傾いた天秤(脚本)
〇立派な洋館(観測室の電気点灯)
リベラ・オリエウラ家
ベガ(ヤツはどこだ?)
ベガ(こっちに現れたようだが・・・・・・)
「エンハンブレがいたぞ、こっちだ!!」
ベガ「くっ、今度は逆方向に現れたか────」
ベガ(不可解だ──── さっきから姿を見せては、すぐに姿を潜める)
ベガ(まだ侵入するつもりでいるのか?)
〇貴族の応接間
シプリアノ「まだ捕まえれんのか・・・・・・」
シプリアノ「一体、どれだけ時間を掛けるつもりだ────」
マルセリノ「護衛を陽動して、侵入する隙を伺っているのでしょう」
マルセリノ「ですがこの場所に居れば、なにも問題はありません」
シプリアノ「見つかった時点で、失敗したと考えそうなものだが・・・・・・」
シプリアノ「なにか策があるのか────」
〇立派な洋館(観測室の電気点灯)
ベガ「見つけたっ!!」
ベガ「また隠れたか!!」
ベガ(永劫の炎を使う時間すら、待ってくれないか────)
ライラプス「やあやあ、まだ取り込み中かい?」
ベガ「ライラプス!? どうして自警団がここに!!」
ライラプス「こっちに現れたと聞いたから、クレメンテ様から申しつかったのさ」
ライラプス「捕まえてこいってね」
ベガ(ちっ、余計なヤツが────)
ベガ(こいつがいる前で禁呪を使うのは────)
ベガ(よりによって、こんな時に────)
ライラプス「おや、お出ましだね」
ベガ(復讐か、フリオの夢か・・・・・・)
ベガ(私はどちらを選ぶべきだ────)
ライラプス「瞳に宿る神々よ!!」
ライラプス「彼の者をその眼に焼き付けろ!!」
ライラプス「サイト・トレーサー!!」
ライラプス「君の姿を一目見たかった」
ライラプス「一目だけね────」
ベガ「呪文か?」
ライラプス「そうだよ。 これで周囲の瞳と繋がった」
ライラプス「彼が目撃されれば、僕は目撃場所へ転送される」
ライラプス「僕はどんな獲物も逃がさない猟犬だ────」
ライラプス「早速、見つかったようだ。 じゃあ、失礼するよ────」
ベガ「なるほど・・・・・・ 有能な追跡者だ」
ベガ「鼻でなく目で追う猟犬か・・・・・・」
ベガ「クソッ、これでは復讐を果たせなくなる!!」
ライラプス(なんども姿を消しては、現れている)
ライラプス(わざと自分の姿を晒しているのか?)
「エンハンブレを見つけたぞ!!」
ライラプス「僕も、みーつけた!!」
ライラプス「うーん、惜しい────」
ライラプス「殺すつもりだったけど、腕一本だけか────」
エンハンブレ「自警団のライラプスだな?」
ライラプス「あれ、僕も有名になったのかな?」
エンハンブレ「サイト・トレーサーを使える稀有な術師だ」
ライラプス「あー、手の内もバレてるのね。 やりずらいなぁ────」
エンハンブレ「ふん、なにを────」
エンハンブレ「バレても問題ないと思っているくせに」
ライラプス「まあね。 ここなら監視の目は沢山ある────」
ライラプス「逃げられはしないよ」
エンハンブレ「そうだな────」
エンハンブレ「普通の者ならな!!」
エンハンブレが背を翻し、塀を乗り越える。
ライラプス「今更、逃げても遅い────」
ライラプス(これだけの喧騒だ。 街にも野次馬が集まっている────)
ライラプス(目が反応しない・・・・・・ 身を潜めているのか?)
