第十六話 クリスマスイブの真実(脚本)
〇コンビニ
佐伯 栞里「大変申し訳ありませんでした!」
〇コンビニのレジ
コンビニ客「客にあんな態度をとるやつがあるか!」
佐伯 栞里「申し訳ありません。 よく言って聞かせますので」
コンビニ客「ああ、なんなら辞めさせちまえ! じゃあな」
佐伯 栞里「ありがとうございました」
足立 雄輔「・・・」
足立 雄輔「栞里。その、ごめん」
佐伯 栞里「ううん、いいの。 次からは気をつけてね」
足立 雄輔「・・・」
〇更衣室
佐伯 栞里「はあ、世間知らずも甚だしいわ」
佐伯 栞里「まさか客に本気でキレるとはね」
〇更衣室
赤坂 浩基「どうだい? 足立雄輔は」
佐伯 栞里「さっぱりよ。 いつバイトをクビになるかってレベルね」
赤坂 浩基「彼を社長にするのは厳しいか」
佐伯 栞里「所詮は世間知らずのお坊ちゃん」
赤坂 千草「となると、残るは彼に絶望して 死んでもらうしかないわね」
赤坂 浩基「社長には事故で逃げられたからな 彼には思いっきり苦しんでもらわないと」
赤坂 千草「私、良い方法考えたんだけど」
赤坂 千草「栞里が彼と付き合って、 ある日突然振るのはどう?」
佐伯 栞里「付き合ってる相手に振られたくらいで 絶望するかしら?」
赤坂 千草「いま彼は天涯孤独の身。 別れ方によっては、絶望間違いなしよ」
佐伯 栞里「どうするの?」
赤坂 千草「ふふ。具体的にはね」
赤坂 千草「──」
佐伯 栞里「ええ!?」
赤坂 浩基「千草。君、意外と酷いこと 考えるんだねぇ」
赤坂 千草「どう? 栞里」
佐伯 栞里「やるわ」
〇更衣室
佐伯 栞里「色々仕込む必要があるわね」
佐伯 栞里「忙しくなってきたわ」
〇空
数週間後──
〇レストランの個室
佐伯 栞里「ありがとうございます。 ドレスコードなしのお店で助かりました」
佐伯 栞里「そんなにいい服を持ち合わせて いないものですから」
佐伯 栞里「・・・足立社長」
足立 貞夫「これは驚いた」
足立 貞夫「メールの相手が、まさかこんなに 若いお嬢さんだとはね」
足立 貞夫「さて、早速だが用件・・・」
足立 貞夫「こっ、これはっ!!」
佐伯 栞里「ずいぶんお盛んですね」
佐伯 栞里「しかも10代の女の子ばかり 会社にバレたらどうなるか」
佐伯 栞里「あ、社長だから大丈夫なんでしたっけ」
足立 貞夫「き、君! どこでこれを!」
足立 貞夫「いや、金なら払う。いくらだ?」
佐伯 栞里「別に私、お金が欲しいんじゃありません」
佐伯 栞里「それにあなたの会社も家庭も かき乱すつもりはないから安心して」
佐伯 栞里「私はただ、あなたに 『約束』して欲しいことがあるの」
〇タワーマンション
〇レストランの個室
足立 貞夫「なるほど、雄輔の前で、か」
佐伯 栞里「上手く行けば、彼はもう この社会には帰ってこなくなる」
佐伯 栞里「あなたの望みは、後見人として 一時的に預かっている雄輔の遺産──」
佐伯 栞里「それを我がものにすることでしょう?」
足立 貞夫「どうしてそれを?」
佐伯 栞里「少し勉強すれば子供でも分かる話よ」
佐伯 栞里「雄輔が成人する前に死ぬか、失踪すれば 財産は全てあなたのものになる」
佐伯 栞里「だけど表立って彼を殺したり 苛めたりすれば、後見人の権利を失う」
足立 貞夫「君の言ってることはわかった」
足立 貞夫「だが君に何のメリットが?」
佐伯 栞里「簡単よ。私の妹が以前、 足立雄輔にもて遊ばれた」
佐伯 栞里「妹はそれ以来、学校は不登校 精神科に通う毎日よ」
佐伯 栞里「私は妹の復讐がしたい あなたは遺産が欲しい」
足立 貞夫「なるほど、お互いにメリットがある というわけか、しかし・・・」
佐伯 栞里「後は、そうね もし『約束』を守ってくれたら」
佐伯 栞里「これまで関係を持った子たちのように 色んな子を紹介してあげる」
〇手
佐伯 栞里「若い子が好きなんでしょ?」
佐伯 栞里「お じ さ ま」
足立 貞夫「あ、ああ・・・悪くない。 悪くない取引、だ」
足立 貞夫「定期的に若い女を・・・自由に・・・ ふ、ふふふ」
佐伯 栞里(ふふふ・・・落ちたわ)
佐伯 栞里(あとは時期を待つだけ)
〇空
〇コンビニのレジ
足立 雄輔「はい、320円になります。 袋はいかがいたしましょうか」
足立 雄輔「ありがとうございます」
佐伯 栞里(驚いた。いつの間にこんな出来るように?)
