神とー秋とーハンカチとー

社 真帆

神とー秋とーハンカチとー(脚本)

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社 真帆

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〇レトロ
  あれは、葉の色が赤く色づき始めた頃のことでした

〇神社の石段
神「あははは!あはは!」
  その日は晴れているのに気持ちいい雨が降っていて私は、はしゃいでいたのです
  そしたら
翔悟「おい、なにしてんだよ!?風邪引くぞ!」
神「!?」
神「貴様!?私が見えるのか!?」
翔悟「意外に口が悪いな・・・」
神「なっ、仕方がないだろ!?」
神「こ、こうでもしないと・・・ 神としての威厳が・・・(ボソボソ)」
翔悟「いまなんて?ほら、はやくこっちへ」
神「うわぁ!いきなり引っ張るな!!」

〇神社の本殿
  その男は拝殿の下で、私に付いた雨水をハンカチで拭いてくれました
翔悟「どこの学校の子だ?こんな真っ昼間から」
神「お前の方こそ、見るからに学生ではないか」
翔悟「俺はしばらくご無沙汰なんだ」
神「何かあったのか?」
翔悟「ちょっと・・・な」
翔悟「って、もうこんな時間!バイトに遅れる」
翔悟「そのハンカチやるよ、しっかり拭いて風邪引かないようにな」
神「お、おい!」
「じゃーなー!」
神「行ってしまった・・・」

〇レトロ
  そうしてハンカチをもらってしまったのですが
神「うわあ」
  それはなんだか気持ちよくて、柔らかくて、いい香りがして、とてもよいものに違いない、そんな気がして
  やはり返してやろうと、次の日男が来るのを待つことにしたのです

〇神社の石段
神「あっ、来た!」
神「・・・ごほんっ」
神「おい!昨日は世話になったな!実は貰ったものを返してやろうと・・・」
神「・・・」
神「おい!」
神「・・・」
  人と話せたのが嬉しくて忘れていました
  本来、私の姿が人にみえることは滅多にありません
  昨日のはきっと天候のイタズラで姿をさらしてしまったのでしょう

〇神社の本殿
  男は拝殿に座り込みじーっとしていました
  すると
翔悟「くそっあいつら・・・ぐっ・・・」
神「・・・」
  泣き始めてしまいました
  ぬぐってもぬぐっても、溢れ出てくる涙をみて私は、ハンカチで拭いてあげようとしてみますが
神「ぁ・・・」
  私の手は彼をすり抜けてしまいました
  しばらくして、ぐしゃぐしゃな顔のまま行ってしまいました
  彼に着いて行きたかったのですが、私は神社から出ることはできません

〇神社の本殿
  次の日も

〇神社の本殿
  その次の日も

〇神社の本殿
  そのまた次の日も、彼はここで泣いていました
  私は彼が来る度に寄り添ってあげました
  何度も会えば、もう一度あの人に見える瞬間があるのではないかと思って
  ハンカチを返したいだけならその辺に置いて去ればよかったのですが、寄り添うことしかできない私が許せなくて
  私にはできなかった

〇レトロ
  一日一日と過ぎて行き、明日は秋の最後の日
  お祭りがあります
  そのお祭りで一度だけ人に姿をさらすことができるのです
  ですがそれはお祭りの間だけ、終わってしまえばもう二度と人に見られることはありません
  それでも、もう一度彼に話しかけることができれば
  もう一度
  もう一度だけ

〇神社の出店
  お祭りがはじまりました
神「はああぁ!」
  いつも静かな神社がこの日だけは輝いていて、私はお祭りが大好きです

〇神社の石段
  入口で彼を待ってあげました
  しかし、中々来ません

〇神社の石段
  すっかり暗くなってしまった頃
神「あっ、来た!」
神「おい!」
翔悟「君は?あっ、この前神社ではしゃいでた」
神「は、はしゃいでなどいない!」
翔悟「そうだったか?」
神「そ、そんなことよりだ!その、えぇっと」
翔悟「・・・祭り、一緒に回るか?」
神「本当か!?」
翔悟「あぁ」
神「では行くぞ!」
神「っ・・・」
翔悟「?」
神「名前・・・」
翔悟「翔悟だ」
神「そうか行くぞ!翔悟!」
翔悟「あ、あぁ」

