞ」
「よっしゃ」
  お陰で村の手伝いだけで、生活していける位には稼げていた。
シロ「クロってば、人気者だねぇ」
ニール「魔法は便利だからね。すっかり馴染んじゃってる」
クロ「お前等は何してんだ」
「学校帰り」
  今の時代は教育が行き通っていて、未成年は学校に通えるらしい。因みに18歳で成人だから、俺はギリギリ通えない。
シロ「俺も何か手伝おうか?」
ニール「シロ。村長に顔出してから」
  シロ、というあだ名はすっかり村に浸透してしまったらしい。
  そのシロは幼い頃に両親を亡くし、叔父である村長の元に世話になっている身だそうだ。
  ニールは赤ん坊の頃に母と移住してきたが、母は病死してシロの隣に一人で住んでいる。
  本来アクアと名乗るべきだが、どうせ信じて貰えないとニールの方を名乗ってるんだと。
クロ「・・・・・・平和だな」
  まさか、こんな静かな日々を過ごせるとはな。

〇大樹の下
クロ「『なぁ、戦いが終わったら遠くに行かないか?』」
「『『遠くに?』』」
クロ「『そ。で、静かに穏やかに暮らすんだ・・・・・・皆で』」

〇西洋の街並み
クロ「・・・・・・・・・・・・」
シロ「そう言えば・・・・・・クロ、知ってる?」
クロ「知らねぇ」
ニール「シロは何の事かちゃんと言って。クロもテキトーに返事しないでよ」
  俺達のやり取りにニールは溜め息を吐いた。
シロ「えっと、最近変な獣が現れるんだって」
クロ「変な獣・・・・・・?」
ニール「何でも獣にしては異様な姿で、異様に狂暴で強いんだってさ」
シロ「で、最近あちこちで被害が出てるから気をつけろって」
  一瞬頭を過ったのは・・・・・・魔物。
  もし、俺が目覚めた理由が封印魔法の効果切れでないとしたら・・・・・・
シロ「ほら、クロの家は村外れだから」
ニール「一応気を付けてって話」
  俺が用意して貰った家は、彼等の言う通り村外れだ。住まわせて貰ってるし、村から離れてる訳じゃねぇし不便はねぇ。
クロ「おー、一応聞いとくわ」
ニール「一応って」
シロ「まぁ、そういう事だから」
  家へと向かう二人の背中を見送る。
クロ「絶対鈍ってるよな・・・・・・」
  今の俺に・・・・・・戦う力はあるのか

〇古い図書室
  其れから俺は、この村で唯一外の情報が入る図書館へと通うようになった。
  此処にあるディスプレイから情報を得られる様になっている。
クロ「各国で異常な獣の被害が出始めてる・・・・・・か」
  中には撮影に成功したものもあり、遠くかつブレていて見えづらいが・・・・・・狼の様な姿をしているモノが写し出されていた。
クロ「・・・・・・まさか」
  だとしても、何故だ?
  其れを可能に出来る彼奴は、俺が・・・・・・
「クロ!!」
クロ「!」
  勢い良く図書館に来た二人に驚いて振り返る。
クロ「おい、一応此処は静かに・・・・・・」
シロ「大変なんだクロ!」
ニール「例の獣が出たんだ!!」
  例の獣が出た、だと?
クロ「何処だ・・・・・・その獣が出たのは何処だ!」
シロ「俺とクロが初めて会った森・・・・・・ってクロ!?」
  シロが言い切る前に、俺は図書館を飛び出した。

〇西洋の街並み
  もしも、本当に例の獣が魔物だとしたら・・・・・・封印が解けた事になる。
  とはいえ、この封印は効果切れで解ける様なものじゃねぇし、もし解かれたんなら俺が分からない筈がない。
「うわぁあああっ!」

