第十五話 その声は私の声(脚本)
〇病院の診察室
奥平 庸子「佐伯さん」
佐伯 栞里「大丈夫です、先生 私、わかってますから」
佐伯 栞里「どんなにはっきり見えて 聞こえていてもこれは幻覚」
佐伯 栞里「だって、父と母は亡くなってるんですから」
奥平 庸子「そうです。お辛いと思いますが 幻覚には惑わされず・・・」
佐伯 栞里「そうじゃありませんよ、先生」
〇モヤモヤ
佐伯 栞里「父や母が言うことは幻覚でも、 私の心が作り出したもの」
佐伯 栞里「大黒運送を憎む二人の言葉は 私の言葉でもあるんですよ」
佐伯 栞里「だから、受け入れて当然なんです」
佐伯 栞里「ね。お父さん、お母さん」
佐伯 栞里「ふふふ・・・」
〇病院の診察室
奥平 庸子「・・・」
〇空
〇ビルの裏
佐伯 栞里「こんにちは」
路地裏の男「・・・」
佐伯 栞里「冬に咲く桜は雪より白い」
路地裏の男「・・・世も末だね。 お嬢さん高校生?」
佐伯 栞里「それに答えたら あなたは幾ら払ってくれるの?」
佐伯 栞里「あなたはお仕事をしてくれればいいのよ」
路地裏の男「・・・チッ。お求めは?」
佐伯 栞里「大黒運送社長、足立彰雲 彼の自宅と家族構成を教えて」
路地裏の男「大黒運送ね・・・五万でどう?」
佐伯 栞里「たったひと家族にいくらとるつもり? 二万がいいとこね」
路地裏の男「なめてもらっちゃ困る こちとらプロなんでね。四万だ」
佐伯 栞里「帰るね。他の人にお願いするから どうもありがとう」
路地裏の男「わかった、待ってくれ! 二万でいい!」
路地裏の男「なんて奴だ。あんた本当にカタギか?」
佐伯 栞里「それ教えたらいくら・・・?」
路地裏の男「わかった! 降参だ! すぐデータ出すから」
佐伯 栞里「ありがとう! えーと・・・一人息子か」
佐伯 栞里「お母さん、息子私と同じ学年だね」
佐伯 栞里「うん・・・うん、きっとそうだね!」
路地裏の男「な、なあアンタ誰と話して・・・」
佐伯 栞里「ねえ、息子の進学する高校は?」
路地裏の男「知りたいかい? 別料金なら・・・」
〇手
佐伯 栞里「高校は?」
〇ビルの裏
路地裏の男「ああ、高校はね、ここだよ」
路地裏の男(な、何なんだこの女。 絶対普通じゃない)
佐伯 栞里「・・・ありがとう」
〇空
〇アパートのダイニング
佐伯 慶子「志望校を変える?」
佐伯 栞里「うん、そうなの。 制服も可愛いし、部活も楽しそうだから」
佐伯 慶子(どういう風の吹き回しかしら)
佐伯 慶子(でも、栞里がやりたいことを 見つけたんだから応援しなきゃね)
佐伯 慶子「頑張るんだよ、栞里」
佐伯 栞里「うん、おばあちゃん。私、頑張るよ!」
佐伯 栞里「上手く行けば推薦で行けそうだし」
佐伯 栞里「もう少し頑張れば特待生もとれる。 お家に迷惑もかからないはずよ」
佐伯 慶子「そんなこと考えなくていいんだよ」
佐伯 慶子(千草・・・あんたの娘は いい子に育ってるよ)
佐伯 慶子(精神科にかかり始めたときは どうなるかと思ったけど)
佐伯 慶子(治療も順調にいってるみたいだね)
佐伯 栞里(足立彰雲の息子、足立雄輔)
佐伯 栞里(まずはあいつに近づく必要がある)
佐伯 栞里(必ず同じ学校に入るんだ)
佐伯 栞里「よーし、やるぞー!」
〇空
〇学校の校舎
佐伯 慶子「栞里、入学おめでとう」
佐伯 慶子「高校生になった姿・・・ 千草にも見せたかったわ・・・うう」
佐伯 栞里「もー、おばあちゃんたら大げさ!」
佐伯 栞里「ただの推薦入学なんだから」
佐伯 慶子「ハンカチは持ったかい? 財布はあるかい? お金は・・・」
佐伯 栞里「もー、やめてよ! 小学生じゃないんだか・・・」
〇学校脇の道
〇学校の校舎
〇炎
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
佐伯 慶子「栞里? どうしたんだい?」
〇学校の校舎
佐伯 栞里「え? なあに、おばあちゃん」
佐伯 慶子「今何か・・・ううん、何でもないわ」
佐伯 栞里「あっ、入学式始まっちゃう!」
佐伯 栞里「じゃあね、おばあちゃん!」
〇学校の下駄箱
佐伯 栞里(自分をコントロールしないと)
佐伯 栞里(足立雄輔を見ただけで 身体が憎しみで焼けそうになる)
〇学校の下駄箱
赤坂 千草「しばらくは遠くから様子見がいいわね」
赤坂 浩基「まずは彼を知るところからだよ、栞里」
〇学校の下駄箱
佐伯 栞里「わかってる」
〇学校の校舎
高校入学から
数ヶ月後──
〇教室
高校教師「えー、つまり。在原業平は・・・ 故郷に対する想いを口にしたわけで──」
佐伯 栞里(入学以来、 足立はほとんど学校へ来ていない)
佐伯 栞里(遊び歩いてるって噂は本当だったのね)
〇空
〇空
〇渋谷のスクランブル交差点
佐伯 栞里(ふう。日中は高校の授業で 夜は夜学で経済のお勉強)
佐伯 栞里(頭がパンクしそうよ・・・)
アナウンサー「臨時ニュースです」
佐伯 栞里(街頭パネルのニュースか・・・)
アナウンサー「墜落した飛行機に乗っていたのは、 大黒運送社長、足立彰雲さん・・・」
〇海
佐伯 栞里(えっ、待って待って 今なんて言った?)
