脚光:暴れ、死に咲く華

HTR.24

読切(脚本)

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〇暖炉のある小屋
  昼、久しぶりの曇り日。
  父は仕事の関係で外に出ており、家には母と二人。
  食器を片付けるとおもむろに母が言った。
母「そういえば買い物に行かなきゃと思っていたんだわ」
母「エリー、悪いけど留守を頼める? 今から街に行ってくるから」
  ・・・・・・僅かに、僅かに自分の心が漏れそうになって言葉を詰まらせる。
  でも直ぐに言葉を紡いだ。
エリー「うん、大丈夫 私は部屋の掃除でもしておくから、早く帰ってきてね」
母「ええ、それじゃあ」
  ・・・・・・
  これでいいのだ。
  街に行き、品物を見る姿を想像したりもしたが、そんな我儘を言ってはいけない。
  我慢をすれば、大抵は上手く回る。
  世の中は静かにしていれば、人生はきっと事もなげに過ぎていく。
  それで、いいんだ。
  そう思って、箒を手に取ったその時・・・・・・
「それは君、本気で言っているのかい?」
  急にかけられた声の方に、驚きと恐怖を持って振り返る。
  そこにいたのは
  ・・・・・・怪しげな男だった。
???「黙っているのが女の役目って? 未来は男の手の中だと」
  何を言っているのか、彼は。
  いきなり現れて、つらつらと言葉を並べる姿で呆気にとられ、強盗やら泥棒やらと叫ぶことを忘れてしまった。
  加えてなんなんだ、その突飛な発想は。
  私はただ、ただ・・・・・・
エリー「私はただ、変に意見して困らせてもいけないって・・・・・・ただそれだけで」
  恐る恐る発言する。
  男は若干目を逸らすように上を向いて続けた。
???「まあな、そんなところだろうよ 自分を殺してしまえば、テーブルには蠟燭一つ それをみんなで囲えばいいもんな」
  食卓の上のランタンを男は指さす。
  すると

〇暖炉のある小屋

〇暖炉のある小屋
  ランタンは急に灯った。
  驚く私を傍目に、男は語りだす。
???「私はね、この光が複数あったっていいと思うのだよ」
???「具体的には青い炎や緑の炎みたいにさ それらからランタンの色を決めてもいいじゃないか」
エリー「何を言っているんですか 灯りは赤以外にないでしょう」
???「おや、それはどうしてかな?」
エリー「どうしてって・・・・・・それ以外の炎の色なんてないでしょう」
???「なるほどねぇ」
  男はふう、と一息つくと言葉に真っ直ぐな意思を乗せて放った。
???「それが、今の政治だよ 私がここにいる理由もそれ絡みでね」
???「“そうあるもの”として組み立てられたものが、今の君に重なるんだ 君は知っているだろう?」
  心当たりがあった。
  でもまさか・・・・・・いや、でも・・・・・・
エリー「・・・・・・女性の参政権のことですか?」
???「その通り!」
???「まあ君の父親がそれを支持しているのだから、多少なり認知してるよね」
エリー「なんで父が運動に参加してることを知っているんですか!?」
???「そんなことはいいじゃないか」
???「それよりも私がここに来たのは、その先の話をするためだよ」
  その先の話? その先って・・・・・・
???「君は、遂に女性政治参画を推し進める第一人者となるんだ」
???「どうだい、ワクワクしてこないかい」
エリー「第一人者って。私が? どうやって?」
エリー「父の参加している運動に私も参加しろと?」
  男は違う、と言わんばかりに突き立てた人差し指を振っている。
???「君が組織し動くんだよ 君にしかできないことだからね」
  その口角は上がり、その瞳孔の奥からは理由の付随した自身が見える気がした。
  そして私にしかできない?
エリー「そんなことはないでしょう」
エリー「頭の固い政治家たちと話をすることなんか、他の人だって」
???「違うよ」
  男は通常のトーンより少し低めな、深い声で遮るように言った。
???「言葉で通じると思うかい 問題はそう楽じゃないよ」
???「まずは君が、先頭に立って未来を示すんだ」
???「そう、力でね」
  おかしかった。
  人を勧誘するにしても最悪の触れ込みではないか。
  それでも、否定する言葉は続けられなかった。
  その言葉に、冗談を孕んでいるようには到底思えなかったから。
  ただ同時に、その話を聞いて思う。
  それはとても危険なやり方だと。
  何せそれをしたら、女性の参政と暴力が紐づけられたらもう戻れない。
???「危ないと思うだろうさ」
  見透かすように男は続ける。
???「それでもね、今君を取り巻く世界は関心が低いんだ」
???「広く活動を知らしめるには多少なりともリスクがいる」
  そんな未来、想像できない。
  できないよ。
  ・・・・・・できないけど。
???「そう、君はする これは願いではなく、事実だ」
???「影響を与えろ。そして、」
???「世界を」
???「覆せ」

〇暖炉のある小屋
  確信した物言いが最後、扉の開く音がした。
母「ただいまー」
  母が帰ってきた。
  驚きの表情を向けていると
母「ん? どうかした?」
  怪訝そうな表情を浮かべた。
  それで気づいた。
  この男は、やはり私だけに見えている。
母「エリー? 大丈夫?」
  心配そうに私を見つめる母の傍ら、男を見つめる。
???「未来を頼んだ、────”エメリン”」
  最後にそう言ったそれは、扉を抜けると

〇暖炉のある小屋
  霧のように消えていった。
  男は随分な結末が見えていたのだろうが、私には分からない。
  それでも、未来に望まれていることが分かっているだけで、胸が張れる気がした。
  母親は見たという。
  何が起こるかは分からないが、昨日を忘れるような輝きで明日を目指す目をした娘が。
  そして、真っ直ぐに母を見つめ直し
エリー「うん、大丈夫だよ。ところでなんだけどさ・・・・・・」

〇空
  かくして未来は、動いた。

コメント

  • 一人の人間によって時代に大きな変化がもたらされるとき、その人物を突き動かす直接的なきっかけ=トリガーがなんであったのかは以前から疑問でした。キリストの受胎告知をする天使ガブリエルの如く、この物語でも予言の使者がエリーの元に姿を表したと考えたらドラマチックですね。

  • 主人公の娘が現代の日本人を象徴しているように思えました。作られたシステムや規則が当たり前のことと疑いを持たずにそれを受け入れていく。影の男は実在したのではなく、彼女自身の考察の上で作り上げた存在なのかもと思いました。

  • 昔から人類は増え続け、時には戦いや戦争が起き、現代まで発達してきましたが、私たちが知らないところでは、こんなことがあったとしてもなんら不思議はないですよね。
    革命や変化には、人知を超えた何かがあるかもしれません。

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