〇山の中
  悲鳴を頼りに駆け付けると、前に解析を頼んで来たフレルという男が熊の様な姿をした異形に襲われていた。
クロ「火魔法・火炎弾」
  幾つもの火の玉が異形に直撃する。
  其に隙が出来た内にフレルの元に駆け付け、彼を抱えて救出した。
「クロ!!」
クロ「怪我してるらしいから、手当て頼む」
シロ「え、う、うん・・・・・・」
  彼を駆け付けた二人に託し、異形へと向き直る。
クロ「まさか・・・・・・魔物なのか・・・・・・?」
「え?」
  《違う。アレは魔物では無い》
クロ「・・・・・・よく分からねぇし、取り敢えず魔獣って事にしとくか」
  問題は・・・・・・俺が倒せるかどうか。
  俺が昔、武器として使っていた黒刀は目覚めた時には無かったしな・・・・・・魔法だけで倒せるか?
  基本的に俺、前衛で特攻組だったから・・・・・・
クロ「魔法は自信ねぇんだけどな・・・・・・水魔法・氷花!」
  幾つもの花弁の様に氷が魔獣へと迫った。
「『ギャウッ』」
クロ「は?」
  魔獣はシュン・・・・・・という音を立てて消える。その呆気の無さに、つい声が出た。
シロ「クロ!!」
  が、シロの悲痛な呼び掛けに、直ぐに彼等の元に駆け付ける。
クロ「どうした!?」
シロ「フレルさんが、フレルさんの腕が!」
  見ると、フレルは右腕に魔獣の爪を受けていたらしく、ニールが必死に止血していた。
  その右腕・・・・・・傷口を中心に、手首から肩まで黒い文様が浮かび上がっている。
クロ「侵食かよ・・・・・・!?」
「侵食?」
クロ「早く処置しねぇと、さっきの魔獣の仲間入りだ!」
シロ「えっ」
ニール「そんな・・・・・・」
  首からペンダントを外し、指輪を傷口に当てた。
  浄化魔法が一番苦手だってのに!
クロ「祝福を与えし女神アルテリスよ 我が声聞き届けられたなら 彼の者に清浄なる光を与え給え」
  呪文を唱えると、指輪に光が灯る。その光が少しずつ広がり、文様全てを覆った。
クロ「・・・・・・・・・・・・」
シロ「っクロ、頑張れ!」
クロ「!」
  シロが俺の手に自分の手を重ねる。
  すると、光が強まった。
  って、事はシロが・・・・・・
クロ「・・・・・・ふぅ」
「・・・・・・すごい」
  何とか浄化魔法で文様は消える。
  苦手な魔法の所為で疲労しつつも回復魔法でついでに傷の治癒もした。
クロ「取り敢えず大丈夫だとは思うけど、暫くは安静にして様子見っつー所だな」
シロ「クロって、本当に何者・・・・・・!?」
ニール「シロ。それ、聞いちゃ駄目」
  一応移住して来た中には事情がある者も居るから、この村では詮索しないというのがルールになっている。
  ニールは其れを注意してんだろう。
クロ「・・・・・・シロ、ニール。フレルを頼む」
「え?」
  俺は二人に背を向け、森の中に入った。

〇森の中
クロ「・・・・・・・・・・・・」
  俺が目覚めたこの森には、基本的に人は入って来ねぇ。
  唯一シロが日課として指輪に確認に来ていた程度で、其れも今はやってないらしい。だから、森の変化に気付く事は滅多に無い。
クロ「森に現れたっつーから、侵食されてんのかと思ったが・・・・・・」
  この森に侵食された気配は無い。
  つまり、あの魔獣はこの地で生まれた訳じゃねぇし、この森は素通りしてきたっつー事になる。
  森の手前まではフレルみたいに山菜やらなんやらを採りに来るから、其処で魔獣は発見されたんだろう。

〇薄暗い谷底
クロ「・・・・・・どうなってる」
  気付くとシロと出会った祭壇に来ていた。
  苔だらけの祭壇を撫でる。
クロ「・・・・・・!」
  あの時は気付かなかったが、祭壇には字が彫られていた。
クロ「・・・・・・『もし貴方が目覚めたなら、謝らなければなりません。どうか、この地で──』」
  ・・・・・・恐らく書いたのはシロト。だが、内容を考えたのは・・・・・・
  《裏切っておいて、随分な言葉だな》
  頭に響く声に溜息を吐く。
クロ「起きているなら、どういう事か説明しろ。あの魔物擬きな魔獣は何だ」
  《恐らく、新たな時代の厄災が齎したもの》
クロ「・・・・・・成程な・・・・・・何時になったら、俺は平穏に暮らせんのかね」
  《簡単な話だ。無視すればいい》
クロ「それが出来りゃ、お前は此処に居ねぇ」
  《だろうな。其れが気に入った所でもある。何よりシロトの子孫ならばお前を巻き込んでいくだろう》
クロ「確かに」
  ・・・・・・仕方ねぇ。兎に角今は情報と準備をしねぇとな。
  To be continued.

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