アナウンサー「繰り返します、乗客には大黒運送社長、 足立彰雲さんも乗っていたと思われ・・・」
アナウンサー「現場では、生存者の確認にレスキュー隊が 出動しています──」
佐伯 栞里「・・・」
〇渋谷のスクランブル交差点
佐伯 栞里「・・・死んだ? 足立彰雲が死んだですって?」
佐伯 栞里「ふふ、ふふふ・・・」
佐伯 栞里「ふざけないでよ! 人の親を死なせといて 自分はのうのうと事故死ですって!」
通行人「おい、あの子何叫んでるんだ?」
通行人「危ないな・・・警察に連絡するか?」
通行人「近寄らない方がいいわね」
佐伯 栞里「・・・ちっ」
〇土手
「はあ、はあ、はあ・・・」
佐伯 栞里「神様、いるんでしょ! 見てるんでしょ?」
佐伯 栞里「何とか言いなさいよ!」
佐伯 栞里「どうして! どうして私だけが こんな目に・・・!」
〇土手
佐伯 栞里「お父さん、お母さん・・・」
〇土手
佐伯 栞里「わかんないよ! 私これから何を目標に生きればいいのか」
佐伯 栞里「誰か教えてよ!」
佐伯 栞里「うわあああん!」
〇空
〇教室
佐伯 栞里「おはよう・・・」
同級生1「佐伯ー、どうしたんだ。 元気ねーじゃん」
佐伯 栞里「あ、原村くん。・・・大丈夫。 ちょっと夜更かししちゃっただけだから」
同級生1「せっかくビックニュースがあるから 教えようと思ったのに」
佐伯 栞里「ビックニュース?」
同級生1「伝説の生徒が来てるんだよ。 あれ、見てみろよ」
佐伯 栞里「え・・・」
〇教室の教壇
足立 雄輔「・・・」
〇教室
佐伯 栞里「足立・・・雄輔・・・!」
同級生1「な、驚きだろ? なんで急に来る気になったんだろうな」
同級生1「あいつなんてさー、金持ちだから 本当は学校なんて来なくても・・・」
佐伯 栞里「ふふふ・・・」
同級生1「佐伯?」
佐伯 栞里「あ、ごめん。原村くんのおかげで少し 元気出たみたい」
佐伯 栞里「ありがとう──」
同級生1「お? おお、いいってことよ」
同級生1「それより佐伯、もし良かったら放課後──」
佐伯 栞里「あ、先生来た。席つかなきゃ」
同級生1「・・・」
〇炎
佐伯 栞里(そうだ、まだ息子が生きてた)
佐伯 栞里「ふふ・・・」
〇空
〇土手
足立 雄輔「・・・」
佐伯 栞里「・・・」
佐伯 栞里(土手に降りた。 何してるのかしら・・・)
〇空
〇土手
足立 雄輔「・・・」
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うん…ここまで読んでようやく栞里がわかった気がします。前回変なコメント残してしまったので😅
やはり完結までわからないですね。
ここからどう変わっていくのか楽しみです。
闇深い栞里の心……だけど、憎しみで突き進んだ心に愛が入り込んでしまいそうな苦しさがありますね。
ある意味唯一無二の二人。つらい関係だけどまさしく愛憎。これは個人的に好きな香りがぷんぷんしています……!今後の展開に期待です。
なんて痛々しい😭 事故のニュースを知った段階で止めれば良いのに。でも誰かを恨まないと壊れてしまうんだろうな。しかし周りはそんな思惑などわからない訳で…… 特におばあちゃんの言葉が何とも言えない切なさを感じる……