ベガ「エンハンブレは!?」
ライラプス「残念、見失った所だ。 今はどこかに隠れてるよ」
ベガ「その術の効果時間と範囲は?」
ライラプス「効果時間は一日。 範囲は三キロくらいかな?」
ベガ「逃げ切るのは至難の業だな────」
ライラプス「捜索範囲を広げてもらいたいところだね」
ライラプス「シプリアノの所へ案内してくれるかい?」
ベガ「私がか?」
ライラプス「僕一人で向かって、面倒ごとが増えたら困るでしょ?」
〇貴族の応接間
シプリアノ「追跡呪文か。 理由は分かった────」
シプリアノ「それが最善だろう」
シプリアノ「マルセリノ、捜索範囲を広げるよう手配しろ」
マルセリノ「外の警備が手薄になりますよ」
シプリアノ「構わん」
シプリアノ「一向にエンハンブレを捕まえられん者が大勢いるよりは、猟犬一匹の方が役に立つ」
マルセリノ「ではそのようにいたします」
ベガ「まだ見つからないのか?」
ライラプス「そのようだね。 誰かの瞳に映れば、僕はその場に転送されるんだから────」
シプリアノ「取り逃がした可能性は?」
ライラプス「街の住人もこの喧騒を聞いて起きている。誰の目にも止まらず逃げるのは難しい」
シプリアノ「しかし、これだけ探しても見つからんのだぞ」
ライラプス「可能性は二つ────」
ライラプス「まだ人目に触れない場所に隠れてるか────」
ライラプス「サイト・トレーサーの対策を打ったうえで既に逃げている」
ベガ「対策だと?そんなものがあるのか?」
ライラプス「手の内を明かしたくないんだけど?」
ベガ「ここで明かさなくても、調べるからな」
ライラプス「だよねー・・・・・・」
ライラプス「この術は、対象者が瞳に映った者の所へ転送される」
ライラプス「でもそれは、僕がエンハンブレだと認識した者と同じでないと効果が発動しない」
ベガ「つまり変装していたら、ソイツを見てもエンハンブレだと認識できず、効果は発動しない訳か」
ライラプス「そういうこと」
ライラプス「他にも、人の目に映らなくなる姿消しや、姿を変える変化の呪文でも、効果は発動しなくなる」
ライラプス「エンハンブレはサイト・トレーサーのこと知っていた」
ライラプス「その方法を使って逃げた可能性は高いね・・・・・・」
マルセリノ「シプリアノ様、失礼します!!」
シプリアノ「なにがあった? お前が慌てているのだ。 余程のことだな!?」
マルセリノ「それが────」
マルセリノ「クレメンテ卿が殺害されと知らせが────」
シプリアノ「なに!?誰にだ!!」
マルセリノ「エンハンブレにです!!」
ライラプス「その話し、本当かい?」
マルセリノ「この話は自警団からの報告だ!!」
ライラプス「僕はここが襲撃されたから、クレメンテ様に派遣された」
ライラプス「そして、僕はこの場所でエンハンブレに会っている」
ライラプス「あり得ない・・・・・・」
ベガ「ならばエンハンブレの予告に乗じた、別人の犯行ではないのか?」
シプリアノ「マルセリノ、詳細を調べろ!!」
マルセリノ「かしこまりました!!」
ライラプス「僕も離れますよ。 自分の目と耳で確認したい」
シプリアノ「ふぅ・・・・・・ 困ったことになったな────」
ベガ「殺すのはどちらかと宣言していました。 これで安心できたのでは?」
シプリアノ「だとしてもだ」
シプリアノ「次期当主と関係を作り直さないといけないのは、痛手だよ」
ベガ「ロレンシオ様ですか────」
シプリアノ「もう少しお前の娼館で遊んでいて貰いたかったがな────」
ベガ「女性の魅力で篭絡できる男ではありませんでしたよ────」
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イッキ読みで読ませていただきました!😆
設定、凝ってますねェ!ネーミングセンス、キャラの役割の持たせ方、サブタイトル含めめっちゃ好みです😂
魔法の代償、発動条件。魔法使ったバトル展開もっと見てみたいくらいです👍
ライラプス、超有能&重要キャラの匂いがめっちゃしますね…なんか動機だったり過去だったりに一癖ありそうで好きです。応援したくなる…🤣
魔法の条件づけがいいですね!しかしそれでも上をいくエンハンブレ。流石手強い。
そして魔女の館でなぜかライラプスが。つけられていたのか。やはり手強い。次回も楽しみです。