指切り

みかづき

指切り(脚本)

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〇モヤモヤ
  ( 嫌だ。ひとりぼっちは、嫌だ )
「大丈夫だ、そら。桜が満開になる頃に、迎えに行くよ」
「約束だ。指切りをしよう」

〇神社の石段
  ボクは、そら。中学3年生
  神社で働く、宮司の息子
  神様に強い憧れを持つボクは、父の仕事を継ぐのが夢だ。

〇桜の見える丘
つかさ「おーい、そら。この辺りにしようか」

〇桜の見える丘
あお「こっちの桜は、満開だよ」
  ボクは今、親友のあお、つかさの3人で、花見を楽しんでいる。
  初めて来たこの場所は、辺り一面が花畑で、少し離れた所に、小川も流れている。
そら「気持ちいいね。最高だね !!」
  ボクは、弁当箱のフタを開けようとして、あおに手を掴まれた。
あお「小川の向こうに、行ってみようよ」
そら「うん。いいよ」

〇山中の川
  小川が見えてきた。
あお「ほら、もっと先に進もう」
そら「うん。わかった」
  笑顔で歩き出した時、誰かがボクの手を掴んだ。
男の人「そら、迎えに来たよ」
そら(誰だろう・・・めちゃくちゃワイルドな人)
「そら、大丈夫か!?」
  つかさが、全速力で走ってきた。
つかさ「知り合い?」
そら「うーん。ちょっと、思い出せなくて」
  つかさと男の人が、にらみ合っている。
つかさ「そらを、どこへ連れて行くつもりですか?」
男の人「そらの、帰るべき場所まで」
つかさ「また・・・。そらを、ひとりにするつもりなのか?」
男の人「・・・・・・」
つかさ「そらを傷つけようとする奴は、許さない」
男の人「傷つけるつもりはない。そら、行こう」
  ふたりの会話が分からず、困り果てるそらの頭上に、新聞紙が降ってきた。
  2月×日 修学旅行中のバスが崖に転落。
  乗客24名中、中3の男子生徒1名を除く、全員死亡──
そら(そうだった。ボクたちは、修学旅行中だった)
そら「あれ・・・。ということは──」
つかさ「大丈夫だ、そら。ボクたちが、そばにいる」
あお「だから、寂しくないよ。一緒に行こう」
つかさ「もう、ひとりになんて、させないから」
そら(あぁ、そうか。そういうことだったのか)
  (ボクを心配して、迎えに来てくれたんだね)
そら「ありがとう。あお、つかさ。ボクはまだ、そちらへは行けない」
そら「でも、心の中にふたりがいるから、ボクはひとりじゃないよ」
そら「だから、どうか安心して」
あお「本当に、寂しくない?」
そら「うん。大丈夫だよ」
つかさ「わかったよ。そらが寂しくないなら、それでいい」
そら「ボク、ふたりを守れなかった。ごめん」
あお「そんなこと、気にしなくていいんだ」
つかさ「そうだよ、そら。しっかり、前を見るんだ」
つかさ「どこにいても、ボクたちは親友だ」
あお「そうだよ。ボクたちは、ずっと親友だ。 元気でね」
つかさ「最期に、笑顔で指切りしよう」

〇山中の川
そら「ボクたちは、ずっと親友だ。忘れない 指切った!!」
  『・・・・・・』
そら「ありがとう。あお、つかさ」

〇モヤモヤ
  だんだん景色がぼやけて、真っ暗になった。
「おかえり、そら」
  耳元で、男の人の優しい声が聞こえた。

〇病室(椅子無し)
「先生、そらくんが目を覚ましました!!」
  『・・・・・・』
  眩しい太陽の光が差し込む病室で、ボクはお守りを握りしめていた。

コメント

  • 3人の住む世界が変わってしまっても、そら君は朦朧とした中で確かな友情を再確認したことでしょうね。その温かさは彼がこれから生きていく上での最高の糧となると思います。悲しいけど、思春期の人とのつながりがとても美しく描けていました。

  • 指切りの約束の唄って実はよく考えると怖いですよね、その歌とリンクさせながら話を読ませて頂きました。起承転結がしっかりとあって楽しかったです。

  • そらくんひとりだけ生き残ってしまったんですね。お友達は一緒に行こうと声をかけながらも、そらくんの意思を尊重して、連れて行かないことを選んだことが本当の友情なんだなと感じて胸が熱くなった。彼らはそらくんの中でこれからも共に生きていくのでしょう。

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