あなたの特別

羽遊ゆん

14.あなたは特別(脚本)

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〇美しい草原

〇華やかな裏庭
  僕は、琴美さんと
  
  この鷲尾家の別荘で
  
  暮らしている

〇豪華な部屋
尚子(家政婦)「あ、拓海さん。お帰りなさいませ」
鷲尾拓海「尚子さん、ただいま。 琴美さんは?」
尚子(家政婦)「今は、お部屋で音楽を聴かれていますよ」
鷲尾拓海「ん、わかった。ありがとう」

〇豪華なベッドルーム
前嶋琴美「はい」
鷲尾拓海「琴美さん」
前嶋琴美「・・・拓海さん?」
鷲尾拓海「うん」
前嶋琴美「今日は、お帰りが早くないですか?(笑)」
鷲尾拓海「だって、今日は琴美さんの誕生日だからね」
前嶋琴美「あ・・・えっと、たしか7月7日でしたよね?」
前嶋琴美「すみません・・・自分のことなのに」
前嶋琴美「誕生日だと言われても、いまだにぴんとこなくて」
  .
  
  あの事件で、琴美さんは
  
  両目に傷を負い、失明した
  
  .
  .
  
  切りつけられて、倒れたとき
  
  .
  .
  
  テーブルに頭をぶつけていた琴美さんは
  
  数日間、目を覚まさなかった
  
  .
  .
  
  意識を取り戻したとき
  
  琴美さんの記憶に
  
  障害が生じていた
  
  .
  .
  
  断片的に
  
  琴美さん自身のこと
  
  お父さんのこと
  
  それから
  
  .
  .
  
  白鳥勇次と関わった期間の記憶が
  
  抜け落ちているようだった
  
  .
  .
  
  白鳥勇次より後に出会った
  
  僕のことは
  
  もちろん
  
  .
  .
  
  覚えていなかった
  
  .
  .
  
  ドクターがいうには
  
  つらい記憶から
  
  自分の心を守るための
  
  防衛反応らしい
  
  .
  .
  
  無理に記憶を思い出すと
  
  フラッシュバックを起こす
  
  可能性があるという
  
  .
  .
  
  僕の記憶がない
  
  琴美さんに会ったとき
  
  僕は
  
  .
  .
  
  琴美さんのことをよく知る
  
  昔からの友人として
  
  接することに決めた
  
  .
  .
  
  琴美さんが
  
  つらい記憶を思い出さず
  
  安心して生活できるように
  
  僕は周りの人を説得した
  
  .
  .
  
  そして
  
  琴美さんの世話人を申し出た
  
  .
鷲尾拓海「琴美さん、ケーキを買ってきたんだ。 食べる?」
前嶋琴美「ケーキ? 食べます♪」
鷲尾拓海「フルーツがたくさん入ったロールケーキだよ」
前嶋琴美「へ~♪」
鷲尾拓海「嬉しそうだね」
前嶋琴美「え!? なんでわかるんですか? 恥ずかしい・・・(照)」
前嶋琴美「えっと・・・フォークは?」
鷲尾拓海「あ、僕が・・・」
前嶋琴美「あの・・・私、だいぶ自分で食べるの上手になったんですよ?」
鷲尾拓海「知ってます。頑張ってましたよね?」
鷲尾拓海「でもロールケーキ、食べにくそうだから、今日は、僕に任せてください」
鷲尾拓海「それに誕生日だから、食べさせてあげたいんです」
鷲尾拓海「いつも頑張ってるんだから、たまには甘えていいんですよ?」
前嶋琴美「え! えっと・・・じゃあ」
前嶋琴美「はい」
鷲尾拓海(・・・あぁ、前にも琴美さんに、食べさせてあげたことあったな)
前嶋琴美「あ、あの・・・拓海さん?」
前嶋琴美「ずっと口を開けてるの・・・恥ずかしい、です」
鷲尾拓海「あ! ああ、すみません。 ちょっと考え事してました」
鷲尾拓海「はい。どうぞ」
前嶋琴美「(パクッ) ん♪ 美味しい♡」
鷲尾拓海「よかった♪」
鷲尾拓海「あ、そういえば、尚子さんが琴美さんは音楽を聴いてるって聞いて来たけど」
鷲尾拓海「音楽、流してなかったですね」
前嶋琴美「あ、流してたんですけど・・・ 外からキレイな鳥の声が聞こえてきて」
前嶋琴美「集中して聞きたいなと思って、音楽を流すのをやめたんです」
鷲尾拓海「ああ、なるほど。 たしかに、よく鳴いてますよね」
鷲尾拓海「今日、天気がいいんですよ。 だからかな?」
前嶋琴美「天気、いいんですね?」
鷲尾拓海「ええ、とてもいい天気ですよ」
鷲尾拓海「あ! そうだ琴美さん、クチナシの花が咲いてるんですよ」
前嶋琴美「え!」
鷲尾拓海「好きでしょう? ケーキ食べたら、外に行きませんか?」
前嶋琴美「い、行きます! 行きたいです♪」
鷲尾拓海「はい、行きましょう」

