場末ノZ

山本律磨

S&M(Ⅱ)(脚本)

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〇荒れた公園
時代を越える意識高いマン「結局哲学ってのは答えを導く過程そのものなんだ。だから哲学書を読む事はある意味哲学から最も遠いものなんだ」
時代を越える意識高いレディー「私もそう思ってるわ」
「・・・」
「お前は本当に駄目な男だねえ!」
「も、申し訳ありませんマリア様!」
「・・・」
時代を越える意識高いレディー「生活力とか経済力とかじゃないの。家庭をもつ覚悟そのものに男と女は魅かれあう事こそ健全なの。無為な夢の不健全性はその証よ」
時代を越える意識高いマン「全く同意だね」
「・・・」
「何回言ったら分かるんだい?この、この、ええと・・・その・・・」
「い、いぬー!」
「きゃんきゃん~!」
時代を越える意識高いマン「つまり意識高い系と十把一絡げに揶揄する者こそ覚悟のない人間なわけで、当然彼らには幸福など来ないと・・・」
「女王様とお呼び~!」
「女王様~!」
時代を越える意識高いマン「行こうか」
時代を越える意識高いレディー「うん」
マリア「はい。一回止めまーす」
武藤「はい」
マリア「何か違うよね」
武藤「何かが違いますね」
マリア「どう違うと思う?」
武藤「どうでしょう」
マリア「ちゃんと考えようよ。そういう所だよ」
武藤「すみません」
マリア「とりあえず一服しようか」
武藤「思うんですけど」
マリア「どうぞ」
武藤「・・・やっぱりいいです」
マリア「ちゃんと言って。そういう所だよ」
武藤「気を悪くしたらすいません」
マリア「しないからどうぞ」
武藤「あの・・・わざとらしいって言うか」
マリア「うんうん。大丈夫だから。そこはゆっくり直していこうね」
武藤「いえ。マリアさんが・・・」
マリア「はあ?」
武藤「だねえとか、お呼びとか。そういうの普段言わないじゃないですか」
マリア「うんうん分かるよ。でも『あえて』なの」
武藤「そのあえてが古いって言うか・・・」
武藤「ダサいって言うか・・・」
武藤「熟女くさいって言うか・・・」
マリア「オッケー分かった!」
武藤「あと、えーっと、とか。アレ、とか。言い淀むのは致命的だと思います」
武藤「その挙句ひり出した悪口が『いぬ』はないんじゃないかと。もっとこう語彙力を高めてですね・・・」
マリア「うんうん分かった分かった貴重なご意見どうも有難うございます!」
マリア「はいはいダサいです熟女です語彙力ありませんごめんなさいね足引っ張っちゃって!」
マリア「ゾンビ君・・・いや武藤君は東京の人だもんね~そういうセンスあるもんね~凄いですね~ナイスですね~アバンギャルドですね~」
マリア「じゃあ逆に聞くけどどうしたらいいんですか~武藤君。いや武藤さん。いや武藤先生」
武藤「ゾンビでいいです・・・」
マリア「教えてよ武藤大先生。女王様っぽさ。とびきりエモいやつ知ってるんでしょ。教えて」
武藤「すみません!すみません!」
マリア「すみませんじゃなくてさ!ダメ出しするなら自分もアイデア出さないとさ!」
武藤「も、申し訳ありません言い過ぎました!」
マリア「だから言い過ぎるのはいいのよ!そこじゃないのよ!代替案をきちんと出しなさいって言ってるのよ!ねえ!ねえ!ねえ!」
武藤「何もないです!本当にすみません!無責任でした!ゴメンなさい!」
「・・・」
マリア「あれ?もしかしてこういう事かな?」
武藤「確かに方向性はいいと思います」
マリア「でもちょっと陰湿じゃない?ネチネチネチネチ・・・」
武藤「ただのお説教ですよね」
マリア「・・・」
マリア「よし!思い切って『実践』観てみよう!」
武藤「・・・実践、って?」

〇綺麗なダイニング
マリア「・・・すっごい」
マリア「ちょっと、君も観なよ。勉強になんないでしょ」
武藤「いえ、僕はいいです」
マリア「私一人観ても仕方ないじゃん」
マリア「それとも、これ観て興奮して襲いかかってくるとか?」
武藤「あ、それはないですね。絶対」
マリア「あっそう!だったらきちんと観なさいよ!私一人変態みたいじゃんか!」
武藤「じゃあ失礼して」

〇赤いバラ
  『ううっ・・・』
  『まだまだ・・・耐えて耐えて』
  『YES!OH!YES!』
  『・・・フウ~』
  『オッケー。よく我慢したね』
  『有難うございました』
  『じゃあご褒美いくよ。口あけて』
  『もっともっと大きく口広げて』
  『そら!いくよ!』

〇綺麗なダイニング
武藤「パソコン閉じちゃうんですか?まだ動画の途中ですけど」
マリア「・・・マジで?」
武藤「マジみたいですね」
マリア「無理!無理だから絶対!」
マリア「死ぬ!こんなことするくらいなら死ぬ!」
武藤「僕だって別にここまでされたくありません」
武藤「最早、痛いとか関係ないし」
マリア「じゃあどこまでならいいのよ」
武藤「考えたことないですよそんなの」
マリア「少しは考えなよボーっとしてないで!大体自分の問題でしょ無痛症ってさ!」
武藤「すいません」
マリア「・・・」
マリア「・・・ゴメン」
武藤「何がです?」
マリア「・・・」
武藤「・・・」
マリア「え?痛くないの?」
武藤「はい」
マリア「いつから?」
武藤「マネージャーになったくらいからですかね」
マリア「そっか」
マリア「じゃあ私、もう特別じゃないんだね」
武藤「そ、そんなことありません!今も十分素敵です!」
マリア「オッケーオッケー。だったらもっと過激なステージ出来るかもね」
マリア「針とか画鋲とか安全ピンとか。な~んて」
武藤「は、針・・・」
武藤「どこに刺してくれるんですか?」
マリア「冗談よ」
武藤「そうですか・・・」
マリア「この変態ゾンビ」
武藤「は、ははは・・・」
マリア「ステージ舐めてるって言われちゃ、黙ってられないわね」
マリア「私、これしかないから」
マリア「武藤君」
武藤「はい」
マリア「私の手をとって」
武藤「え?」

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