〇神社の出店
神「(ごくり・・・)」
翔悟「あれ、食べたいのか?」
翔悟「・・・おじさん!そのリンゴ飴一つください」
「あいよ」
神「いいのか!?」
翔悟「あぁ、金ならある」
翔悟「はい」
神「では、ありがたく」
神「ぺろっ」
神「はああ!あまああい!」
翔悟「・・・」
神「どうした?」
翔悟「いや、なんでも」
神「はっ!翔悟!次はあれだ!」
翔悟「金魚すくいか」
神「くっ・・・こいつちょこまかと!」
  翔悟と過ごすのはとても楽しくて

〇花火
神「はああぁ!!」
翔悟「綺麗だな」
  時が経つのがあっという間に感じました

〇神社の本殿
翔悟「もうすぐ祭り終わっちゃうな」
神「・・・」
神「翔悟」
翔悟「?」
神「お前、学校行けてるか・・・?」
翔悟「・・・」
神「どこかで泣いてたりなんて・・・していないか・・・?」
翔悟「・・・」
神「・・・」
翔悟「実はな・・・俺、いじめられてたんだ」
翔悟「そのせいでしばらく行ってない・・・」
神「そうだったのか・・・」
翔悟「いじめてきた奴らはもう退学になったんだが、どうもトラウマでな・・・」
翔悟「少しでもあの時のことを思い出すと・・・」
翔悟「っ・・・」
翔悟「・・・ほらな、涙が止まらないんだ・・・怖いんだ」
翔悟「みっともないよな・・・女の子の前でこんなに涙流して・・・っ・・・」
神「っ・・・!!!」
翔悟「っ!?」
  翔悟を優しく抱きしめてあげました
  その時の翔悟は震えていて、とても怯えていたのを覚えています
神「泣いていい・・・いっぱい泣いていい・・・我慢しないで全て出せ・・・」
翔悟「っ・・・」
  しばらくこのまま抱きしめてあげました
  屋台や提灯の灯りが、一つ、また一つと消えていきました
翔悟「もぅ、大丈夫だ・・・ありがとう」
神「ほら、じっとしていろ」
  翔悟の涙をハンカチで、優しく拭いてあげました
神「翔悟これ」
翔悟「あぁ、いいんだ」
翔悟「それは君にあげたものだ」
翔悟「それに、俺にはもう必要ないから」
神「そうか」
翔悟「ほら、そろそろ帰るぞ!もう遅い」

〇神社の出店
神「翔悟先に帰ってくれ・・・」
翔悟「こんな遅くに一人じゃ危ないだろ」
神「大丈夫だ、私の家はすぐそこだから」
翔悟「そ、そうか・・・わかった」
翔悟「じゃーな」

〇神社の石段
「翔悟!!」
神「・・・」
神「またね」
翔悟「あぁ!おやすみ」
神「おやすみなさい!」

〇レトロ
  もう人は私の姿をみることはありません
  でもよいのです
  あの人がまた笑顔を取り戻せたのだから
  ・・・
  でも本当は
  寂しいですー

コメント

  • 一般的に神様と言うと成人男性のイメージで捉えられがちだけど、女の子の神様がいてもいいし、なんだか新鮮でした。大掛かりな解決をしてくれるわけではないけど、翔悟のような同じ年頃の男の子や女の子の悩みをそっと包むような存在の神社があってもいいな、と思いました。

  • 切なくてあったかくて、優しい雰囲気に包まれているとても良いお話でした…。神ちゃんが神様なのに素朴な女の子で、終始ほっこりしました…。

  • 心と心が触れ合う瞬間ってとても素敵だなあと思わされました。辛い時に人に優しく接することができる人は、本来とても強い人で、そんな彼の優しさに触れ神はひと時でも幸せだったでしょうね。

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