言えない言葉

はじめアキラ

言えない言葉(脚本)

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〇可愛い部屋
篠原苺「ん、んんん・・・・・・」
篠原苺(ううん、朝か。・・・・・・何か、変な夢見ちゃったな。外、いい天気・・・・・・もう何日くらい、外に出てないんだろ)
篠原苺(病気になんかならなければ、今日も普通に学校に行って、授業受けてたのかな。みんなと遊んでたのかな)
篠原苺「・・・だめだめ。そんなこと考えちゃ。私の病気が誰かに伝染るものだったら困るもの」
「苺ちゃん、起きてる?お医者さんがいらっしゃったわ。今日の診察をしないと」
篠原苺「あ、お母さん!はーい、起きてます!」

〇黒背景
  中学生になって、すぐのことだった。私が病気の診断を受けたのは。
  なんて病気なのか、私は教えて貰えなかった。
  でもお医者さんと、お母さんとお父さんの反応からものすごく重い病気なのはなんとなく想像がつく。
  ひょっとしたら、最近国内に入ってきたっていう恐ろしい病気なのかもしれない。
  感染したらじわじわと体を蝕まれて100%助からないっていう、あの。
  家から出なくなって一年以上が過ぎた。
  テレビもラジオもネットも禁止されているから、私は家の外がどうなっているのかは知らない。
  今のところ体調に異変はないけど、それでも想像はつく。
  きっと近い未来、私は死ぬんだろう。
  その心の準備を、ちゃんとしておかなければならないのだと。

〇可愛い部屋
御木本蒼「・・・・・・でさ、金田のやつ最近はずーっとゲーム三昧でさー。超高いゲーム買ってもらったとか自慢してくるわけ」
篠原苺「うふふ、金田君、お金持ちだもんね」
御木本蒼「金持ちつったって、自分で稼いだ金じゃねーのになー」
御木本蒼「で、ムカついたからその格闘ゲームでボッコボコにしてやった」
御木本蒼「ざまあみろってんだ、格ゲーで俺に勝とうなんざ百万年はえーっての!」
篠原苺「楽しそう。・・・今日も本当は、金田君の家に遊びに行きたかったんじゃない?」
御木本蒼「いいんだよ。あいつの家なんかすぐそこだし、いつでも遊びに行ける」
御木本蒼「ていうか、あいつの自慢聞いてるより、苺と話してる時間の方が有意義だからな」
御木本蒼「また、新しい本読んだんだろ?今度は推理小説だって?」
篠原苺「うん。お父さんが子供の頃読んでた本を貸してもらったの!蒼君と犯人当てゲームしたいな」
御木本蒼「おう、いいぜ!」
篠原苺「・・・・・・」
篠原苺「ねえ、蒼君」
御木本蒼「なんだ?」
篠原苺「無理、しなくていいからね。幼馴染だからって、こんなに頻繁にお見舞いに来てくれなくてもいいよ」
篠原苺「他にもたくさん友達がいるんだから、その友達も大事にしてあげて。きっと、私はもうすぐ死んじゃうんだし」
御木本蒼「そんなこと言うなよ、苺。俺は・・・・・・」
篠原苺「いいの。もうとっくに覚悟はできてる」
篠原苺「私、世界で流行してた恐ろしい病気にかかっちゃったんでしょ?だから、もうすぐ死ぬ」
篠原苺「一年も自覚症状なしでよく生きられたなと思うけど、お迎えがくるのはもうすぐだと思うんだ」
御木本蒼「苺・・・・・・」
篠原苺「蒼君も、最近風邪引くことが多いんでしょ?無理して来なくても大丈夫」
篠原苺「私、落ち込んでなんかないもの。ちゃんと最期まで笑って生きるから」
御木本蒼「・・・・・・・・・・・・」
御木本蒼(やっぱり、苺のお父さんとお母さんとお医者さんは、本当のことを何も話してないんだ)

〇部屋の前
「嘘よ、嘘よ、嘘よ!あの子だけなんて・・・・・・あの子だけ抗体があるなんて!」
「世界中で流行しているあの病気にあの子だけかかってないなんて・・・・・・!」
「つまり、近い未来あの子だけこの世に取り残されるんでしょう?そんなのってないわ、あんまりだわ!!」

〇可愛い部屋
御木本蒼(苺が、もうすぐ死ぬんじゃない。俺達全員がもうすぐ、苺だけ残して死ぬんだ。苺は、それを知らないんだ・・・・・・)
篠原苺「蒼君?どうしたの?泣いてるの?」
御木本蒼「ごめん、苺、ごめん・・・っ」
篠原苺「泣かないでよ、蒼君。どうしたの、ねえ?」
御木本蒼(神様、神様。俺の命なんかどうでもいい、だからどうか)
御木本蒼(大好きなこの子を助けてください。どうか、この子を、独りぼっちにしないでください)

コメント

  • 作者さんの作品に出てくる男の子がいつも蒼くんなのは偶然かな?ジャンルも作風も異なるいろんな作品のいろんな世界線に存在する蒼くんを読者が探したり見つけたりするのも面白そうですね。

  • まさかの真実に驚きです!してやられた感でいっぱいにw 抗体があるなら外出しても余裕じゃないのかな、そう一瞬思ったのですが、目前で他の人が苦しみ死んでいく様を見せないという一種の愛情によるものでしょうかね。仕掛けや設定の深みに恐れ入りっぱなしです!

  • テレビもネットも禁止とかなんか企んでる?自覚症状ないてやばいやろと思ったらいろいろ逆だったんですね…でも隠し続けるのも可哀想では…気がついたら一人とか生きていけないし絶望が凄そう……でも先に知ってもどうせ辛いんでしょうけど……衝撃がすごかったです……

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