最強馬券師メスガキちゃん!(脚本)
〇競馬場の座席
佑二「ダメだ、また外した・・・」
今日は1レースも当たっていない。
佑二「次こそは!」
〇パドック
佑二「ん・・・?」
佑二(あんなメスガキがパドックにいるのは珍しいな・・・ 親と来たのか?)
佑二(あまり見てると通報されそうだからやめておこう)
メスガキ「えーまた太ったんじゃないのぉ?このざーこ♡」
佑二「!?」
佑二(あのメスガキ何言ってるんだ?)
俺は思わずメスガキをじっと見る。
佑二「ヤバい、目が合った!?」
メスガキ「こんにちは、おにーさん♪」
佑二(話しかけられた!?)
佑二「た、頼むから、通報しないで・・・」
俺はとっさにそんなことを口にしていた
メスガキ「なんで見た感じフツーのおにーさんを通報するの?」
メスガキ「もしかして変態さん?」
佑二「ち、違う!俺はただ君のことが気になって・・・・・・」
メスガキ「やっぱり変態おにーさんじゃない」
メスガキ「だれかー助けてー」
佑二「本当やめて・・・気になったのは馬に喋っているように見えたから・・・」
せなみ「お兄さん、せなみが馬と話してたのを見たのね」
せなみ「そうなの、私お馬さんと喋れるの!」
どうやらこのメスガキはせなみというらしい、って
佑二「馬と話せるってどういうこと!?」
せなみ「細かいことを気にするとモテないわよ、変態おにーさん」
佑二「頼むから変態はやめて・・・」
せなみ「わかった、おにーさん」
せなみ「ところで今日の調子はどうなの?」
佑二「・・・1個も当たってない」
せなみ「ざーこ♡」
佑二(・・・)
俺は踵を返す。
せなみ「あ、待って!」
せなみ「だったら手伝ってあげる!」
佑二「手伝うって何を?」
せなみ「せなみは馬と話せるから、調子のいい馬と悪い馬くらいすぐに分かるよ!」
せなみは馬と話し始める。
せなみ「うんうん、へぇーそうなんだ」
せなみ「えーそれはマズイよ? 馬肉になっちゃうよ?。ざーこ♡」
佑二(ひどいこと言ってる・・・)
せなみ「おにーさん、分かったよ! このレースは・・・」
佑二「このレースは?」
せなみ「買わないほうがいい!」
佑二「は?」
せなみ「色々聞いたけど、正直どれが来るかわかんない!」
佑二「でもこのレースは4番の馬が実力抜けてるし、その馬買っておけば問題ないんじゃ・・・」
せなみ「4番だけは来ないよ」
佑二「え?」
せなみ「すっごくしんどいって言ってた。 早く帰りたいって」
佑二「本当か? まあ、お金も少ないしここは見送るよ」
せなみ「うん、それがいいよ」
〇競馬場の座席
〇パドック
佑二「うわぁ・・・本当に4番沈んだわ」
1番人気の4番はまさかのブービー。
上位は全く読めない決着だ。
せなみ「だから言ったでしょおにーさん」
佑二「買うとしたら4番だったから助かった・・・」
せなみ「ざーこ♡」
佑二「・・・もうざこでいいから次のメインレースを教えてください。お願いします」
せなみ「うん、分かった!」
せなみ「あ、フォルがいる!」
佑二「フォル?」
せなみ「うん、あの7番の馬!」
せなみ「せなみ、フォルとはすごく仲が良いの!」
佑二「話を聞いてくれないか? このレースで勝負する」
せなみ「うん、分かった!」
せなみはフォルと話し始める。
せなみ「フォル久しぶり! 関西への遠征はどうだった?」
せなみ「え、輸送で疲れて全然ダメだった?」
せなみ「お疲れ様、いーこいーこざーこ♡」
せなみ「ところで調子はどんな感じ? 隣のざーこざこざこおにーさんが外しまくってフォルに話聞きたいんだって」
佑二(ひどい呼ばわりだ)
せなみ「うんうん、分かった。ありがとフォル!」
せなみ「だってさ!」
佑二「ごめん、説明して」
せなみ「今日はフォルだって」
佑二「本当か? フォルって13番人気の馬だぞ?」
佑二「それにこのレースにはピュアもいるし・・・」
ピュア──
ここまで負けなし。
白馬という希少さから人気も高く、このレースも断然1番人気。
〇パドック
せなみ「実際あの白い馬は格が違うけど、今日はスキがあるって」
せなみ「あと、フォルの調子もとっても良いって!」
〇競馬場の座席
佑二(結局フォルの単勝を買ってしまった・・・・・・)
実況「さあ、スタートしました!」
一斉に各馬スタート。
ピュアは前目につける。
一方のフォルは殿から。
佑二「・・・・・・ あんなメスガキの言うとおり買うとは、俺もどうかしてるわ」
〇競馬場の座席
レースは進んでいき、4コーナーを回る
実況「さあ各馬4コーナーを回って直線に向いた!」
実況「1番人気ピュアは好位2番手!」
佑二「――フォルはどこだ!?」
実況「残り400の標識を通過した所でピュアが先頭に代わった!」
実況「各馬ここから坂を登る!」
佑二「いた、大外だ!」
実況「ピュア先頭で残り200を切った!」
実況「大外から1頭、フォルが飛んできた!」
実況「フォル猛追!ピュア逃げる!」
佑二「ああああああ!」
〇競馬場の座席
実況「フォルが僅かにゴール板手前で刺しました!」
実況「大外一気の刺し! フォルがレースを制しました!!」
〇整頓された部屋
10年後
実況「さあ、スタートしました!」
ふと付けたテレビではちょうど日本ダービーが行われていた。
佑二(そういえば昔ここの競馬場で変なメスガキに会って、万馬券当てたことあったなあ)
〇競馬場の座席
そう、10年前。
俺はパドックで変なメスガキが言ったとおり馬券を買い当てたのだ。
〇パドック
レース後お礼を言いにパドックへ行ったのだが・・・・・・そこにはもういなかった。
そしてその後、2度と会うことはなかった・・・
〇整頓された部屋
佑二「結局なんだったんだろうなあ、あいつ」
そんなことを考えているうちにレースは最後の直線。
〇競馬場の座席
実況「ピュアホワイト先頭で残り200を切った!」
実況「大外から1頭、フォルリファインが飛んできた!」
実況「フォルリファイン猛追!ピュアホワイト逃げる!」
〇整頓された部屋
佑二「・・・なんかこの展開見たことあるな」
〇競馬場の座席
実況「フォルリファインが僅かにゴール板手前で刺しました!」
実況「大外一気の刺し! フォルリファインがダービーを制しました!!」
実況「名牝フォルの産駒! 鞍上は・・・」
実況「武岡せなみ騎手! 若干20歳で女性初の日本ダービー制覇となりました!!」
〇パドック
せなみ「ざーこ♡」
〇整頓された部屋
佑二「・・・ざーこ」
おわり
あの大穴を当てた日を境にギャンブルにハマった佑二が10年後にズタボロの状態でいるかと思ったら真っ当な人生を歩んでいるようで何より。騎手になった後も、せなみちゃんにはインチキ予想屋おじさんに「ざーこ」と言い続けてほしいです。
「ざーこ♡」の破壊力が凄いですね。言われてみたいです←
競馬場や実況の雰囲気が伝わってきて、作品舞台の臨場感も楽しめました!
メスガキと馬のミスマッチ感がいいですね。オチが爽やかでした。