遭難中(脚本)
〇霧の立ち込める森
ハァ・・・ハァ・・・
樹海を彷徨って、数週間・・・
自分はいつ出口につけるのだろうか・・・?
友人たちと山登りをして
うっかり滑落してしまったのが、運の尽き
命に別状ないのが不幸中の幸いだったけど・・・
いっそ死んでしまった方が楽かもしれない
友人たちが救助隊を呼んでくれているのだと思うけど・・・
水も食糧も尽きて、飲まず食わずの数日・・・
・・・死のう
眠ってしまえば、楽に死ねる・・・
「しんじゃダメだよ!!」
え?
(お、女の子?)
案内人「おきゃくさん、おなかすいてるね!?」
(お、お客さん・・・?)
案内人「ついてきて!」
?????
突然の状況に思考がついていけず、
言われるままに、少女の後を追っていった・・・
〇けもの道
〇森の中の沼
〇密林の中
〇森の中の小屋
案内人「おきゃくさん、こっちだよー!」
・・・木の家?
(こんな樹海の中にあんな家があったのか・・・?)
案内人「さあ、はいってはいって!」
家を見た安心感と少女の笑顔につられ、
足は自然と家に向かっていた・・・
〇レトロ喫茶
いらっしゃいませ!!!
・・・え?
喫茶店?
案内人「おきゃくさん、すわってすわって!」
「これ!」
稲荷さま「お客人をお迎えするのに、その格好はなんじゃ?」
案内人「あ、そっかー!ちょっとまっててー」
案内人「いらっしゃいませー!」
え?
(耳、尻尾?)
稲荷さま「案内人が失礼したな」
稲荷さま「ここは『亜人かふぇ』じゃ」
亜人・・・?カフェ・・・
「こら、稲荷ちゃん!」
マスター「お客様に対して失礼ですよ?」
稲荷さま「『さま』をつけい!妾は由緒正しい・・・」
マスター「この『亜人カフェ』ではその設定は、皆無ですよ?」
稲荷さま「ち・・・」
マスター「度々失礼しました」
マスター「この『亜人カフェ』のマスターをしている者です」
ハァ・・・これはご丁寧にどうも
(なんだろ・・・白昼夢でも見ているのかな?)
(いや、そんなことより!)
あの、すいません!
実はここに来るまでに遭難してしまいまして・・・
マスター「あら?遭難された方でしたか?」
そうなんです!
だから、外に連絡を・・・
マスター「お電話でしたら、そこのカウンターに・・・」
ありがとうございます!
・・・すみません、これどうやって使うんですか?
桃猫「あっ、これはですねー・・・」
桃猫「──こんな感じです」
あっ、ありがとうございます
(番号、番号・・・)
(何番だっけ?スマホの電池も切れているし・・・)
(そうだ、110番!)
トゥルル、トゥルル・・・
はい、110番です
もしもし、山岳遭難なんですが・・・
はい・・・はい・・・、それではお願いします!
フゥ・・・
案内人「おきゃくさん!だいじょうぶか!?」
いや・・・安心したら、どっと疲れが出て・・・
君のおかげで助かったよ、ありがとう
案内人「えへへへへ・・・」
マスター「お客様、救助が来るまでここで ごゆるりと過ごされては?」
マスター「お代は後払いで構いませんよ」
折角なので、そうさせてもらいます
マスター「それでは1名様ご案内~」
〇レトロ喫茶
ウェイター「ご注文お伺いします」
は、はい
(よくできた立体映像だな・・・)
~メニュー表~
本日のオススメ
マスター特製『フルコース』100円
稲荷特製『和食御膳』1円
桃猫特製『オムライス』10円
銀猫特製『フルーツケーキ』5円
兎人特製『サンドイッチ』5円
案内人特製『カレー』10円
(なに?この爆安価格!?)
ウェイター「ご注文はお決まりでしょうか?」
・・・あの、なんでこんなに安いんですか?
ウェイター「亜人の中では、高額と存じますが」
このお金使えます?
ウェイター「もちろんです!」
(絶対あり得ない・・・これは夢だ・・・)
(どうせ夢なら、最後まで見続けよう)
じゃあこの『本日のオススメ』を
全部ください
ウェイター「オススメ全部ですか?ご注文承りました!」
(遭難続きで空腹だし、その分たくさん食べよう)
〇レトロ喫茶
稲荷さま「ほい、妾特製『和食御膳』じゃ」
おにぎり・・・ですか?
稲荷さま「握り飯は立派な和食じゃぞ?」
(まぁ、確かに和食ですが)
わ、すごく美味しい!
稲荷さま「じゃろ?特別の米で作った妾の特製じゃ!」
〇レトロ喫茶
桃猫「私特製『オムライス』です」
(おお、卵トロトロ!ライスもパラパラ!極上のオムライスだ!)
〇レトロ喫茶
兎人「私特製『サンドイッチ』でーす!」
銀猫「特製『フルーツケーキ』です」
(ふわふわの玉子サンドにフルーツケーキ!美味だ~!)
〇レトロ喫茶
案内人「わたしとくせいのカレーもあるぞー」
(甘い・・・お子様カレーの更に甘口だな)
(でも甘いもの食べたあとだから、ちょうど良いスパイスかも)
案内人「おいし?おいし?」
うん、とっても美味しいよ
案内人「わーい!おかわりもってくる!」
あ・・・ちょっと待って・・・
〇レトロ喫茶
もう、お腹いっぱい・・・
マスター「さて、最後は私特製『フルコース』ですね」
あの、すいません
もうお腹いっぱいでして・・・
マスター「あら、私の料理が食べられないとでも?」
いえ、そういう訳では
マスター「いけませんわ・・・」
マスター「ここではお残しは『厳禁』ですの」
!?
マスター「お残しをしたお客様にはペナルティとして・・・」
マスター「私たちの『フルコース』になってもらいます・・・」
フ、フルコース!?
マスター「お料理の気持ちになれば」
マスター「お残しされたお料理の気持ちを分からせる為です」
ルシファー「美味そうな人間・・・」
吸血鬼「生き血、欲しい・・・」
ウェイター「久々のご馳走・・・」
うわああああ・・・!!
〇森の中の小屋
これは夢だ・・・悪い夢なんだ・・・
だから、早く醒め・・・
〇警察署のロビー
なぁ、さっきの通報『山岳遭難』だって?
でもここ『数年』、そんな捜索願い出てないです・・・
イタズラ電話だろ?無視無視!
あの日から、数年が経過してたとは、最期まで知ることはなかった・・・
とても面白いお話でした!!
最後はゾッとしました。自分が食べられる側になるというのは怖いですね……。
可愛いキャラクター達が多く使われていて、見ていて楽しかったです!
完全な主人公時点のお話を書くためにはこうすれば良いのか!という勉強にもなりました。
「注文の多い料理店」の亜人バージョンという感じですね。可愛くて美しくて優しくて安い店は古今東西どこでも危ない店ですね。ラストの警察のシーンでストーリー全体がきっちりと締まって👍でした。
ほっこり癒される系かーとゆったり読んでたら最後…!差分や類似立ち絵を使ったどんでん返しにびっくりしました…数年経ってたってのも竜宮城的なあれなんですかね?お残ししてなくても幸せにはなれずに終わってそう……