ブフとチーズと、ドキドキ、オユン(脚本)
〇学校脇の道
オユン「アタイの名前はオユン! モンゴルから来たブフ(モンゴル相撲)が好きな留学生!」
オユン「相撲の本場の日本で、相撲を極めると共に実家のヤギ乳チーズを広めるために日本にきたの!」
オユン「ってやばい!留学初日から遅刻しちゃう!」
〇講義室
オユン「間に合った!今日からここが私の大学かぁ〜」
オユン「相撲ファンの子とかいるかな? 推し力士トークとかした〜い!!」
オユン「あっ、あの子達も同級生かな? おーい!相撲好──」
乳澤しぼり「みんな、おはよ〜」
女子大生B「見て! 女子大生プロレスラーの乳澤しぼりちゃんじゃない!」
女子大生A「今日もすっごい可愛いよね〜! さすが乳澤乳業の御令嬢!」
オユン(しぼり?誰だろう?)
女子大生A「しぼりちゃんおはよう〜! 久々の登校だね!」
乳澤しぼり「ええ・・・ あら?貴女見ない顔ね。 私が試合で休んでた間に来たのかしら?」
オユン「アタイの名前はオユン! 出身はモンゴル! あんた相撲は好き?」
女子大生A「ちょっと! しぼりちゃんに向かってあんた呼ばわりなんて!」
女子大生B「しかも相撲!? しぼりちゃんはプロレスラーよ!」
乳澤しぼり「別にいいわ。 それより貴女、モンゴルで相撲?ブフの選手か何か?」
オユン「ブフを知っているの!?」
乳澤しぼり「まぁ一応格闘家として、知識くらいわね」
乳澤しぼり「あ、そうそう。 そんな話をしに久々に大学に来たわけじゃないのよ」
乳澤しぼり「今夜うちで新製品のチーズケーキの試食会があるの。 若い女子が売り込みたくて、みんなの意見も聞きたいの」
女子大生B「行く行く!」
女子大生A「ケーキ楽しみ!」
オユン「チーズケーキ?」
乳澤しぼり「そうよ。 我が乳澤乳業の新製品よ。最上級のチーズを使っているの」
オユン「最上級のチーズ? それはウチのチーズよ!」
乳澤しぼり「はぁ? 最高のチーズはウチのチーズよ?」
女子大生A「そーよそーよ! 乳澤乳業のチーズは世界中で有名なのよ!」
女子大生B「それに乳澤乳業の牛乳はとても高品質! 乳澤ブランドは伊達じゃないわ!」
オユン「うるせい! ウチの実家のヤギのチーズが世界一なのよ!」
乳澤しぼり「そんなに言うなら貴女、そのチーズを試食会に持ってきなさい!」
こうしてアタイは留学初日からバトルを挑まれたのであった!!
〇宮殿の門
放課後
アタイはしぼりの家にやってきた。
オユン「で、デケェ・・・・・・ 実家のゲルと大違いだ・・・・・・」
〇大広間
オユン「たのもう!」
乳澤しぼり「あら、逃げずに来たのね」
女子大生A「オユンちゃん、これすごく美味しいよ!」
女子大生B「オユンちゃんも早速食べてみたら?」
オユン(それもそうね。 食べてみるか・・・)
パクッ
オユン「う、ウマいッ!! なにこれ!?」
乳澤しぼり「アハハハハ! 今、確かに「うまい」と言ったわね!」
オユン(し、しまった! モンゴルにいた頃はこんな洒落た物食べた事ないから!)