〇大樹の下
前嶋琴美「(スンスン)」
前嶋琴美「あー♡ いい香り~♪」
鷲尾拓海「琴美さん、クチナシの花の香りがホントに好きですね?」
前嶋琴美「はっ! つい夢中になっちゃいました」
前嶋琴美「たしかに花の香りの中では、いちばん好きかもしれませんね」
鷲尾拓海「そーだ! 琴美さん。 せっかくの誕生日なんだし」
鷲尾拓海「なにか僕にしてもらいたいこと、ないですか?」
前嶋琴美「えっ・・・」
前嶋琴美「拓海さんには、いつもお世話になりっぱなしですから・・・」
鷲尾拓海「も~そんな、遠慮しないでいいですよ?」
鷲尾拓海「普段できない無理めなお願い事も、今日だけオッケーします!」
前嶋琴美「ぷっ・・・無理めなお願い事って!」
前嶋琴美「・・・そう、ですねぇ」
前嶋琴美「・・・あ」
前嶋琴美「じ、じゃあ・・・」
前嶋琴美「あの! 拓海さん、絶対にひかないでくださいね?」
鷲尾拓海「はい、なんでも言ってください」
前嶋琴美「ハ・・・ハグを、してもらえませんか?」
鷲尾拓海「ハ、ハグですか!?」
前嶋琴美「ダメ、でしょうか?」
鷲尾拓海「いえ! ダメだなんて!」
鷲尾拓海「えっと・・・じゃあ、ハグ、しますね?」
前嶋琴美「はい♪」
  拓海は、琴美をそっと抱きしめた
鷲尾拓海「こんな・・・感じで、いいですか?」
前嶋琴美「はい、しばらくこのままで・・・」
鷲尾拓海「は、はい」
前嶋琴美「(スンスン)」

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コメント

  • ハラハラさせる展開で、とても面白かったです。
    琴美と拓海の名前、運命的な繋がりを感じさせるラストシーン、対になっていると知らされた瞬間、鳥肌が立ちました。

  • 大変遅くなりましたが完結おめでとうございます!前話で南が暴れ回ったときはどうなることかと思いましたが、拓海の愛と優しさで記憶を失った琴美を包み込んで……。長年想い続けた最愛の人が、穏やかであるように生きる。拓海の一途な愛が伝わってきて、思わずうるっときちゃいました。これこそまさに「愛」ですね。羽遊ゆんさんらしい人物のコミカルさも、作品が暗くなりすぎず楽しめました!面白かったです!お疲れ様でした😆

  • 完結おめでとうございます!
    全ての澱や憎しみの洗い流された世界で、2人が幸せになることを祈らずにはいられません。特別なたった一人と手を取り合える幸せ、素敵なエンディングでした。

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