風と踊る翼

くろねこ

エピソード1(脚本)

風と踊る翼

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風と踊る翼
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〇黒
  ──それでも我は、愛してしまったのだ
  
  細められた瞳は慈愛の色を灯し、声色には固い決意が滲んでいた。
  「ふん、なら好きにするがいい」
  「何を言うても聞きはしまい」
  興味を失ったように去っていく背中を見ながらほうっとため息をつく。
  身体は鉛のように重くなり意識は遠のく。
  
  ──どうか、その時まで覚えていておくれ

〇ファンタジーの教室
ユーヴィンス「うーん・・・」
ユーヴィンス「はっ!?」
ユーヴィンス「寝ちゃってたんだ」
ユーヴィンス(かなり日が傾いている、随分寝てしまっていたみたいだ)
ユーヴィンス(早く帰らないと、今度こそ外出禁止になっちゃうよ)
ユーヴィンス「あれ、なんだろう?」

〇空
ユーヴィンス「何かが光っている・・・」
ユーヴィンス「・・・気になるけど早く帰らなきゃ」

〇森の中
カズヒコ「それでこの辺りが光ってた、と」
ユーヴィンス「うん、時間もなかったし僕だけじゃこの森に入るのは心もと無かったから・・・」
カズヒコ「そういうことなら俺に任しとけって!絶対にヒミツを暴いてやるぜ」
ユーヴィンス「そんな、大袈裟な・・・見間違いかもしれないし」
カズヒコ「ははは、それでもお前とここ来るの久々だし悪くねぇけどな」
ユーヴィンス「最近はお互い忙しくて時間もなかったしね」
  ふと前を見ると、木陰に少女が倒れていた。
  出血が酷く、意識がないようだ
ユーヴィンス「カズ、あれ!」
カズヒコ「誰か倒れてるじゃねえか、早く行こう!」
ユーヴィンス「僕が治癒魔法をかけるからカズくんは周りを見張ってて!魔力で魔物が近づいてきちゃうから」
カズヒコ「分かった」
  ユーヴィンスは鞄から1冊の分厚い本を取り出す。
  使い込まれすっかりくたびれたそれを慣れた手つきで開く
ユーヴィンス「大丈夫ですか?今応急処置をしますね」
  魔力の急速な収束が風を発生させ、少女の髪を巻き上げる。
ユーヴィンス(あれ、この人耳が長い・・・?まさか・・・!?)
ラーラ「・・・」
ラーラ「っ・・・?」
ユーヴィンス「良かった・・・目が覚めたんですね」
ラーラ「・・・すまない、迷惑をかけた」
ユーヴィンス「いえ、そんな。けが人を助けるのは医学を学ぶものとして当然ですから」
ユーヴィンス「それより・・・なんで倒れていたのか覚えていますか?」
ラーラ「すまないがそれは言えない」
ユーヴィンス「それって、あなたが・・・亜人族だからですか?」
ラーラ「・・・」
ラーラ「見たのか」
ユーヴィンス「不可抗力で」
ラーラ「そうか。その通りだ。私は人間では」
カズヒコ「おーい、大丈夫そうか?」
ユーヴィンス「カズ・・・うん、治療は終わって話を聞いてたんだ」
カズヒコ「そうか、良かったぜ」
カズヒコ「どこから来たんだ?ここらじゃ見ない顔だろ?あ、俺はカズヒコ。よろしくな!」
ラーラ「・・・」
ユーヴィンス「そんな矢継ぎ早に話したら困っちゃうよ」
ユーヴィンス「でも、僕も自己紹介がまだだったね。ユーヴィンスだよ。魔法構築学を専門にしているんだ」
ユーヴィンス「君の名前、聞いてもいいかな?」
ラーラ「ラーラだ。先程も言いかけたが人間では無い。他言をしないでもらえると有難い」
カズヒコ「人間じゃない!?」
ユーヴィンス「シーっ。声がでかいよ」
ユーヴィンス「彼女は亜人族。理由は分からないけどきっと倒れていたことと関係しているんだと思う」
カズヒコ「亜人族・・・そうかすまない・・・」
ラーラ「気は使わなくていい。お前たちは私の首に興味は無いようだからな」
ユーヴィンス「首・・・懸賞金目当ての人に?」
ラーラ「亜人族の首を国王に献上すれば多額の金が貰えると聞いた。私を襲ったのもその類いだろうな」
ユーヴィンス「やっぱり襲われたんだね・・・見つけられて良かったよ」
ユーヴィンス「・・・この辺りは人が多いのになにか目的があって来たの?」
ラーラ「国王に会うためだ。首だけの状態で行っても意味は無いからな。本当に助かった」
カズヒコ「国王に会うって、正気か?亜人族を迫害するような命令を下したのは現国王だぞ?」
ラーラ「当然承知している。だが、それしか手がかりがないのだ」
ユーヴィンス「手がかり?」
ラーラ「我が一族に伝わる宝珠だ。それを王国軍に奪われたのだ。一族の末裔としてそれを取り返したい」
カズヒコ「王国軍が亜人族に宝珠を盗んだ?本当か?」
ユーヴィンス「その時代は亜人族も多くて交流も盛んだったと聞くけど、そんな略奪があったなんて話・・・」
ユーヴィンス「いやでも当時の王朝は・・・」
カズヒコ「あー・・・」
ラーラ「どうしたんだ」
カズヒコ「ユウは考え込むと周りが見えなくなるんだ。悪いな」
ラーラ「そうか。世話になったな。もう行く」
カズヒコ「聞いといて興味無いのかよ!」
ユーヴィンス「待って」
ラーラ「どうした」
ユーヴィンス「国王に会うってことは中央、ジャスティガルに行くんでしょ?僕も着いていっていいかな?」
ラーラ「何故だ。私と行動しても不利益しかないだろう」
ユーヴィンス「君の言うことが本当なら、きっと僕たちには知らされていない事実が沢山あるんじゃないかと思うんだ」
ユーヴィンス「僕は研究者として、真実を知りたいんだ」
ユーヴィンス「研究に行き詰まっていて、気分を変えたいって言うのも本音だけどね」
カズヒコ「おいおい、本当に大丈夫なのか?親父さんも許してくれないだろ」
ユーヴィンス「父さんには中央の研究機関に呼ばれているとでも言うよ」
カズヒコ「うーん、心配だなぁ」
カズヒコ「よし分かった、俺も行く!」
ユーヴィンス「ええ!?」
カズヒコ「お前は俺がいなきゃダメだろ」
ユーヴィンス「不甲斐ないけど、ありがたいや」
ラーラ「私抜きで話を進めないでくれないか」

コメント

  • 知力と魔法のユーヴィンスと、男気と腕力のカズヒコのコンビがいい感じですね。亜人族のラーラはクールだけど目的を果たすための情熱がありそう。目的地までの道中でユーヴィンスがどんな魔法を駆使するのか楽しみ。

  • ユウにとても勇敢で頭脳派というオーラを感じていましたが、最後にカズヒコさんがいないと心もとないような表現、より好感がもてました。ラーラちゃんのおっしゃる通り、二人だけで話つけてしまって!

  • 天才的な子供なのでしょうか。
    それに好奇心も旺盛で、なぜかコ○ンくんの声で脳内に再生されていました。
    続編もお待ちしています!

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