乳澤しぼり「これは私の不戦勝でいいかしら?」
オユン「ま、待って! アタイのヤギ乳チーズも食べなさいよ!」
乳澤しぼり「え?これをそのまま? こんな臭いのイヤよ・・・」
オユン「そ、そんなぁ・・・」
乳澤しぼり「第一この香りは「ヤバイ」香りよ! 高級食材で五感を鍛えた私には食べなくてもわかるわ!」
オユン「そんなの食べなくてみなきゃ、わからないでしょ!」
乳澤しぼり「イヤったらイヤ!」
オユン「じゃあ──」
オユン「ブフで勝負しろ! そして負けたらアタイのチーズを食え!」
女子大生B「大学でも言ったけど、しぼりちゃんはプロレスラーで──」
乳澤しぼり「受けて立とうじゃないの」
女子大生A「えぇっ!?」
乳澤しぼり「ついてきなさい。 ウチの地下リングで決着をつけるわよ」
〇格闘技リング
オユン「しぼりの家の地下にこんなリングが──」
〇格闘技リング
女子大生A「赤コーナー、乳澤しお〜り〜!!」
女子大生A「対する青コーナー、挑戦者! オユ〜ン!!」
オユン「えっ、ブフするんじゃ──」
女子大生B「いいからリングインして!」
オユン「えぇ・・・」
オユン「ちょっとしぼり! これじゃまるでプロレスじゃない!」
乳澤しぼり「ブフもプロレスも結構似てると思うけど? ただ、ブフのルールは──」
「ひじ・ひざ・頭・背中・お尻いずれかが先に地面に着いた方が負けとなるッ!」
女子大生A「試合開始の鐘と共に、両者勢いよく掴みあった!」
女子大生A「先に相手を持ち上げたのはオユン選手!」
乳澤しぼり「な、なんてパワーなの!?」
オユン「暴れるヤギを捕まえるにはこのくらいパワーがないと!」
女子大生A「このまま地面に叩きつけられれば、早くもしぼり選手の負けだが!?」
乳澤しぼり「フンッ!」
オユン「逃した!?」
女子大生A「おーっと、しぼり選手軽々と脱出!」
女子大生B「身体を反らして後ろに体重をかけたんですね。 百戦錬磨のプロと草原のアマチュアの差が早くも現れましたね」
オユン「あ、危なッ」
女子大生A「あぁーっと!今度はオユン選手! 反動でバランスを崩した!」
乳澤しぼり(このまま、押し込めば楽勝ね)
女子大生A「しぼり選手!逃さず、オユン選手の胴体に掴みかかる!」
女子大生B「オユン選手、非常に危ないわ」
オユン「ぐぬぬぬ!」
女子大生A「た、耐えたぁ〜! 表情も一切変わっていない!」
女子大生A「そしてオユン選手、しぼり選手をしっかりホールド!」
オユン「うぉ〜!!」
乳澤しぼり「ちょ、ちょっと! ギャァ!」
女子大生A「そのまま綺麗に持ち上げてしぼり選手を後方に投げ飛ばした〜!」
女子大生B「プロレスも知らないはずのに、立派なフロント・スープレックス。 見事だわ」
乳澤しぼり「いった〜い!!」
女子大生A「しぼり選手、背中からマットに叩きつけられた〜! 試合終了です!」
オユン「さあ、アタイの勝ちよ」
乳澤しぼり「ぐぬぬ、仕方ないわね!」
パクっ
乳澤しぼり「な、なんて濃厚な味! そして口当たりはまろやか!」
乳澤しぼり「ニオイだけで嫌厭されるなんて勿体ないわ!」
オユン「やっと、わかってくれた!」
乳澤しぼり「わかるわよ! 拳で語りあった仲じゃない!」
こうして、アタイのチーズは乳澤乳業がスポンサーとなり大々的に売り出される事になった。
そして、アタイはしぼりにプロレスラーとしての資質を見出され、相撲ではなくプロレスの道を歩むことになった。
完
「東京タワー、オカンと僕と時々オトン」が頭にあってオユンの頭がずーっと東京タワーに見えて困った…。読者の頭に浮かぶ些細なツッコミを全て蹴散らして暴走するストーリー、楽しかったです。最後は全て手に入れたオユンが、ブフとチーズと「かちどき」オユンになっててすごい。
独特の世界観で面白かったです。
表情も一切変わってない、笑いましたw
こういう作品大好きです!
アタイを使うオユンのキャラが最高。
実況の女子大学生AとBも技名よく知ってるなとか、ラストで結局、オユンがプロレスラーになったとか(モンゴル魂は?)とかたくさん笑わせて貰いました。