告知事項あり

Tsumugi

告知事項あり(脚本)

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〇事務所
  ××不動産株式会社 オフィス
課長「山田ァ!テメェ、まだ手つけてねぇのか!」
山田「す、すいません!!」
  山田のヤツ、今日も怒られてやがんなぁ
課長「おう、黒川」
「何すか課長」
課長「お前、山田に任せてた例の件、頼めるか?」
「あーいいっすよ」
課長「本当か!?」
「えぇ。今月のノルマも達して、ヒマなんで」
課長「そうかそうか!さすがウチのエースだ」
「んじゃあ、ちょっと行ってきますわ」
  まぁ、普通はそう簡単に契約が決まる訳ねぇわな。俺以外で
  ──告知事項あり、のマンションなんて

〇高級マンションの一室
  マンション 室内
  ーー告知事項あり
  まぁ平たく言えば事故物件ってやつだ
  事故物件なことは客には、伝えなきゃいけないと法律で決められてるが・・・
  オレにそんな事は関係ねぇ
  ピンポーン
  今日もカモがやってきた
女「・・・」
  お、美人
「電話で予約いただいた小林さん?」
女「・・・はい」
「いやぁお待ちしておりました ××不動産の黒川です」
女「・・・失礼します」
  顔、身体つき、結構いい感じだな・・・80点
「あ、こちらリビングとキッチンです。広くていい感じでしょ?」
女「あの、」
「はい?」
女「ここって二人で住めたり、するんですか?」
  チッ、彼氏持ちか?
「もちろん。1LDKですけど、二人で住むにも充分な広さすよ。彼氏さんとですか?」
女「彼氏とかは・・・いないです」
  おっ
女「今後そういう事があればと、思っただけで・・・」
  いけるか?これ
「彼氏募集中とかですかぁ?」
女「婚活は、してますけど・・・」
「お姉さん綺麗だから相手すぐに見つかりますよぉ」
女「それが全然上手くいってなくて・・・」
「意外だなぁ、こんなに可愛いのに」
女「か、可愛いなんて、そんな」
  ・・・もうちょい押してみるか
「マジですってー」
「お姉さん見た目可愛いのはもちろんですけど、何よりそう・・・声!声がいい」
女「声・・・ですか?」
「ですです!」
女「声なんて褒められたの初めてです」
「え!?めちゃくちゃ良いのに?」
女「・・・」
「お姉さんの声、癒されますよぉ」
「そうだ、この後時間あります?」
女「時間?」
「声もっと聞かせて欲しいんで、よかったらご飯とか行きません?」
女「え・・・」
「俺、今日、ここで仕事終わりなんでぇ」
女「・・・」
  ・・・
女「・・・いいですよ」
  うわ、チョロ
女「・・・その代わり、一つ聞いてもいいですか?」
「いいすよ!何でも聞いて」
女「・・・この家、どうしてこんなに安いんですか?」
「いやぁ、たまたまお買い得な物件なんすよ」
「お姉さんみたいな綺麗な人だから特別に紹介出来たりして・・・」
女「ここって・・・」
女「もしかして事故物件とかじゃないですか?」
「え?んなことないですってぇ」
女「・・・」
女「私、前に騙された事あるんです」
「騙された?」
女「事故物件なのに、何も言われなくて」
「あーそれは災難でしたねぇ」
女「本当に恐ろしくて・・・」
「まぁでも幽霊とかホントにいるか分かんないですし」
女「幽霊とかじゃなくて事件が・・・」
「事件?」
女「殺人、です」
「へー」
女「若い女性が不審者に殺されたって・・・」
女「そんなところを何も聞かされずに紹介されて・・・」
「で?そこで何か出たりしたんですか?  幽霊?殺人鬼?」
女「・・・」
「ほらぁ何も無かったんでしょ?」
「ここはそんな心配全くない、お買い得物件ですから!」
女「本当ですか?」
「ホントですってぇ!」
女「嘘じゃないって信じていいですか?」
「絶対ウソじゃないです!」
  なんだこの女?しつけーな
  ま、売ろうが売るまいが今月のノルマも達成してるし
  最悪、この女とやる事やれれば別に
「じゃ寝室案内したらご飯行きましょ♪」

〇簡素な部屋
  寝室
  あぁ・・・ここで確か
女「どうかしましたか?」
「いやぁ見てください、こんな大きなベッドが、」
女「どうかしましたか?」
「ベッドが・・・」
  あれ・・・ここで何があったんだっけ
女「どうか、しましたか?」
  なんだ?思い出せない・・・ここでいったい何があったか・・・そもそもこの家って・・・
  まぁ・・・売れりゃなんでもいいや
「なんでもないすよ!そんな事より広くて素敵でしょ?ここなら二人で寝てもゆったりと、」
「・・・」
「あれ?」
  ・・・いない?
  なんだ?急に消えて・・・
「どしたんすか?トイレすか?」

〇白いバスルーム
「どこ行ったんすかぁ?」
「ちょっとー」
「・・・」

〇玄関内
  は?あの女勝手に帰りやがったのか?
「退屈すよね!?オレもそうなんすよー、早く飯とか行きましょ!」
  クソ!どこ行きやがった!?
  外か?
  ガチャ、ガチャ
「ん?なんだこれ?」
  ガチャ、ガチャ
  なんで扉が開かねぇ!鍵は空いてるのに!
  ドンッ!
「ちょっとー!外いるんでしょ!?早く開けて!」
  ドン、ドンッ!
「開けろっつッてンだろ!」
  ・・・
「はっ?なんだよこれ」
  しょうがねぇ、窓から出るか
女「・・・」
  ・・・嘘、つきましたね
「・・・ッ!!!」

〇高級マンションの一室
「『いいかッ!売れるまで帰ってくンじゃねぇぞ!』」
山田「む、無理ですよぉ」
山田「だ、大体センパイでも売れなかったのに、僕が売れる訳ないじゃないですかぁ」
「『つべこべ言ってんじゃねぇ!』」
山田「ひ、ひぃッ!」
「『今度アイツの事を口にしてみろ!タダじゃおかねぇ!』」
「『あのヤロウ、仕事中にバックれやがって、クソッ』」
山田「ま、まぁセンパイ、家売るためにだいぶ悪どい事やってましたからねぇ。警察に捕まる前にトンズラしたんじゃ」
「『うるせぇ!喋ってねぇでさっさと客掴まえてこい!』」
山田「・・・チッ」
山田「クソ上司め、俺もやめ時だなこんなブラック会社」
  ピンポーン
山田「はぁ、やっと来たよ」

〇玄関内
  ガチャ
  お、美人
女「・・・」
山田「電話で予約いただいた小林さん?」
  ・・・ハイ

コメント

  • 終盤に向けてどんどん目が離せなくなりました。怖さも面白さもじわじわきますね。
    黒川が”彼女”に告知していたら別の展開が待っていたのか、想像するのも楽しいですね!

  • 事故物件が、さらに事故を増やしていくのって怖いです。
    営業の人がチャラい口調から、どんどん真剣になっていくあたりがさらに怖くて!
    ぞくっとしながら楽しませていただきました。

  • ここに住んでいて殺された人なんですよね…。ということは、その前にもこの物件でなにかがあったということ。恐ろしい事故物件ですね…。怖い…

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