命の天秤(脚本)
〇貴族の部屋
ベガ「クレメンテ・ドミナ・メンデスに殺害予告が届いたのか?」
エストレリャ「ここが困ったとこなのだが、正確には違う」
ベガ「もったいぶらずに教えてくれ」
エストレリャ「届いた脅迫状の内容はこうだ」
エストレリャ「「クレメンテかシプリアノの、どちらかの命を貰う。どちらが死ぬかは民衆の意志に委ねる」と──」
ベガ「それでは、私の父にも殺害予告を出されたも同然ではないか!!」
エストレリャ「ウチの警備はお前の所と比較にならないくらいに厳重だ」
エストレリャ「殺害予告があれば更に警戒度はます。 自警団にも応援を仰ぐだろうからな」
エストレリャ「なにせ領主の命が掛かっているんだ」
ベガ「その一方で、こちらは自警団の協力は期待できない。身内の者で守るしかない────」
ベガ「しかし殺害予告を出すなど正気とは思えん」
ベガ「貴族ではないとは言え、我々一家の力は個人が相手をできる物ではないぞ!?」
エストレリャ「エンハンブレが何を考えているかは知らないが、しばらくは動きにくくなる」
エストレリャ「少しの間、俺は影を潜めるよ」
ベガ「なぜ、私にその話しを?」
エストレリャ「お前の組織は好きではないし、そのボスなどもっての他だ」
エストレリャ「しかし、むざむざ殺されてはフリオの死がムダになる」
ベガ「そうだな・・・・・・確かにそうだ」
ベガ「聞いて良いか? フリオとはどんな関係だったんだ?」
エストレリャ「ただの学友だ────」
〇古書店
八年前────
フリオ「アルテア、君はいつも一人だね。 なぜなんだい?」
アルテア「なにを言っている。 いつも俺の周りには誰かしらが集まっているだろう?」
フリオ「でも、君の心は彼等の側に居ないだろう?」
アルテア「心が側に居ないのは相手も同じだ」
アルテア「俺の家柄と自分の利益しか、興味のない連中ばかりだ」
フリオ「寂しくないのかい?」
アルテア「利用するのも、されるのも嫌いなんだ。 それよりはマシさ」
フリオ「じゃあ、損も得もない人間関係を結べるとしたら?」
アルテア「居るなら、会ってみたいよ。 そんな奴に──」
フリオ「フリオだ。 君とはそうなってみたいな」
〇貴族の部屋
エストレリャ「俺が心を許した、たった一人の学友だ・・・・・・」
ベガ「そうか────」
ベガ「生意気で素直ではないが、それでも良い友人がいたのなら、悪くない学校生活を送れていたんだろう────」
ベガ「嬉しく思う────」
エストレリャ「暗黒街を支配するリベラ・オリエウラの家に生まれた不幸なヤツだと思っていたが、それだけではなかったみたいだな」
エストレリャ「素直ではなく生意気ではあるが、それ程までに思ってくれる姉がいたのだから────」
ベガ「なにもしてやれなかったがな────」
エストレリャ「思ってくれるだけでなく、夢まで引き継いでくれるんだ」
エストレリャ「そうでもないさ────」
エストレリャ「さて、俺は帰る」
アルテアは窓を開け、ベランダに出る。
〇洋館のバルコニー
エストレリャ「気を付けろよ、フリオの二の舞にはなるな」
ベガ「言いたいことだけ帰っていくとは────」
ベガ「勝手なヤツだ────」
〇中世の街並み
暗黒街プルガトリオ
年老いた男「おい聞いたかい、エンハンブレの話し?」
屈強そうな男「あぁ、聞いたぜ。クレメンテ様か、シプリアノのどちらかを殺すんだってな」
年老いた男「アンタはどっちを選ぶんだい?」
屈強そうな男「そりゃクレメンテだろ。 あまりにも重税が酷すぎる」
屈強そうな男「もう少し、庶民のことを考えて欲しいもんだ」
年老いた男「じゃが、長兄のロレンシオも冷たい人間らしいと聞く」
年老いた男「もしそうなっても、期待しない方が良い」
屈強そうな男「かぁー、出来た人柄って噂のエフライン様が後を継いでくれないもんかね」
ベガ(すでに噂は広がっているか────)
ベガ(私の父も憎まれているだろうが、クレメンテの方が恨まれているようだな────)
ベガ(本当に危険を冒してクレメンテを殺害するのか?)
〇森の中の小屋
「ベガだね。入っておいで」
〇暖炉のある小屋
ベガ「アレハンドラ、刻印を完成させて欲しい」
アレハンドラ「せっかちだね。 挨拶もナシかい?」
ベガ「急いでるんだ。 すまない────」
アレハンドラ「エンハンブレが現れるからかい?」
ベガ「あぁ、ありがたいことに父の殺害予告までしてくれたよ」
アレハンドラ「寿命を縮めてまで叶えるべき願いか、はなはだ疑問だけど、本当に良いのかい?」
ベガ「復讐を遂げる為にはこれしかない────」
アレハンドラ「良いさ、背中の刻印を完成させよう」
アレハンドラ「服を脱いでベッドに横になりな」
〇魔法陣
くっ・・・・・・
うあっ・・・・・・
あぁっ・・・・・・
〇暖炉のある小屋
アレハンドラ「これで刻印が完成した」
アレハンドラ「これで禁呪の一つ、永劫の炎を完全に行使できる」
ベガ「逃がすことも消えることもない漆黒の炎か・・・・・・」
アレハンドラ「でも覚えておくんだよ」
アレハンドラ「あぁ、ソイツは全てを焼き尽くす」
アレハンドラ「一度使えば自分の命を十年は消費する」
アレハンドラ「それゆえに禁呪だ────」
ベガ「使う相手は一人だけだ」
ベガ「十年の命で復讐を遂げられるなら、悩む必要はない」
アレハンドラ「それは魔女の証でもある。 素肌を晒すのは気を付けな」
アレハンドラ「魔女ほど忌み嫌われる人間はこの世にはいないからね」
ベガ「少し前に、見つかりそうになったよ。 世の中には物好きが居て困る・・・・・・」
アレハンドラ「それが人間さね。 色々な人間がいるものさ・・・・・・」
アレハンドラ「お前の背中の刻印ごと、愛してくれる存在がいると良いけどね」
ベガ「そんな人間がいたら、一度会ってみたいものだ────」
〇貴族の応接間
リベラ・オリエウラ家
「お父様、入っても宜しいでしょうか?」
シプリアノ「ベガか・・・・・・ 入って来い」
シプリアノ「私の死にざまを見届けに来たのか?」
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学友の回想から戻るとエストレリャがアルテアになってました。そのままベランダ降りて行きましたが変装しなくて良かったのか少し心配になりました。個人的には回想シーンもうちょっと多めでかつアルテアが泣きながらただの学友さと維持をはるシーンが見たいところですがこれはもう好みの問題ですね。
エンハンブレ!複数!偽物に寿命使ってしまうのかな。それともエンハンブレは複数個体なのか…謎が深まります。次回も楽しみです