第十話 最悪なキス(脚本)
〇大広間
オルガ「試す?」
クロノア「うん。 キス・・・させて欲しい・・・」
クロノア「・・・嫌なのはわかっているんだ・・・ けど・・・もうあと期日まで・・・ 二週間しかないからね?」
クロノア「・・・その・・・首飾りも・・・ 前よりも桃色に光っているように見えるし・・・」
クロノア「・・・どうだろうか?」
オルガ(・・・嫌・・・ではない・・・と思う・・・)
オルガ(でも・・・それをクロノアに言うのは・・・なんか悔しいし・・・)
クロノア「じゃあ、こうしよう! 僕が十数えるから! その間に嫌なら部屋から出て行って欲しい・・・!!」
クロノア「1・・・2・・・」
オルガ(ど、どうしよう!?)
クロノア「・・・9・・・10・・・」
オルガ(・・・あ、10数え終わっちゃった・・・!!)
クロノア「・・・オルガ・・・」
オルガ「・・・えっと・・・その・・・た、試す──」
クロノア「・・・外れない・・・ね?」
クロノア「・・・でも・・・ 前よりも赤く・・・光ってる?」
オルガ(・・・あ・・・何か・・・クラクラ・・・してきた?)
オルガ「は、外れた・・・!?」
クロノア「・・・みたい・・・だね・・・」
オルガ「く、クロノア!? 外れたから!もう・・・外れたからっ!!!!!!」
クロノア「うん・・・。 でも・・・僕も限界かな・・・」
クロノアは、そう呟くと・・・オルガを抱き抱えて足速に部屋を出た。
〇貴族の部屋
クロノアが向かった先は──クロノアの部屋で──
クロノア「ねぇ?オルガ・・・。 エラトの魂跡が真っ赤に染まって・・・外れたって事は・・・」
クロノア「・・・僕の事・・・”好き”って事でいいんだよね!?」
オルガ「は、外れたんだからっ!! もう、いいでしょ!?」
クロノア「ねぇ?」
クロノア「今夜は・・・一緒に眠ってくれないかい?」
オルガ「ど、とうして!?」
クロノア「・・・どうしても・・・」
クロノア「・・・大切にするよ?」
オルガ(・・・こ、これは・・・”お誘い”なのよね!?)
オルガ(・・・)
オルガ(・・・)
クロノア「・・・僕に身を預けるのは・・・嫌?」
オルガ「い、嫌っていうか! 早すぎるっていうか!!」
オルガ「私達、まだお付き合いもしてないのにっ!!」
クロノア「・・・僕、ゴーレムだから・・・ そういう”順序”ってよくわからないんだけど・・・」
クロノア「順序よりも”気持ち”が大事だと思うんだっ!!」
クロノア「・・・ダメ・・・かい?」
オルガ「ダメっていうか・・・」
オルガ「私の気持ちが・・・ まだ追いついてないのっ!!!!!!!!」
クロノア「・・・」
クロノア「・・・僕に・・・ 魅力がない・・・んだろうか?」
〇城の客室
オルガ「・・・に、逃げて来ちゃった!!」
オルガ「・・・」
オルガ「・・・と、とりあえず!! エラトの魂跡が外れたし! 明日、ソディトとディアールさんの所へ行って──」
オルガ「────行って・・・その後は・・・ どうするの?」
オルガ「エラトの魂跡が外れたから、クロノアの城に帰って来るのも──変な話だし・・・」
オルガ(私・・・まだクロノアと繋がっていたいって・・・思ってる?)
オルガ(クロノアは? クロノアは・・・まだ・・・私と関わりたいって思ってる?)
オルガ(もしかして・・・さっきの”お誘い”を断ったショックと首飾りが外れた事で・・・ 私に興味なくなっちゃった・・・かも?)
オルガ(そ、そうよ・・・! よく考えたら、首飾りが外れたら・・・ 私がここに住む理由なんてないし──)
オルガ「・・・クロノアが私に固執する理由も・・・なくなっちゃう・・・?」
オルガ(・・・)
オルガ(まだ・・・繋がっていたかったら・・・ さっきの”お誘い”は・・・ 逃げるべきではなかったのかな・・・?)
オルガ「”エラトの魂跡”がなくても・・・ クロノアは・・・私を好きで・・・ いてくれるのかな?」
〇貴族の部屋
使用人?1「クロノア様!! 大変ですっ!!!! オルガ様が──!!」
クロノア「・・・出て行ったんだろう?」
使用人?1「は、はい! 今し方、お部屋を訪ねたら── 姿はなく・・・お手紙が!!」
クロノア「見せてくれ・・・」
〇城の客室
オルガ「クロノアへ」
オルガ「エラトの魂跡が外れた今、私がここにいる理由はありません」
オルガ「エラトの魂跡をソディトとディアールさんの元へ届けに行きます」
オルガ「それと・・・ クロノア、ありがとう」
オルガ「変な出逢いだったけど・・・ 私の事、ずっと好きだって思ってくれて 嬉しかった」
オルガ「この二週間は、本当に楽しかったよ。 私の為に毎朝、ご飯を作ってくれてありがとう」
オルガ「・・・悔しいから・・・黙っておこうと思ったんだけど・・・もう会う事もないから・・・ 伝えておきます」
オルガ「最初は、変な首飾りを強引に付けられて・・・ ”憎らしいヤツ”って思ってたけど──」
オルガ「クロノアは、強引で変な人?ゴーレムだったけど・・・ 優しくて・・・強くて・・・」
オルガ「私の事を好きっていつも言ってくれる・・・ そんな”愛”に・・・」
オルガ「この二週間で・・・ 私も貴方に”恋”をしました」
オルガ「私はクロノアが”好き”でした」
オルガ「自分の気持ちの変化をエラトの魂跡は正直に映し出していて・・・ 恥ずかしかった」
オルガ「クロノア、私に恋する心を教えてくれてありがとう」
オルガ「だけど・・・ 私の事はもう忘れてください」
オルガ「愛する気持ちを知っているゴーレム君なら、きっと他の素敵な女性を幸せにする事ができると思うから」
オルガ「さようなら。 オルガ」
〇貴族の部屋
クロノア「・・・」
使用人?1「く、クロノア様・・・?」
クロノア「フフフフッ!!」
クロノア「ねぇ?」
使用人?1「は、はいっ!!」
クロノア「僕の魅力は・・・なんだい?」
使用人?1「はっ! 気に入ったものは最後まで追いかける!! その天才的変態ストーカー気質かとっ!!」
クロノア「・・・だよねぇ・・・」
クロノア「・・・ちょっと僕、出かけて来る」
使用人?1「はっ! 留守はお任せ下さい!!」
クロノア「・・・ちょっと”愛”が足りなかったかなぁ・・・?」
クロノア「オルガ・・・僕から逃げようなんて・・・愚かだよ・・・」
クロノア「・・・もっともっと君を愛しているって伝えなきゃ・・・君はわかってくれないみたいだね──」
照れて恥ずかしがるオルガ、最高です!
そして、クロノア様の偏執的な変質要素が復活ですか!? 可愛い恋心と重すぎる愛の行方は!?
そして、使用人?さんの受け答えには笑ってしまいましたw