佐伯 栞里(しかも何百とあるタバコの番号を 覚えてるなんて)
〇おしゃれな教室
足立 雄輔「──」
佐伯 栞里(最初は寝落ちしてた授業も ついてくるようになった)
佐伯 栞里(よく頑張ってる。 正直、途中で辞めると思ってたわ)
〇スーパーの店内
三番レジ、対応お願いします
足立 雄輔「あ、自分あいてるんで行けます!」
佐伯 栞里「・・・」
佐伯 栞里(多少は出来るようになっても 社長の器じゃない)
佐伯 栞里(計画は予定通りに)
〇空
〇デパ地下
佐伯 栞里「バレンタインかぁ。 もうそんな季節だよね」
佐伯 栞里「・・・」
佐伯 栞里(これは使えるかもしれない)
佐伯 栞里(これをきっかけに雄輔との仲を 進展させることが出来るかも)
佐伯 栞里(まあ、チョコなんて何でもいいのよ)
佐伯 栞里(要はただのきっかけなんだし)
佐伯 栞里「・・・」
佐伯 栞里「あ、こっちの方が雄輔好きかも・・・」
佐伯 栞里(あれ? 私、なんでこんなに ちゃんとチョコ、選んでるんだろ)
〇空
〇土手
足立 雄輔「こ、これって!?」
佐伯 栞里「一日過ぎちゃったけど、バレンタイン 雄輔には、普段お世話になってるからね」
足立 雄輔「あ・・・えっ・・・いや・・・」
足立 雄輔「あ、ありがとう・・・」
佐伯 栞里「あっ! 勘違いしないでね! そういうんじゃないから!」
佐伯 栞里(嘘だ。全ては『勘違い』させるために やってきたこと)
〇コンビニのレジ
佐伯 栞里(バイトと夜学を共にしたのも、 目的の半分はこのためだ)
〇おしゃれな教室
佐伯 栞里(履修済みの授業を一緒に受けたのも 雄輔との親密度を高めるため)
〇土手
佐伯 栞里(あとは背中を少し押すだけ・・・)
佐伯 栞里「・・・言い過ぎたわ」
足立 雄輔「なにが?」
佐伯 栞里「一ミリくらいは気持ち、入ってる」
佐伯 栞里「じゃ、じゃあまた明日!」
〇空
足立 雄輔「待てよ、栞里!」
佐伯 栞里「なななによ。 明日も早いから急いでるだけよ」
足立 雄輔「待て・・・待ってくれ」
足立 雄輔「こんな後出しで、本当にずるいと思うけど」
足立 雄輔「僕も栞里が好きだ」
佐伯 栞里「えっ!」
〇黒
佐伯 栞里(かかった・・・)
佐伯 栞里(あとは手筈通り、進めるだけ)
〇見晴らしのいい公園
佐伯 栞里(丁寧に丁寧に・・・)
〇遊園地の広場
佐伯 栞里(二人の時間を重ねるだけ・・・)
〇アパレルショップ
佐伯 栞里(二人の仲が深まるほど・・・)
佐伯 栞里(心の傷は深くできるのだから)
〇土手
佐伯 栞里「ありがとう。今日も楽しかった」
足立 雄輔「うん。僕も楽しかった」
足立 雄輔「また明日、学校で」
佐伯 栞里「うん、また」
佐伯 栞里「・・・」
〇土手
赤坂 千草「さて、段取りは上々。 あとは仕上げをするだけね」
佐伯 栞里「う、うん」
赤坂 千草「栞里? 足立社長との『約束』は もうすぐでしょ?」
佐伯 栞里「あ、うん。準備はばっちりだよ」
佐伯 栞里「あの社長、パパ活してる同級生たちに デレデレだから」
佐伯 栞里「私の言うことなら何でも聞いてくれるわ」
〇黒
佐伯 栞里(そう、全て予定通り)
佐伯 栞里(社長になれる見込みのない雄輔に 残された道は)
佐伯 栞里(どん底に落とされるしかない)
〇コンビニのレジ
〇おしゃれな教室
〇見晴らしのいい公園
〇土手
佐伯 栞里(私は雄輔のことなんて 何とも思っていないのだから)
佐伯 栞里「大丈夫よ。大丈夫・・・」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
未遂で良かった……
いや良くないけど
良くないけど!
まだ、なんとなく
救いがありそうな……
栞里が涙を流せるようになって良かったです。
あ、あーっ!!
未遂か、良かった!!😭
そうか、それですれ違いか…。
でも栞里はまた現在怪しい雰囲気で、隣に両親がいそうだから、まだ気が抜けない!!
あーっ! 完結が待ち遠しい!
これは絡み合っていますね。恨みと復讐のらせん、といったイメージです。